空間・計画研究所/An Architect

空間・計画研究所/An Architect

PR

Profile

空間・計画研究所

空間・計画研究所

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Archives

Dec , 2024
Nov , 2024
Oct , 2024
Sep , 2024
Aug , 2024
Jul , 2024
Jun , 2024
May , 2024
Apr , 2024
Mar , 2024

Comments

Mac Nakata @ いいこと書いてありますねぇ。 おっしゃる通りだと思います。
空間・計画研究所 @ Re:写真見入っちゃいました。(11/08) Mac Nakataさん >11月20日だったかサッ…
空間・計画研究所 @ Re:世界恐慌(10/03) Mac Nakataさん >日本は電気自動車や燃…
Mac Nakata @ 世界恐慌 日本は電気自動車や燃料電池車へ移行する…
Mac Nakata @ 写真見入っちゃいました。 11月20日だったかサッカー代表がカタール…
Penelopekn @ 続き 中国がどういう高速鉄道を欲するかで仕様…
Penelopekn @ その通り、そのしがらみはヤバイ お忙しそうで何よりです。 中国の新幹…
空間・計画研究所 @ Re:あと1ついる(04/15) Penelopeknさん >「Liability」 Oxfo…
Penelopekn @ あと1ついる 「Liability」  日本語で責任と言えば…
Yutakarlson @ 美味しいエコ宅配 こんにちわ。ピザテンフォーのyutakarlson…
Jan 27, 2006
XML



