ママ、ショウコちゃん、ユウ君がママの実家に里帰り。束の間?の休息になったので、迷った挙句車山高原に持っていくのを断念した、『貘の檻』(道尾秀介著)を一気に読破。午後4時過ぎまでお昼寝モードだったので、計422ページを4時間くらいで読んでしまった。力作。
車山高原に持っていくのを逡巡したのは、 アマゾンのレビュー があまりに悪かったせい。確かに全般に、特に辰男の悪夢に漂う陰湿で、重苦しくて、暗く、淫靡なクダリはいただけないが、本格ミステリーの傑作。エピローグの謎解きが「2時間ドラマ」風の安易な進行である点は改善して欲しい。ここが-★。★★★★。道尾作品で一番最近読んだ、「 鏡の花 」で本作の習作と思われる箇所が多く、道尾さんの本作『貘の檻』への意気込みが物凄いと思っている。文学路線だった、『光媒の花』の系統で「人間の心の闇」がきつ過ぎるのがアマゾンのレビューがあまりに悪い要因だと受け止めている。
本作でインスパイアされたのは、「 松田優作+丸山昇一未発表シナリオ集 」の中上健次原作「荒神」。『荒神』を読んだ優作は丸山に対し、「最高だ。お前に会わなきゃ良かった。俺はこの映画一本で駄目になる。」と絶賛したエピソードを思い出した。役者生命を危うくするような危険なシナリオ。主人公・ゴロは正常と狂気の狭間に生きる男。全編「暗さ」と「冷たさ」が漂っていた。「荒神」のゴロ(松田優作本人もか?)の「暗さ」、「桎梏の深さと複雑さ」が本作『貘の檻』の辰男の生い立ち、最近の生活振りにも共通し、やるせない気持ちになる。
物語の終わりで、辰男をパパではなく「お父さん」と初めて呼び、辰男の側に立つ俊也。父と息子の一体感が出来ている。これまでの運に恵まれなかった辰男の過去、悪夢を断ち切る希望。救われた思いがした。誤解で母は失ってしまったが、俊也をカスガイにして妻とはやり直して母を同居に誘った、「笑いのある」暖かい家庭を辰男には再生させて欲しいと願った。
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