フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

2005年06月30日
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あまりにも一本気で純粋であったがゆえに(解毒剤を飲んでとりあえずこのピンチをしのごう、それからのことはそれからのことでまたどうにか考えよう、なんて不純な考え方は絶対できないキャラ)そしてもちろん、なによりもソロルの愛を信じきっていたニキヤにとって(婚約式というもう完全にソロルのことは諦めなければならない状態ということはわかっているのだけれど、それでも心のどこかでまだソロルのことを信じている)自分が絶対絶命の状況に置かれているまさにその時に、ソロルが自分のことを見捨てたとはっきり知ってしまった以上、全てに絶望し自ら死を選ぶ、というのは当然の結果でした。ニキヤがソロルとの恋に全てを賭けていたということがよくわかります。
これに対してソロルはどうだったんでしょうか?
今回のマラーホフ版の最大の特色のひとつが、ソロルが蛇に噛まれた瀕死のニキヤをおいてとっとと姿を消してしまう、というところにあると思います。劇場で実際この場面を見たときには、えっ、もう行っちゃうの?!と驚きました。実際この段階でニキヤをおいて場を離れてしまうソロルなんて初めて見たと思いました。このことが非常に気になったので手持ちのビデオ3本でこの場面だけ確認してみましたが、やっぱりこんなにさっさと姿を消してしまうソロルというのはマラーホフ版だけでした。パリオペのヌレエフ版ではニキヤはソロルの腕の中で息絶える演出になっていて、やっぱりこの演出が私的には一番好きですが、それにしてもこんなにさっさとニキヤを見捨てて行ってしまうソロルって一体・・・と暫く唖然としてしまいましたよ。ニキヤはこんな不実な男のために命まで捨ててしまったのか、なんかあまりにニキヤが気の毒だし馬鹿馬鹿しくすら感じてしまう・・
そう思っていたのですが、2幕の冒頭ではソロルは延々と後悔に苛まれるわけです。ふつうこの場面は影の王国への導入部としてソロルがアヘンを吸って眠りにつく、けっこうさらっと終わってしまうのが普通だと思うのですが、この版では後悔と自責の念に駆られたソロルの絶望がかなり長く表現される。こうした演出も初見でした。ふつうに考えたらこのソロルの絶望をどう解釈してよいやらわからなくなります。だってつい先ほどの場面ではあっさりニキヤを見捨てて去ってしまったくせに今度は絶望の体で悲しみに打ちひしがれているんですから。暫くは私もこの場面でのソロルの苦悩が長すぎるように思えて合点がいかなかったのですが、あ、もしかしてそういうこと?と思い付いたことがあります。
つまりソロルはニキヤが蛇に噛まれて暫くは動転するのですが、ちょうどその時大僧正がニキヤに解毒剤を差し出すのを見た、当然ニキヤは解毒剤を飲むだろうと思い込み、これで安心、ニキヤが死ぬことはない、と思ったからこそさっさとその場を離れてしまったんじゃないだろうか?ということです。大僧正がニキヤに言い寄っていたことは知っていたでしょうから薬と引き換えにニキヤは大僧正の愛人にならなければならないだろう、だとすれば自分としてはもうこの場にいても仕方が無い、自分はガムザッティと結婚しニキヤは大僧正のものとなって、それぞれ意に添わぬことではあるけれど立場を考えたら他にどうすることもできない・・・そのように考えたのではないでしょうか?ニキヤが解毒剤を飲むであろうことを信じきっていた、彼女がまさかそれを拒否して死んでしまうことになるだなんて想像だにしていなかった、だからこそさっさとその場を離れることもできたのではないでしょうか。そのように考えてみると、2幕の冒頭、延々と絶望に打ちひしがれたソロルが出現する理由が納得できると思うのですが。おそらくソロルはニキヤが死んだということを聞かされて、それこそ脳天かち割られるほどの衝撃を受けたのではないでしょうか。ニキヤは薬を飲んで大僧正の愛を受け入れるとばかり思っていた、それは悲しいことではあるけれども、そのことによってソロルは、一種の「救い」を与えられてもいた、つまり自分はニキヤを裏切ってガムザッティと結婚することを選んだ、ニキヤに対してはきっと生涯罪の意識を感じ続けていくことになるのだろう、そう思っていた。ところがニキヤが大僧正の愛人になったとしたら?たとえ意に添わぬことであったとしても、
やむをえないことであったとしても、ニキヤも大僧正の愛を受け入れたことに間違いはない、だとしたらこれでおあいこだ・・・愛を裏切ったということに関しては「御互い様」ということになる訳です。自分だけが愛を裏切ったのじゃない、彼女だってそうなんだ、という「言い訳」は充分成り立つ訳です。だから内心ホッとしていた、というのがソロルの嘘偽りない正直な気持ちだったのではないでしょうか。ところが。ニキヤは解毒剤を飲むのを拒否した、最後まで自分への愛を貫いて死んでいったのです。そのことを知った時のソロルの衝撃はいかばかりだったことでしょう。ガムザッティとの結婚を承諾した、そのことだけでも罪の意識は感じていたのに、ニキヤが死をも恐れず自分への愛を貫き通した、そのことはソロルに対し、自らの心にあった「救い」にすがりつくことで罪の意識から遠ざかろうとしていた、その自らの恥ずべき心に思い至らせるには充分過ぎるほど充分でした。ニキヤが解毒剤を飲むであろうことに一片の疑問ももつことなくその場を離れてしまった自分自身・・・ニキヤの潔い、純粋過ぎるほど純粋な生き方を思えば思うほど、それに比して自分は・・・との思いはいやでも彼の心をズタズタに切り裂いたはずです。ニキヤの最後を見届けることのできた他のソロルの何倍、いや何十倍もの衝撃をこの版のソロルは受けることになるのではないでしょうか?ニキヤを死に至らしめたのは自分だ、との罪の意識だけにとどまらないそれ以上の罪悪感をこの版のソロルは自分自身に対して抱かざるをえないからです。このように考えてくると、影の王国への導入部分であれほどまでにソロルが嘆かざるをえなかった理由もわかるような気がするのですが。
以上のように私は考えるのですが、もちろんそのことが本当にマラーホフご本人の意図するところであったのかどうか、全く知るよしもありません。もしかしたら全然別の解釈の元であのような演出になったのかもしれません。(もしかしたら、じゃなくて多分、と言った方が本当のところかも)でも私はあのように解釈したいなあ、と思うんですよね。





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最終更新日  2005年06月30日 14時56分13秒
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