濫読屋雑記

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2006年03月08日
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今日も懲りずに昨日の続き、 久美薫 著『 宮崎駿の仕事 』(鳥影社、2004年)について、 昨日紹介し切れなかった日本のアニメについて少々考えた事を書いてみたいと思います。また、この本に関連する書籍も列挙してみます

さてさて、昨日取り上げられなかった事とは『 宮崎駿の仕事 』の「 補論「日本のアニメはどん詰まり」発言の真意を探る 」という章の中での宮崎監督の発言についてです。なぜ、 今活気に満ちている日本のアニメ業界について宮崎監督は「 どん詰まり 」と発言したのでしょうか?

これは、宮崎監督が説明するには、
僕より二十歳も若い庵野という監督が、「自分たちはコピー世代の最初だ。その後の世代は全部コピーのコピーだ。そしていまや、コピーのコピーのコピーになっているそれがどれほど歪んで薄くなるかわかるでしょう。自分で観てきたものをそのまま描いているんじゃない」という言い方をしていますけど、それは、自分の周りの若い若い人たちと付き合って、僕自身も痛切に感じているのです。
と、いうことだそうです。

庵野 監督とは知る人ぞ知るあの『 新世紀エヴァンゲリオン 』の監督さんです。実は、庵野監督は『 風の谷のナウシカ 』製作時に原画を担当していて、宮崎監督とは旧知の仲なのです。この本では『 ナウシカ 』の「 クライマックスでの迫真的な核爆発でその腕前を見せた彼は 」と紹介されていました。実は、庵野監督と結婚された今飛ぶ鳥落とす勢いのマンガ家、 安野モヨコ さんが庵野監督とのオタな夫婦の生活を描いた『 監督不行届 』の中で、監督のことを「 メカや爆発は得意だが、人間や動物を描くのが苦手 」と紹介されていて、 このことが被っていたのが面白かったです

話を戻しますと、庵野監督はその後NHKで放送された『 不思議の海のナディア 』で宮崎監督の発言の中で語ったとおり、アニメ『 宇宙戦艦ヤマト 日本沈没 』、果ては宮崎作品の『 天空の城ラピュタ 』等のおしいとこ取りという、「半ば自虐的に引用に満ちた作品で人気を博した」のです。この辺りの事は、都合の良い事に庵野監督が所属しているスタジオ「 ガイナックス のメンバーが現在のアニメ界を経営・文化・創作活動・社会への影響等々様々な角度から思うところを語った ガイナックス・インタビューズ 』(講談社、2005年)を読んでみてください。

久美 さんはこのような状況を、「 旧作のパロディで新作が成立してしまうだけの歴史的厚みが 日本のアニメには出来上がっていたといことだ、と指摘されます 。この事はまさしく真実で、この春、児童文学作品の中で超人気の(中学校でコレをリクエストされても対応に困るのですが)『 かいけつゾロリ 』と同時に上映されるカエルの宇宙人が起こす騒動を描いたパロディアニメ『 ケロロ軍曹 』がその最たるものだと思います。だってコレ、 主人公のカエルはガンプラに嵌まっているし 、『 キャッツ・アイ 』や『 ヤマト 』、挙句の果てには『 千と千尋 』等々 主要な日本の名作アニメのパロディで構成されているのですから 。大体、 従兄弟の子どもと見ていて従兄弟の嫁さん(私よりひと回り年上)と私とがそれぞれネタが分かるというのは、チョッと、という感じでしょう

この傾向は業界全体に広がってしまい、庵野監督の『 ナディア 』みたいに 意図して確信犯的に 旧作のストックを複製加工再生産することで活路を見出していった 」んだそうです。そして、一方、このような「 コピーのコピー 」というサイクルに巻き込まれず、「 旧作パロディに堕 」ちずに宮崎監督はどのような人でも「 すっと入り込めて楽しめるような窓口の広いものを志向していった 」のです。 久美 さんはこの<宮崎監督のこのような行動を「 児童文学の路線を選び、若者向けのカルト文化であることに背を向けることで、そういうアニメの闇 (昨日紹介した「 ジャパニメーション 」問題) から距離を取 」ったと解説されています。

では、宮崎監督は 1人孤高の穢れ無き世界に逃げ込んでしまったのか、と言いますと、それは違うようです 久美 さん曰く、宮崎監督は 自らも出身は普通のテレビに流れているアニメ番組から来ているのだ、とほのめかしている様なのです (昨日も書きましたが、実は海外では日本の普通の夕方6時代に放送されているようなアニメでも、表現が「性的描写・暴力的表現」に溢れているとして、危険視されているのです!)。元々、宮崎監督は日本アニメーションで『 アルプスの少女ハイジ 』、『 母をたずねて三千里 』、そして『 未来少年コナン 』、『 名探偵ホームズ 』などのテレビアニメを経て『 カリ城 』に辿り着いたのですからね(その前に東映動画でアニメ映画を製作に携わっていました)。この辺りの事も宮崎監督と共に数多くの仕事をこなされた 大塚康生 監督の『 作画汗まみれ増補改訂版 』(徳間書店、2001年)を読まれると良いと思います。

では、宮崎監督が 指摘したようにそのような危険で独りよがりで、病んだ世界でアニメーションを作っている他の日本の作り手にはそのような自覚があるのか! 久美 さんは宮崎監督の言葉を用いて本書では問いただしています。そして、 日本の宮崎監督アニメーション評論がそのような問題点に目を向けることなく、ただ 宮崎 監督の作品に圧倒され周囲の状況を把握できないでいたこと、そして「聡明すぎる宮崎」監督がこのような状況、論評する側の無能さに我慢できずに作者自身が「自作や自作を巡る厳しい現状についても」分析して語らねばならないという事態に、反省の弁を述べて本書は終わっています

確かに、 今の日本のアニメは視聴者の好みに事細かに合わせた雑多な種類のアニメが文字通り「 氾濫 」していますからね~ その中から、良質な作品を探し出すのは一苦労です 。そして、少しでも当たる作品を作るために製作側は最近良くやり出した 人気のライトノベルやマンガの映像化 、という手段を持ち出したのでしょうね。一からストーリーを組み立てて作品を作り上げる製作者の余裕もスポンサーの資金も無いのでしょう。でも、『 英國戀物語エマ 』や『 十二国記 』、そして『 ハチミツとクローバー 』のように 原作の世界を壊さずにそれを映像と音声と言う武器を用いて上手に表現した作品もありますし (作り手の創作、という観点からは少々問題はありますが)、『 かみちゅ! 』のような アニメオリジナル版 文化庁メディア芸術祭 優秀賞 を取るのですから、 まだ捨てたものではないと思います (自分が視聴した番組だけですが)。ただ、 少し不安なのは歴史的に文化・芸術などに対してお国が嘴(クチバシ)を挟むようになってくる状況は、大体その文化・芸術の衰退期の始まりに当たるのですが、どうなのでしょうかね? 外れることを祈っています

宮崎駿の仕事 ガイナックス・インタビューズ 作画汗まみれ増補改訂版





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最終更新日  2006年03月09日 02時42分22秒 コメント(2) | コメントを書く


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