えてジョン・F.ケネディ国際空港に初めておりたちま した。バスは、ポール・サイモンとアート・ガーファン クルのホームタウンであるクイーンズ区をぬけ、マンハ ッタンにむけてイースト・リバーをこえるクイーンズボ ロ・ブリッジにさしかかります。 ♪Like a bridge over trouble water ♪I will lay me down ♪Like a bridge over trouble water
「Bridge Over Troubled Water」のリフレインが、私 のなかで鳴っていました。
1965年、ボストンのハーバード大学の学生の間で 「Sound of Silence」が評判を呼んでいるとの連絡を 受けたトム・ウィルソンは、1965年6月にボブ・ ディランが発表した『Highway 61 Revisited』でフォ ーク・ロックを生み出したバンドの演奏をアコーステ ィック・バージョンの「Sound of Silence」にダビン グして発売したところ、1966年1月には見事、ヒ ット・チャート第1位に…
♪And in the naked light I saw ♪Ten thousand people maybe more ♪People talking without speaking ♪People hearing without listening ♪People writing songs that voices never share ♪And no one dare ♪Disturb the sound of silence (そして裸電球のあかりのなかに僕は 1万人か、それ以上の人々の姿を見た気がした 彼らはしゃべってはいるが何も語っていない 相手の声はきいているが何も理解していない 決して歌われることのない歌をつくっていた そして誰も 沈黙の音をやぶる勇気をもっていなかった)
「Sound of Silence」のヒットを受けて1966年1 月に発表した2作めのアルバム『Sound of Silence』 は、ヨーロッパでのソロ活動でうたっていた曲をフォ ーク・ロックにアレンジしたもの。
つづいて1966年10月に発表した3作めのアルバ ム『Parsley, Sage, Rosemary, And Thyme』にも、 ヨーロッパでの体験をもとにした歌を収録。ただし、 『Sound of Silence』と 『Parsley, Sage, Rosemary, And Thyme』をくらべ ると、『Sound of Silence』には、自己の内面にとじ こもるようなひきこもりの歌が多いのに対して、 『Parsley, Sage, Rosemary, And Thyme』では、 「Life, I love you(人生よ、君が好きだ)」とうたう 「The 56th Street Bridge Song(Feelin’ Groovy)」 きよしこの夜のメロディを背景にアメリカの悲しいニ ュースを淡々と読みつづける 「7 O’clock News / Silent Night」など、ポール・サ イモンの視点が自己意識(内面)から外の世界へと転じ つつあるように感じられます。それは、 「Sound of Silence」という歌が聴衆に受け入れられ たことに対する自信にもとづくのかもしれません。
ふたりは、1967年6月16日、サンフランシスコ のフラワー・チルドレンのSummer of Loveの発端と なるMonterey International Pop Festivalにイースト コーストを代表するミュージシャンとして登場。ギタ ー1本で「Feelin’ Groovy」をうたい、聴衆を魅了し ます。
♪When you’re down and out, ♪When you’re on the street, ♪When evening falls so hard ♪I will comfort you. ♪I’ll take your part. ♪When darkness comes ♪And pain is all around, ♪Like a bridge over trouble water ♪I will lay me down
それから30年後の2001年9月21日、 「Bridge Over Troubled Water」は、ふたたび時代と 出会います。9月11日の同時多発テロのとき、被害者 を救出するために世界貿易センターへむかい、殉職した 350人の消防士と70人の警官ら、ヒーローをたたえ ようと、ニューヨーク時間の午後9時から2時間にわた って世界150カ国に衛星中継されたテレビ・プログラ ム『AMERICA:A TRIBUTE TO HIROES』。 最後に、ふたつのアメリカ讃歌 「God Bless America」「America The Beautiful」が うたわれる前に、ポール・サイモンは登場し、みずから のギターを伴奏に「Bridge Over Troubled Water」を 静かにうたいはじめます。歌は、あのリフレインの部分 にさしかかります。
♪Like a bridge over trouble water ♪……………………… ♪Like a bridge over trouble water ♪……………………… ポール・サイモンは「I will lay me down」というフレ ーズを沈黙で通しました。とても悲しく、リアリティの ある鎮魂歌でした。