しろねこの足跡

しろねこの足跡

墓場の安息7,8


カナエと話しているとまわりの反応が少し違ってきた。私に話しかける人が出てきたのだ。でも、その内容はいつだって「カナエどこ?」「カナエはもう帰った?」とかカナエの居所を探すものばかりだった。
私を見ていても、私を見ていない。教室で無視を決め込んでいるくせに、英語のノートだけは愛想良く借りにくるエリたちと一緒だ。私はいつも愛想良く答え、貸してやる。
そして、心の中で、彼女らのはちきれそうな頬をひねりあげたり、買ったばかりのブランド物のスカートをめちゃくちゃに切り刻んだりすることを思って溜飲を下げている。
都合のよいときだけ、友達の振りして、抵抗できないと知っていて手を伸ばしてくる。
でもきっと、彼女達も思っている。「無視されたくせに、へらへらノートを差し出す必死なヤツ」って。

カナエのせいで、今まで口を訊いたことも無い男子からも声をかけられるようになった。でも、彼らにとって私はカナエの友達?にすぎないのだ。私自身の名前はない。

昼休みの墓場は、相変わらずだった。ぼんやりとお弁当を食べているとモトノ君が入ってきた。
私をちらりとみると「なんでいつもここで弁当食ってるんだよ。」と痛いところを突いてきた。
私はどうしようもないので「一緒に食べる人いないから。」と目を合わせないで答えた。

「ふん。」と一言だけ言って彼は、長い足を面倒くさそうにテーブルの下に押し込めた。それ以上何も言わずに、黙々とサンドイッチを食べていた。
「モトノ君こそどうしてここで食べているの。」
「一緒に食べる人いないから。」
「・・・・・・ふん。」

「人と違うって、面倒くさいんだよ。」モトノ君は窓の外を見ながら言った。横顔の彫りが深くて整っている。やっぱりモデルみたい。足も長いし、その辺にいる男子と違う。
 違うって面倒くさいか。恵まれていることでも違うことは大変ってことか。
贅沢だ。

 私なんて理由不明だ。多分、一緒にいてつまらないということだろう。だいたい理由を聞き出す勇気もない自分は、やっぱりつまらない。無視されて湿っぽく引き下がるからよけい舐められるのだと思うが、もう収拾はつかない。

 大人の世界とは違った意味で、この世界は失敗が利かないのだ。一度失敗したからといって、左遷やら異動ですぐにどっかに飛ばしてもらえるわけではないのだ。失敗はさらされたままなのだ。公開処刑、さらし首、死体遺棄。そんな感じ。教室の墓場に安息はない。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: