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大分以前の話だが、フランスのノルマンディーCaen(カン)
での仕事を終えてモンサンミシェルを目指した。
島内に安いホテルがあるとも思えないので島を見物した後
引き返してポントルソンに宿泊しようと考えていた。
行きのバスでマーガレットと言う名のオーストラリア人老婦人と
隣り合わせた。この人は島内のゲストハウスを予約してあると言い、
せっかく来たのだから私も島内宿泊をすべきだとアドバイスしてくれた。
島の入り口から例の路地を入って修道院の真下の一階がみやげ物店、
二階がレストラン、三、四階がゲストハウスと言う店の
一階にあるデスクでこの婦人は名前を告げ、
自分宛の手紙を何通か受け取っている。
この人はヨーロッパ旅行中一週間一回くらいは宿を予約して
オーストラリアの友人たちに知らせておき、
そこで友人からの近況を知らせる手紙を受け取り、
自分もそこから手紙を書いて旅の報告をしていた。
今のように携帯電話と言うわけでもなく、
十分時間をかけた旅をしていたのが印象的であった。
その婦人の紹介で部屋を確保できた私は部屋からの光景に満足した。
窓下の路地は昼間は喧騒、夜間は全くの無人、
早朝はゴミ集めの手押し車、そして窓の上にはまさしく修道院の塔、
広い窓からはベッドに横たわってもその影は手に取れる距離に見える。
部屋のベッドからの光景
路地と反対側の外周道路から直接入れる2階のレストランで
二人で夕食を執ったが、そのときの話によると
彼女は昨年長年連れ添った貿易商の夫を前年亡くして
今回は夫との思い出をたどる傷心旅行だと言っていた。
ご主人は日本との取引もあって彼女も何度か日本にも旅したとのこと。
この夕食を最後にお別れしたが、数日たって
私はパリに泊まり一日ベルサイユに遊んだ、
その帰り、地下鉄の駅を目指して人ごみの並木道を歩いているとき、
真っ赤なリュックザックを背負った見覚えのある婦人が近づいてくる。
マーガレットおばさんだ、相手もすぐに気が付いた。
次の瞬間大通りの真ん中で二人はハグしていた。
あとでその光景を思い出し赤面することしきりであったが、
そのときは全く自然な行動であった。
私は長い人生で老人とは言え婦人と抱き合ったのは
このときだけのような気がする。
あの人はまだ存命だろうか。
時々思い出しては懐かしんでいる昨今である。
Oxford運河の旅5 2020.09.20 コメント(2)
Oxford運河の旅 3 2020.09.19