濫読屋雑記

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2006年01月27日
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去年の12月後半に、ナポレオン戦争に関して「ご要望にお応えして『ワーテルーロー戦役』を」と「ナポレオン戦争に関する諸考察 其之壱&弐」を書きました。その中で、ナポレオンが活躍した時代、19世紀初頭の軍用銃に関してアレコレと解説をしました。しかし、このとき紹介した アルバート・A・ノフィ 諸岡良史 訳『 ワーテルロー戦役 』(コイノニア社、2004年)では、軍用銃に関しては実物の写真がありませんでした。また、当時の兵士の姿や戦場の様子を描いた絵画は掲載されていたのですが、兵士個人の装備やその詳細についても、文章だけの解説でした。

そこで、 当時の戦争の小道具についてカラーの写真やイラストを使った解説した本は無いものか? と探してみたところ(これが司書の商売ですからね。)ありました。ちょうど良いものが。しかも、何処の公立図書館でも置いてありそうなシリーズものの中で。それが、 リチャード・ホームズ 著、 川成洋 日本語版監修『 ビジュアル博物館(第63巻) 戦闘 』(同朋舎出版〔アレ!?この会社、確かもう無いぞ!角川書店販売だ。〕1997年)です。

長い歴史をもつ戦闘や戦争を、新しい切り口でいろいろな角度から語る、ユニークな博物図鑑です 。古代ギリシアから中世ヨーロッパ、ナポレオン戦争、そして第二次世界大戦までの各国、ヨーロッパが中心ですが、軍服、兵器などの戦争の道具と、戦争を描いた絵画やイラストが美しく豊富なカラー写真で全ページに掲載され、 戦争にまつわるものすべてが、いきいきと再現されています 。この本を読んでみたところでは、 紹介されている兵器やイラストの比重はナポレオン戦争から第一次世界大戦までの戦争に関する解説が多いです

さて、いつものように内容を詳しく見ていきますと、 まずこの本は見開き2ページを用いてひとつのテーマを紹介するという方法を取っています 。では、この本を探した理由の1つ、ナポレオン戦争時代の軍用銃が載っているのが「 小火器を使って 」というコーナーです。ここでは、 18~19世紀にかけて歩兵がマスケット銃を所持し、どのように活用したかを解説しています 。その中で、イギリス軍がナポレオン戦争時に使用した、 ブラウン・べス・マスケット ベーカー・ライフル 綺麗で銃の全体の特徴までわかる写真が掲載されています。この本が素晴しいのは、銃だけではなく銃に付属する銃剣までセットで紹介されていることです

また、「 身を救う兵器の訓練 構え、狙え、撃て! 」と題して、 ナポレオン戦争当時のイギリスのライフル連隊の将校、下士官、兵士の軍服を着た3人がそれぞれ、ベーカーライフルを立射、膝撃ち、座り撃ちの3種類の射撃姿勢で構える姿が掲載されています 。その軍服に関しても詳細な解説、例えば将校の十字ベルトの銀色の鎖については「十字ベルトには、命令を下達するための笛がついている」とか、帽子の羽飾りについては「将校、下士官、ラッパ手がつけた羽飾り」という具合です。また、このコーナーではナポレオン戦争時に使われていたイギリス陸軍の指導書『 ライフルの操作と射撃姿勢 』(1804年)のイラストもあり、当時の雰囲気が満喫できます。このコーナーを見てみて『 ワーテルロー戦役 』で解説されていた「 ライフル連隊の濃緑色の軍服 」がどのようなものか、理解できました。

最前線の歩兵部隊 」のナポレオン戦争時代の フランス歩兵第21連隊伍長が着ていた軍服と銃と銃剣、その他装備一式の写真が面白いです 。次は、「 勇猛果敢な重騎兵 」のナポレオン戦争時代の フランス胸甲騎兵の軍服一式です 。ここでは、胸甲にあの派手な赤い羽根飾りがついたかぶとに、騎兵の長靴、鞍覆いカービン銃(騎兵銃、マスケット銃より短く馬上で扱いやすくした銃。)などが紹介されています。また、イギリス軍では「 階級を表すもの 」というコーナーで イギリス第7近衛フリントロック銃 (火打ち石式発火装置付き銃) 連隊 の将校の 真っ赤で金ぴかの帽子から長靴までの全身の軍服 が紹介されています。

イラストでは、先述の「 訓練と規律 」ではクリミア戦争「 アルマの戦い 」での バッキンガム宮殿の衛兵でお馴染みの、熊の毛皮の帽子を被った真っ赤軍服 イギリス軍近衛フュージリア銃 (火縄銃という意味です。勿論、クリミア戦争では火縄銃は使っていません。名誉の名称です。) 部隊 の攻撃を描いた「 一線になって前進 」が好きです。次がまた先述の「 階級を表すもの 」でのクリミア戦争での「 細い赤い線 」というイラストです。これは「 シン・レッド・ライン 」(映画の題名にもなりましたね。)とも呼ばれ、1854年に起きたロシア騎兵軍団のイギリス軍基地バラクラヴァ攻撃の際、わずかな兵で迎撃したスコットランド 第93サザーランド高地連隊 (英国では部隊に地名や名称をつけて現代でも表示しています。)の戦闘を描いたものです。このイラストでは、タータンチェックのキルトの民族衣装にガチョウの羽で出来た帽子を被ったスコットランド兵の独特の軍服がよく解かります。あと、「 剣(刀)を振って 」という剣と刀のコーナーの「 騎兵の突撃 」という題で紹介されている、1870年の普仏戦争時に発生した「 フォン・ブレドーの決死の騎乗 」という題の絵が素晴しいです。これは、「 最後の成功した騎兵の乗馬突撃 」で、 プロイセン軍のブレドウ将軍指揮下の騎兵2個旅団が自軍の背後に回ろうとしたフランス軍を阻止すべく、歩兵や砲兵の援護無しで歩兵の銃剣の槍衾(そして後込式のシャウスポー銃で武装していました。)の中へ突撃して、見事にフランス軍を撃退したという戦いです 。この逸話は軍歌ともなり、日本語訳もされています。(歌では「友軍の窮、救うべく、頼むは騎兵旅団のみ」とか「高名長く後の世に、聞かずや高く誉めらるる」とか歌われていたと思います。詳しくは 武市銀治郎 著『 富国強馬  ウマからみた近代日本 』(講談社、1999年9に歌詞が載っています。)

他にも、 色々と面白いものが紹介されているのですが、全部は解説できないのでこのあたりで辞めて於きますが 、このように、 なかなか日本人にはイメージし難い戦争の道具、兵器や兵器を修理したり整備する道具や、兵士の日常を支える品々、戦闘の様子を博物館の展示を見るように紹介してくれている ビジュアル博物館(第63巻) 戦闘 』。 その方面に関心が無い人でも、純粋に見て楽しめる内容になっているので、一度手にとってみては如何でしょうか

(本日、メインで紹介した本の表紙画像がアフィリエイトにありませんでしたので、久々に画像無しです。)






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最終更新日  2006年01月28日 02時15分55秒 コメント(2) | コメントを書く


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