フランス等の諸外国の例に習ったのだと思われますが、

その深層構造において、異なる点があると考えられます。

日本語にいう「建築家」ではなく、欧米流の「architect」は

これから示すような諸条件の荒波に揉まれていることを

再認識する必要があります。



1)21世紀になるにあたっての世界的パラダイムとして、

「環境問題」



2)その結果として

「internationalism ⇒ globalism」



3)それを実現するためのインプリメンテーションとして

「規制緩和(たぶん極めて日本的解釈)」

あるいは 「制度更新(renewal)」



従って、誰かの個人的趣向性と関係なく、

規制緩和が止めることのできない課題である

と言う前提があるとします。



4)その背景にある人々のイデオロギーとしての、

「自由主義(liberalism)」 があります。

しかし、欧米に言う自由とは、未だにその底流に、

カントの言うような 『理性的存在の自己決定の自律性としての自由』

の概念が流れていると考えられ、

「responsibility」



が背中合わせに存在し、

おそらくは、日本建築家協会会員の多くが考えている

責任と言う概念よりもかなり重いものであるように考えられます。



5)医者、弁護士、建築家に代表される、全ての

「職能(profession、function)」 は、

「性能保証(security)」



「潜在能力(competence)」

「主体(the subject)」 であり、その

「行使(performance)」 、従って、

「難易度(difficulty)」  (software)に対し

「報酬(fee)」 という

「経済(economy)」

のシステムが用意されているのであり、

そのための手続き、

具体的作業量や成果品そのもの(hardware)に対して

ではないようにみうけられます。

従って、欧米型の組織では、その最高責任者である

「個人」

に責任が集中するのが一般的で、

組織の下位階層所属者は必要以上には自由権を行使して

責任を負うこと、すなわち、

「集合名詞」

化し責任の所在を曖昧にすることはしないようであります。

PL法はそうしたresponsibilityの概念の導入の第一歩である

と考えられます。

一方で、responshibility負担能力ないしは行使は、

報酬が左右することになり、

コンサルタント料のダンピングや値引きは、

「依頼者(client)」

に味方することになるとは限らないのであります。



6)こうした性能保証や責任能力の水準を高めるために、

「保険(assurance、insurance)」 という

「経済(economy)」

のシステムが用意されています。

海外では、建築竣工後にarchitectに対して

訴訟が起こる場合が多いが、

そういうケースに対処するためには、

都市や建築に十分通じた弁護士等の法律家の養成が

急務であります。

建築家賠償責任保険制度はこのための

第一歩であると考えられますが、

あくまでも、自由主義的経済的

「確率(probability)」

的活動でありますから、現在のままでは、

現在の日本における責任賠償にしか対応していない

と考えられます。



7)日本では、一般に日本の規制は欧米より厳しい

と言う錯覚があるが、必ずしもそうではありません。

フランスの建築基準の例でみると、

『「法の精神」(性能規定)に厳しく、

細かい数字合わせ(仕様規定)にこだわらず、

「例外規定が充実」していて、

「新規技術開発に対して寛容」である』


わけで、法律上は、形態等に関する

「裁量(discretion)」 の余地が多いが、

「安全規定」 は、

はるかに日本より合理的かつ厳しく、

要するに、平面に占める避難階段の面積比の様なものは

日本よりかなり多くなります。



8)こうした裁量の部分のきめ細かな対応は、フランスでは、

「民間の建築主事」

が代行しているわけでありますが、そのperformanceは、その

「経験(experience)」

「報酬に応じたリスクに対する責任負担能力」

「未経験事項に対する先見性」

などにより左右され、余程能力が無い限り

自動的に常識の範囲、あるいは、

法規定よりも安全側におさまるようになっています。

また、この職能に関しても当然保険が用意されていると考えられ、

ここにも自由主義経済原理が働いていることになります。



9)更に、建築に関する法規定が無い部分、

緩い部分、裁量の部分、新規技術の部分などについては、

国際的には、

「火災保険料」

の規定の細かな設定による自由主義的な歯止めがきいており、

民間の建築主事の判断の目安になります。

すなわち、将来の

「利用者(user)」

「運転資金(running cost)」

すなわち、負担能力によって、建築的冒険が能力、

あるいは、必要以上にエスカレートしないように

抑制されているわけであります。

従って、日本で保険制度の更新が行われない限りは、

不確実性が高まるか、

有望な保険市場を海外に奪われることになります。

ちなみに、サウジアラビアのケースでは、

私が関わったプロジェクトは

私が担当している間には竣工しなかったが、

既に竣工しているプロジェクトに関わった先輩に

当時伺った話では、

『そのころは(現在はあるかもしれないが)現地には

建築基準法のようなものがなく、

火災保険の基準が事実上の国際的な建築基準となっていた』


ということであります。



10)このように、

「責任に裏付けされた自由」

が前提になっているわけでありあますから、

日本においてその概念が啓蒙され成熟されるまでは、

欧米から安易に

「住民参加」

の概念だけを持ち込むと不確実性が増すだけであります。

「設計主体(the subject of design?)」

を論ずるのにresponsibilityに対する考察がないとすれば、

片手落ちという他ないでしょう。



以上に示した様なことが、

都市計画法・建築基準法の昨今の規制緩和の深層において

起こり得ると考えられる事柄であり、

「自由主義経済」

という一つの 『融通性はあるが(フレキシブルではあるが)

効果的であり、巧妙な、「都市デザインレベル」での

デザイン・コントロールのインプリメンテーション(施策)』


を考えるにあたり考慮すべきポイントでありましょう。



こうした深層部におけるものに加えて、

表層、目に見えるもの、知覚できるもの、感覚レベル、

すなわち、形態的なデザイン・コントロールが

必要になるわけであります。



こうした問題の解決には、

極めて多くの各分野の専門家(specialists:

各分野についての責任主体、

生活の専門家としての責任をもつ住民参加を含む)

の関与が必要であり、

それらを繋ぎ芸術のレベルまで高める存在として、

欧米というよりは、internationalな意味での、

architect(generalist:

総合化の責任主体、棟梁もしくは統領、すなわち、

都市計画家、都市設計家、建築家)

の存在が必要になるわけであります。



(1997年に書いたものを、ごく一部手直ししたものです。)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 28, 2006 04:07:25 AM
コメント(6) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: