2003年01月09日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
【連載】曽保みかん百年史(第2回)
黎明期(明治)の巻

 年も改まって平成五年になったらおらもまた一つ年をとってしもた。次第に昔の事は物覚えが悪なってくるきに、七宝出荷組合が出来る前の曽保でミカンが植えられた最初の頃の話をしようかいの。

 曽保にミカンが植えられたのは明治二十三年と言う事になっとるが、実は江戸時代からミカンは植えられとった。ただし、屋敷の庭先に一、二本植わっとるようなもんで、秋になると子供らが勝手に取って食べよった。主に酸っぱくて皮の薄い紅ミカンや小粒で黄色いコージミカンやった。温州ミカンもあったのう。これらは本山市あたりで苗木を買うて来て植えたもんじゃろう。 ミカンを作る前の曽保の畑は麦やさつまいもや大豆、野菜を作っとったんじゃが、ミカンの苗を植えたからと言うてすぐに実が成るわけでもないので、やはりミカンの間に麦や野菜を作っとった。ところが明治二十三年にトウガラシを、また明治三十五年頃に除虫菊をどちらも仁尾が県下で最初に栽培し始め、これが結構すぐに金になった。それでミカンの苗木を植えたら間作にはトウガラシか除虫菊を植えるのが当時のミカン作りの常識になっとった。仁尾のトウガラシは辛いので有名になり、アメリカへ輸出されよった時期もあるほどよ。除虫菊も昭和四十年頃までは作られとったのう。

 話がそれてしもたんで元に戻そ。多吉つぁんが何で売るためにミカンを作ろうと思たのかは直接聞いとらんのでこれは想像やが、昔は伊勢講といってクジで当たった者がお伊勢様に詣ってお札をもろて帰り、講の連中を招待してお客をする風習があったんじゃ。その道中に紀州のミカン畑があるわな。あの辺の景色は何となく曽保に似たところがあるんじゃ。その山一面がミカン畑なのを見て多吉つぁんは曽保でミカンを作ろうと思い立ったんではないかの。

 多吉つぁんが三十一歳の時、紀州からミカンの苗木を取り寄せて屋敷の東側へ二反ほど植えたのが曽保のミカン栽培の始まりとなった訳じゃ。その後親戚を中心に次第にミカンの栽培が増えていったんじゃが、明治四十年頃になると詫間の幸田の森重之丞という人が盛んにミカンがいいと勧めて、自分で苗木を斡旋したりした。仁尾の村長の浪越鷹太郎はんもミカンを仁尾の特産物にしようと頑張ったので曽保と片山を中心にミカン畑の開墾がぐんと増えたんじゃ。

 県の方では明治四十一年に「勧業振興七ヶ年計画」を作り、「花崗岩土壌へはモモを、安山岩土壌へはミカンを」という事で当時県下で二百町あったミカン畑を五百町にすることになった。その時初めて県農事試験場に柑橘試験地を作る事や、各郡に指定果樹園を設置したり、そのために果樹専任職員を置く事。県の農会で果樹の苗木を養成して半額で配る事が決まった。また明治四十三年には香川県果物同業組合が作られて、翌年多吉つぁんは第四回四国果物品評回で一等になっとるんじゃ。この賞状は今度できた「みかんの里」の展示コーナーに飾ってある。多吉つぁんは曽保のミカンの先駆者だけでなく、県のミカンの先駆者でもあったというのが、この辺の経緯でようわかるじゃろ。

 明治という時代は国民みんなが新しい時代が来た事を喜んで、一人一人が一生懸命努力する事が国の為になると信じられる時代やったのう。ミカン畑の開墾はえらい仕事やったが、それだけ米を作れる田圃と同じ値打ちの土地が広がる訳じゃから自分の収入は増えるし富国強兵の明治の政策にも貢献する事になる。特に明治二十七年の日清戦争の後は国の事情も良うなって生活が安定してきたから、ミカンのようなぜいたく品が売れる状況が作られたんじゃと思うのう。そういう時代の流れを読んだのかどうか、とにかく多吉つぁんという人は偉かったという他ないのう。


 さて、明治時代の話はこれくらいにして次回は大正時代のことでも聞いてもらおうかいの。この頃日枝神社の下はトンネル工事で騒がしゅうなっとるきん、おらもそろそろ寝んといかん。ほんだらおやすみ。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2003年01月09日 12時18分57秒
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

鶴亀彰@ Re:50年前のビデオ(2)(08/08) 突然のメールで失礼致します。私はカリフ…

バックナンバー

2026年05月
2026年04月
2026年03月
2026年02月
2026年01月

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: