






43 )宮崎駿監督が引退表明
『風立ちぬ』を見た人は感じたでしょうが、この映画は宮崎駿の遺書です。
賛否両論あると聞きましたが、間違いなく最高傑作です。
ジブリのではなく、映画全体の中でです。
映画を見る前の評判で、主役の堀越二郎の吹き替えをしている庵野秀明(『新世紀エバンゲリオン』等映画監督・アニメーター)が、あまりに素人の棒読みでミスキャストある、ということでした。
そして見たところ、たしかに類まれな棒読みで、主人公の吹き替えにはいかがなものかというレベルでしたが、ここが映画の肝なのです。
これは宮崎駿自身を表現したかったのだと感じました。
宮崎駿の感性を持った人物として、同業の庵野秀明がぴったりだったのでしょう。
つまり堀越二郎は宮崎駿であり、庵野秀明だったのです。
映画を見て、庵野の奥さんの庵野モヨコ(漫画家)はずうっと泣いていたというから、解る人には解りすぎほどの存在感だったのでしょう。
作品の本質を描く、さりげないシーンがあります。
堀越が「シベリア」と言うカステラを買い、それを店の前で親の帰りを待っている幼い姉妹になにげなく上げようとします。
姉妹は驚きますが、それを受け取らず堀越を睨んで走り去って行きます。
そのことを友人に話すと「良いことをしたとでも思ったか、偽善者メ」と罵倒されますが、堀越は反論もせずにぽかんとしています。
これが堀越の生き方であり、宮崎駿の生き方であるとのメッセージと受け取りました。
ものを創造する人間は、それが善なのか悪なのかなどと考えません。
ただそうしたいから、そうするのです。
運命に導かれるごとく、何かに没頭していくのです。
それが時には悲劇を作り出すことになり、むなしさを覚えたりもするでしょうが、受け止めなければならないことなのです。
愛する女が病床に伏せても、傍らで飛行機の図面を書き続けるのは、創造者の 性 なのです。
ゼロ戦を作ったのも、日本のためでも戦争のためでもなく、好きな飛行機を極めたかっただけなのです。
そしてそれが周囲に理解されなくとも、創造者は本能として作り続けてしまうのです。
エンディングに流れる、荒井由実の『ひこうき雲』はまさにぴったりの歌詞でした、
♪今はわからない 他の人にはわからない♪
のです。
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