やっと、 山中千尋さんのライブ への「旅のお供」の本、「知の逆転」をようやく読了。名著『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンド、生成文法理論で言語学・哲学にパラダイムシフトを起こしたノーム・チョムスキー、映画にもなった『レナードの朝』の著者・神経学者のオリバー・サックス、人工知能の父と称されるマービン・ミンスキー、アカマイ創業者・数学者のトム・レイトン、そしてDNAの二重らせん構造を明らかにしたノーベル賞受賞者のジェームズ・ワトソン。どの方もその分野の碩学といえる方で発言は唸らされるばかり。チョムスキーさんは吉川弘之先生の講義に出てきて以来で、随分と懐かしい。ジェームズ・ワトソンのDNAの二重らせんの本を読んだ大学生の時の感動を思い出す。
この6人の碩学の中でパパが唯一実際に逢ったのはマービン・ミンスキーさん。メキシコの観光地 カンクーン での人工知能の学会(確か、CancunのSheraton Hotelに1週間くらい泊まったはず。New Mexicoから来たアメリカから来た白人老夫婦と友達になって、この後ジャマイカに行くと言ったら、「キングストーンとか危ないから止めとけ」言われた)でアロハに短パン姿のミンスキーさんでした。当時、パパも人工知能に勤しんでいました。確か、気の利いたスピーチをされた記憶がありますが、残念ながら内容は覚えておらず。この本では「ロボット開発は30年間停滞したまま」と言われていて、かつてロボット開発に携わった者としては耳が痛い想い。読者のレビューで「短くて内容が浅いと」かありましたが、パパのレビューは全く異なる。周囲の反対にメゲタリ、迎合せず、対峙しながら「知の水平」を切り開いてきた達人の生き様がアリアリと分かるので、読む価値あり。以下に名言を抜粋します。
・生物学でノーベル賞をとるような人は、論文を片端から読むような人ではなく、何を探すべきか、何が大事か、ということがわかっている人です。(中略)世界事情も同じで、垂れ流しの情報があってもそれは情報がないのと変わりません。何を探すべきか知っている必要がある。そのためには、理解あるいは解釈の枠組みというものをしっかり持っていなければならない。(ノーム・チョムスキー編、p102)
・重要なことは先生と生徒の間のポジティブな関係だと思います。そして、もちろん情報を教えることも重要ですが、最も生徒を生き生きと興奮させるのは、先生の情熱です。たとえば私の生物の先生から何よりもわれわれ生徒に伝わってきたのは、その先生がいかに自然や動物が好きか、どんなにそのことを話すのが楽しくて仕方がないかという彼の情熱でした。(オリバー・サックス編、p156) ・問題は、研究者が、ロボットに人間の真似をさせることに血道をあげているということ、つまり単に『それらしく見える』だけの表面的な真似をさせることに夢中になっている、というところにあります。。(マービン・ミンスキー編、p173)
・本来、人はみなそれぞれ異なっているのに、同じだとみなさなければいけなくなってきている。同時に、あるもののほうが別のものよりもいいという言い方は避けて通るようになってきてもいる。だから、どの花も全て同じように咲くんだという。ごまかしです。(ジェームズ・ワトソン編、p274)
<<知の逆転-目次>>
第1章 文明の崩壊(ジャレド・ダイアモンド)
第2章 帝国主義の終わり(ノーム・チョムスキー)
第3章 柔らかな脳(オリバー・サックス)
第4章 なぜ福島にロボットを送れなかったか(マービン・ミンスキー)
第5章 サイバー戦線異状あり(トム・レイトン)
第6章 人間はロジックより感情に支配される(ジェームズ・ワトソン)
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