タコ社長,オーストラリア・メルボルンのスローライフな日々

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カテゴリ: 忘れられない人々
「パチンコ屋さんに入ったことなんかありません。」
ちょっと前の話だが、無理にお茶させていただいた、27歳のグラフィックデザインを学んでいる留学生の女性の方がそういう。私は何も、ストリップ小屋とか、競輪、競艇、競馬、花札賭博、などの話しをしているのではない。たかだか、パチンコ屋の話しだ。ちょっと嫌な顔をされた。私は、嫌な顔をされるのが本当に不得意だ。これは一生治らないかもしれない。

「バカねタコさん、パチンコってれっきとした賭け事よ。行ったことのない女性の方が圧倒的に多いのよ。世間知らずね。第一、あのタバコがだめ。私も行ったことないわよ。あんたがマイノリティーなのよ。バカじゃないの!」
最近、親しくさせていただいている中高年女性からそう揶揄された。自己中とは本当に恐ろしい。

子どもの時、邑山の叔父さんが遊びに来るのが楽しみだった。叔父さんは、来る前に必ずパチンコ屋に寄って来る。そして、沢山の景品をお土産に持ってきてくれ る。牛乳瓶の底のような度の強い眼鏡をかけて、寡黙だけど人を笑わせる邑山の叔父さん、戦争中は憲兵隊でソ連の捕虜になってシベリアで抑留生活をしている。そんな過去の陰を感じさせない優しい叔父さんだった。叔父さんは、母の出身地秋田から冬の間出稼ぎで来ることが多かった。

叔父さんに連れられて、パチンコ屋に何度か行ったことがあった。落ちているパチンコ玉を拾って遊んだりしていた。結構、玉って落ちているもんだった。しかし、そんな日に限って、叔父さんは不調だった。
「今日はダメだな。」なんて言いながらタバコのヤニで黄ばんだ歯を出して笑った。

― ああ、今日も500円すってしまった。
東京は大塚にあった「武蔵予備校」に通っていた19歳の夏、大学合格の自信が全くなく荒んだ気持ちを、そのままパチンコ屋に持ち込んでいた。親の脛かじりの予備校生が、親の金でパチンコに狂った。行くたびに500円すっていた。探せば、コーヒー60円の純喫茶もあった頃のこと。



邑山の叔父さんは、私が高校1年の1968年12月に、出稼ぎ先の千葉県木更津の病院で42歳の若さで亡くなった。盲腸の手術から腹膜炎を併発した、という本当に残念な死だった。思い出す叔父さんは、やや体を斜めにして立って、左手に沢山のパチンコ玉を握って、素早く穴に入れて右手で連発する真剣な姿だ。

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Last updated  2013年07月22日 23時48分44秒
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