2019年10月22日
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カテゴリ: OPERA


Photo credit:Shevaibra, courtesy of the artist

田尾下哲アフタートーク
【演出家交流会】
カルメン 二日目終演後

2019年10月20日
神奈川県民ホール 1階ロビー

出演 田尾下哲(演出家)

(※メモをもとに記述(抜粋)。 内容や設定にふれていますのでこれから公演をご覧になる予定の方はご注意ください。

…ロビーには100人ほどの方が演出家の話を聞こうと集まっていた!

田尾下 :今回設定を「21世紀のショービジネス」にした責任が僕にはあるので全て語りたい。皆さんの質問には全てお答えする。
まず楽譜をゼロから読むことを始めた。
僕にはロマの友達がいる。
「カルメン」は世界で3本の指に入る有名オペラだが、ロマの人たちは苦々しく思っている。
「ジプシー」は蔑称である。
ロマの女性は男にだらしないという姿が典型のように描かれている。彼らは「カルメン」の上演に対して抗議している。
僕は21世紀ではそのような上演はできないと思っている。差別だけはしてはいけない。
アメリカでは1980年代、プールが黒人用、白人用に分かれていた。
たった30年前にそんな差別がと、それをおかしいと思う人がいると思う。だが、それは30年前の話だけではない。2020年のオリパラにも黒人の水泳選手は参加しないだろう。
私たちは、このように気づかないままに差別を看過することもしてはならないと思う。



どうしてショービジネスにしたのかはプログラム・ノートに書いたので読んでほしい。カルメンが資本主義社会で自らの野望を勝ち得ていく姿を描きたかった。

最初のシーン(プロローグ)のカルメンはNobody 。→バーレスク・クラブ(第1幕)→ブロードウェイ(第2幕)→サーカス(第3幕)→ハリウッド (第4幕)と設定している。

カルメンが二幕で歌う山へ行こうの「山」はハリウッド。映像の世界。
ダンサー →ミュージカルスター→ 映画スター

3幕のサーカスでメルセデスとフラスキータたちが受け入れられて安心しているが、カルメンだけは満足していない。サーカスに来たエスカミーリョ(映画界の大スター)がカルメンをハリウッドに連れて行き、レッド・カーペットを歩く。


ホセは小さい声でセモアと歌う。どうしてこういうテンションなのか(音程が低く下がる)今回は、その解釈を描いた。ホセがいるところに背後からカルメンが突然現れる。それをオーケストラの強奏を用いた。堂々と歌うカルメンに対して、レッド・カーペットにカルメンがいると思っていたホセは驚いて、ピアノ(弱音)でセモアと言うように逆にした。

このように、既存の表現やト書きさえも疑ってかかり、改めて全部音楽のイメージでやっている。ショー・ビジネス カルメンに関してミヒャエル・ハンペ先生にも相談している。

最初のシーン 、女性がオーディションで物のように扱われる。まるでオークションのように。
<ネタバレにつきカット>
残酷。21世紀でも

皆さんのご質問を受けたい。

Q 中略 原作だと盗賊が荷物を運ぶシーンで椅子を運んでいた。今回ショービジネス ブロードウェイということだが他に設定の候補はあったのか?ミカエラの役割は?

A ミカエラはメリメの原作にはなく、オペラにだけ登場する。今回はホセの幼馴染という設定は変わらないが、ミュージカルスターを夢見ている娘。バレエダンサーも声楽家もありかと思ったが、バーレスククラブでミュージカルを歌うような娘。

設定はモンターニュ(山)が大きかったのでハリウッドの歴史を考えてアメリカン・ドリームとしての「山」とシアターのということで。当初は設定を1970〜1980年代にしたかった。それは今はスマホやインターネットがあるから、手紙を書く?メールすりゃいいじゃんとなってしまう。しかし1970〜80年代に設定すると、小道具としてその当時のカメラを揃えるのが難しいという物理的な問題もありつつ。時代は近未来の現代。「ララ・ランド」はクラシックなようで実はモダン。時間を跳んでいる。1980年代でも2010年でもいいと思ったが、進むうちに21世紀のアメリカがいいかなと思った。

Q 涙が出るほど感動した。カルメンに気持ちが乗り移ってしまった。カルメンは死をかけて自由を手に入れたかった。ダンスが素晴らしかった。出演者がダンスもし歌も歌ってびっくりだった。

A ダンサーは6人だけ。あとは歌手です。

Q 日本語字幕が変わっていた。

A フランス語の歌詞は変えてないです。字幕は作ってもらったものを僕が変えている。「山」をカッコ付きにしている。言葉の意味は変えてないが、副次的な意味で変えている。フランス語は変えてないです。

Q 私はブーイングしました。全体への不満がある。いくらなんでもやり過ぎ。プログラムを読まないで見始めた。ダンスが多過ぎる。フレンチカンカンは下手に見えた。わざと下手にしようという意図はあったのか?このように演出家が説明してくれることはうれしい。

A 何をもって「やり過ぎ」かは人によるのではないでしょうか。

Q コミカルなしぐさ、大げさに倒れたり。

A 音楽がそういう風に書かれている。私の解釈は全て音楽から来ている。明らかにシリアスな音楽ではなく、ドタバタに、カルメンが恋をするなんて信じられない、というダンカイロ達の反応がコミカルに音楽として描かれている。

ミヒャエル・ハンペは楽譜を体に翻訳しなさいと言っている。
ご指摘のコミカルな場面は「道化師」のトニオの、“気をつけろ!パリアッチョ”の表現のイメージでやってくれと言った。

ラインダンスのシーンだが、エスカミーリョはオフだが皆に歌うように促され即興で歌うのだ。皆が楽しんでいるので全員に参加してもらった。踊りのうまさよりも楽しんでいる雰囲気。北島三郎さんが今この場に突然現れて、「与作」を歌ってくれて、ヘイヘイホーと言えば皆様もヘイヘイホーと返しますよね?ですが、皆様がみんな歌手ではないわけです。それと同じです。エスカミーリョの歌は、皆が知っている歌。突然現れても,彼の事や彼の曲は誰もが知っていて、楽しむ。そのようなスターが現れたということを描きたかった。足を高く上げてくれとは言わなかった。

Q プログラムは読まないようにしている。見て楽しみたい。コーラスラインから始まってびっくりした。私は〇〇から来た。ぜひ西日本でも上演してほしい。

Q オペラの歴史ではグランドオペラ形式で昔はバレエシーンがあったが最近カットされるようになった。ここに来てダンサーを使うことが増えてきて踊りのシーンが復権しているようだ。ミュージカルではマイクを使うが今回はどうだったのか?

A マイクは全く使ってないです。カルメンのイメージはわかっている。ゼッフィレッリもピーター・ホールの伝統的な舞台ももちろん知っています。でも、それはそれなんです。ひまわりを書きなさいと言われた時にゴッホをイメージする人が多い。でも私がひまわりを書きなさいと言われたら、実際のひまわりを見ますね。オットー・シェンク演出のとか、全て捨てます。私が楽譜から何を描けるかを考える。自分の考えたイメージで振り付けを考えてもらった。
ビゼーの音楽は女たちの喧嘩のシーンもカッチリと書かれている。自然な喧嘩ではなく、カリカチュアした様式的表現をした。
私が描くなら、ひまわりだったら種子だけを描くかもしれない。ひまわりから発想を飛ばして炎のようだから赤で描くとか。カルメンも色々ある中で私自身のカルメンを書いた。
皆さんがどれだけゴッホのひまわりを愛していると知っていても、ゼッフィレッリの舞台を愛していると知っていても、私は彼らとは才能も時代も知識も全然違う。だから、自分が解釈する、信じる『カルメン』の物語を描いたのであって、既存の解釈(演出)を参考にして演出することはないです。
ビゼーの作品はメリメの原作から作られた。作曲家の解釈が一次的解釈でいくら天才でもゼッフィレッリは二次的解釈。私がそこで三次的解釈をする必要はない。今までのものは全て捨てる。全て音楽から考えてやった。

18番、3幕幕開きの合唱は繰り返しの音楽になっており、リアルな密輸品を運ぶ動きは私には感じられず、バケツリレーにしか聞こえなかった。つまり、椅子を運ぶ動きにしか思えなかった。僕には(笑)。

初めて見た人が「音楽と合わない」と思うシーンがあったら教えてほしい。
シンコペーションは加速していく。人の心を煽情する。シンコペーションの音楽が禁止された。音楽には力がある。
高い音を出すと子供は動く。
僕の演出は歌手を動かし過ぎと言われるが、高い音ほど歌手は動いて歌ってほしい。見ている人には不自然だから。酷かもしれない。ナタリー・デセイはHigh D出しながらでも動けるって証明したくて、髪の毛を引っ張ってほしいと言った。
歌手ができなかったら無理矢理はやらせない。
人間は低い声だと安心する。
「オペラ座の怪人」のラウールが歌う♪All I ask of you は低い声で歌う。安心させるために。高い声を出すのには意味がある。
自分は歌わないがそういうところを見つけていきたい。

Q 舞台に色の順番があった。1幕 黒→2幕 金銀→4幕 赤 その意図が知りたい。

A そうですね。実は1幕にも色はあるんです。カルメンが赤い薔薇を投げる。ミカエラは青だ。
白黒映画のイメージで描いた。
最後のレッドカーペットの赤がピークになる。
プロローグの稽古着の雑多な色、バーレスククラブは黒、薔薇の赤とミカエラの青はあるが。
照明は201という白い灯りだけ。
二幕はゴールドとシルバー
サーカスはパステル調の淡い色調。レッドカーペットの赤。そのような色彩設計になっている。



**********
全体の質疑はここで終了。
このあとも果てることなく個別の面談が続いた…。
本当にお疲れ様でした。
田尾下哲様、ありがとうございます!

(※上記の記事は田尾下先生にご校閲いただきました。お忙しい中ありがとうございます。)





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最終更新日  2019年10月24日 07時46分46秒


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