特にキリンについては詳しくないので、話は広がらなかったが、後になってネタを思い出したので書き残しておく。
ネタ元は動物行動学の竹内久美子。
"動物行動学"とは、生物がどうしてそういう行動をとるのかを研究する学問。
生物(主として動物)の反応や行動が、先天的なものか、後天的なものであるかを分類し、先天的なものについては"遺伝子"の研究に、後天的なものについては"学習"の研究に進む。
最終的には、人間の行動原理の解明につながる。
つまり、人間の行動は、"遺伝子"と"学習"によって決められている、と言うことがわかる。
「何であの時あんなことしちゃったんだろう」と後悔した時、原因を追究して、遺伝子のせいにしたり、環境のせいにしたりして納得できるわけだ。
『私が、答えます』は、週刊誌の読者の質問に答えると言う型式で成り立っている。
読者のとんでもない質問に、竹内がとんでもない回答をする。
あくまで動物行動学にのっとった、学識の背景を持つ答えなのだが、発想と展開にとんでもなさがつきまとうので、とんでもない答えにたどり着いたりする。
学者からは、竹内の著作は理論の乱用だと批判され、"トンデモ本"と揶揄されているが、一度この味を知ったらやめられない。
この章の回答はその中でもまともな話なのだが、これは僕も長年疑問に思っていたことなのでスッキリした。
『キリンの首の進化論』
質問?:ダーウィンの進化論のウィーク・ポイントとしてよく話題になるのが、キリンの首です。つまり、あのように大掛かりな構造が、単に高い所にある葉を食べられるという利点だけで進化するだろうか、という問題です。直感的に考えても変だと思います。キリンの首の伸びには絶対、もっと別の、何か重大な理由があるはずです。どうお考えになっていますか? (二十五歳、男)
A!:『種の起源』は出版されるや否や大反響を呼び、当然のことながら批判の声の方も大変なものでした。
その批判の一つが、キリンの首や体みたいな大掛かりなものが、たとえば高い所の葉を食べられるという利点だけで進化するだろうか、高い所の葉を食べるという利益が、巨大な首や体を成長させるという栄養的なコストを上回らなければならないわけだが、はたしてそうだろうか、というものです。
ダーウィンはしかし、冷静にこう反論します。
「キリンは長い首や大きな体によって高い所の葉を食べられるようになったということはもちろんだ。しかしそれらは、その目的もさることながら、肉食獣に対する防衛にも役立つから発達したと言うべきではないだろうか。
その先に角という武器がついた巨大な首と頭を振り回すことは、かなりの攻撃になるに違いない。ライオンのような相手に対しては、しばしばそれが通用しないかもしれないが、その場合長い首は"見張り塔"の役割を持ち、いち早く敵を発見することに役立つだろう。」
ダーウィンは、高い所の葉云々だけでなく、肉食獣対策としてのキリンの首というものを説明している。キリンの首についての議論はけっして進化論の弱点ではないのです。
ただ、この議論には非常に惜しい点もある・・・。
では、そういうあんたはどんなふうに考えるのか?
はい、待ってました。おまかせ下さい!
私の見るところ、キリンの本質は首ではない。
脚!
それも、前脚!
そのキック力にあるのではないかと思うのです。首は、脚が発達した都合上、やむなく伸びざるをえなかっただけではないのか、と。
脚が長く、発達したキリンは、そうでないキリンよりも肉食獣の餌食になることが少なかったはずだ。そうしてキリンはだんだん脚がながくなってきた・・・。
ただ、ここで困った問題も一つ発生してしまった。口が、水溜りの水や丈の低い草に届かなくなってきたのである。
そんなわけで、キリンは脚を伸ばす一方で、首をも伸ばし始めた。むろん口を地面に届かせるためである。いや、正確には、そうすることに成功したキリンが自然淘汰で残ったのである。
なるほど!と膝をたたいた覚えがある。
まったく発想の転換だ。
キリンの首が長いのは、高い木の葉を食べるために長くなったんだとどこかで習った。
始めは馬くらいの動物が、草や低い木の葉を食い尽くして、しだいに高い枝の葉を食べるようになり、そのために首が長くなったんだと。
そういうことなら、首は徐々に長くなるんだろうから数世代に渡るはずだ。
でも、その年に草を食い尽くしても、翌年にはまた草も低い葉も復活するだろうから、首が長くなるのを待つ必要はないんじゃないか、と言うのが僕の疑問だった。
あーこれですっきりした~、って僕だけの疑問だった?
ということで、キリンに興味を持てなかった人のために、次の章の質問と答えを付録に付けておきます。
こちらは竹内久美子ワールド満開です。
『簡単便利な子作り法』
質問?:結婚して三年になります。一年くらい前から子作りに励んでおりますが、未だに成果は現れていません不妊治療というのも何だか恐ろしいし、まだその段階ではないと思っています。動物行動学的に何か、簡単な子作りの方法があったらお教え下さい。(三〇歳、女)
A!:不妊とは、子作りの努力を始めて二年間たってもできないという状態を言うそうです。あなた方ご夫婦は不妊治療の前にまだまだチャレンジすることがあります。実は、私のアドヴァイスに従い、子作りに成功したと思われる夫婦が何組もおられます。動物行動学的知見に基づく、簡単便利な子作り法をいくつか伝授しましょう。
処方 その一
すべての部屋の明かりを消して、しばし停電の恐怖を味わう。しかる後、真っ暗な中で手さぐりで「行う」
ニューヨークの大停電、という有名な話があります。
1965年11月9日、午後6時(現地時間)、ニューヨークを中心とするアメリカ北東部、そしてカナダにかけての一帯が突如停電に見舞われました。復旧には随分時間がかかり、結局3000万人以上の人々が真っ暗闇の中で一夜を過ごした。その間、刑務所では暴動が発生、商店は略奪のターゲットになるなど一大パニックが発生したのです。
さてその約270日後のことです。ニューヨークの産院は満員になっていました。
これほどの出産ラッシュとなるとなるためにはまず、人々が暗闇の中にも拘らず励んだと言う事実がなくてはいけません。
しかしおそらく、それだけでは足らないでしょう。この現象には実は、パニックや大きな不安、恐怖によって女が思わず、予定外のタイミングで排卵してしまうという事実が加わっているのです。
同じような現象は、日本軍による真珠湾攻撃のときにも起こりました。
「パールハーバー」から然るべき日数がたったとき、アメリカ全土で出産ラッシュがあったのです。戦争勃発という大きな不安が女の体に働きかけ、おそらくは興奮させ、予定外の排卵を引き起こしてしまったのでしょう。
処方 その二
しばらく別居をする。連絡も取り合わない。あるときダンナが予告なく訪れ、「行う」
ショート・ヴィジット(short visit)の効果と呼ばれる現象があります。
第一次世界大戦、そして第二次大戦の時もそうだったのですが、ドイツ軍の兵士が国境付近の戦場で戦っていました。そうこうするうちに配置転換が行われ、兵士たちは国を横切って次の戦場へと向かうことになった。
しかしせっかく国を横切るというのに、です。ただ通りすぎるのは忍びないではありませんか。兵士たちには24時間、あるいは48時間の自由時間が急遽与えられました。
彼らは一目散に妻や恋人の元へ駆け戻り、これまた大急ぎで隊へと戻ってきました。そして然るべき日数の後のことです。兵士たちの妻や恋人は、我も我もと子を産んだのです。
たまにしか会えない、しかもいつ会えるか予測がつかない。そうすると女は貴重なチャンスを活かすべく、思わず排卵してしまうようなのです。
処方 その三
SMごっこをする
SMとは(特にMの方には)恐怖や痛みと同時に、異様な興奮を伴うものらしい。それは停電や戦争勃発の恐怖、それに伴う興奮といったものと、どうも同系列にあるような気がします。
とすればSM行為により女が思わず排卵してしまう可能性は大いにあり!
処方 その四
旅行、パーティなどで日常から脱出。大いに浮かれ気分に浸る。
欧米では昔から、クリスマスのときに子ができやすいといわれています。 クリスマスという浮かれ気分、日常とは違った雰囲気が女の体に働きかけ、これまた予定外の排卵を促してしまうようです。
1996年クリスマスのとき、英国の航空会社、ブリティッシュ・エアウェイズがスチュワーデスと女性パイロットに対し、クリスマスの期間中に勤務のある者は、仕事先へ夫なり恋人なりを呼んでもよろしいという粋な計らいをしました。その4ヵ月後、「妊娠しました」「私も妊娠しました」という者が現れ、それは約6000人の女性職員中、591人に及んだのです。本当にあった話です。
処方 その五
男はなるべく風呂に入らない。ヒゲも伸ばし放題にする。
はっきり言って私は、臭い男は嫌いです。女はみんなそうでしょう。 あのムッとするような、酸っぱい匂い。
「近寄らないで!私の体や服に一滴たりともその匂いを染み込ませないで」
と叫びたくなるような強烈な匂い。 でも、子宝のためには我慢しましょう。
アメリカ、ワシントンの州立大学のジェーン・L・ヴェイスは男女共学の大学に通う女子大生29人について、40日間にわたり調べました。
期間中、男と過ごした夜が二晩以上あった、男とよく会うグループ、そして男とすごした夜がまったくないか、一晩だけあったという、男とあまり会ってないグループとに分類します。
すると、男とよく会っているグループの月経周期は平均30.5日、あまり会ってない方は33.3日です。男とよく接触していると月経周期は短く、あまり会ってないと長くなる。
さらに、実際に排卵が起きているかどうかを調べます。彼女たちに日々の基礎体温の記録をつけてもらうわけです。
すると驚くべき違いが現れた。
男と接触するグループでは13人中12人が排卵しており、片や男とあまり接触していないグループ16人では、排卵しているのは9人だけで、排卵していない女が7人にも達したのです。
こうして男とは、その存在自体に、女の排卵を促す力を秘めていることがわかります。その力とは、やはりあの匂いとしか考えようがないのです。
さてもう一つの、ヒゲを伸ばしほうだいにするという方法。これも匂いと大いに関係があるのです。
つまりヒゲに匂いをため、女に排卵を促すという効果だと私は考えています。ヒゲが縮れているのは、匂いをためるためでしょう。
ダンナは風呂を我慢し、ヒゲはぼうぼうに延ばし放題。悪臭をぷんぷん撒き散らす。
どうです?簡単なことじゃありませんか。
以下処方10まで続くのだが、この先は淑女の読者には顰蹙かもしれないので割愛します。
近藤誠著『「健康不安」に殺されるな』 2023年04月15日
ダニエル社長著『コロナと金』 2022年09月27日
ジェフリー・ケイン著『AI監獄ウイグル』 2022年02月05日
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