濫読屋雑記

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2006年03月28日
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カテゴリ: 手に取った本
日曜日にも少し書きましたが、ようやく、3年4ヶ月ぶりに新刊が出ました。 私の大好きな作家さんの1人 ジェイムズ・H・コッブ 氏が書いている『 アマンダ・ギャレットシリーズ 』第4弾、 ジェイムズ・H・コッブ 著、 伏見威蕃 訳『 隠密部隊ファントム・フォース(上) (下) 』(文芸春秋、2006年3月10日)です。

隠密部隊ファントム・フォース(上) 隠密部隊ファントム・フォース(下)

このU.S.Navyの女性将校 アマンダ・リー・ギャレット を主人公とする現在最高の軍事冒険シリーズ兼現代版「帆船小説」シリーズ コッブ 氏は、 海軍軍人を代々輩出する家系に生まれ、自らも軍事史と軍事テクノロジーの研究者であり、合衆国海軍研究所に勤務していたほどの、現代海軍戦略、海軍の軍事行動や各種技術に深い造詣を持つお方です

そして、その海軍に関する知識を駆使して発表したのがデビュー作『 ステルス艦カニンガム出撃 』。以降、『 ストームドラゴン作戦 』、『 シーファイター全艇発進(上) (下) 』、『 攻撃目標を殲滅せよ(上) (下) 』とギャレット艦長or司令(1作目は中佐でしたが、3作目で大佐に昇進。今回はやんごとなき事情により、現役から予備役になってしまいますが、慣例により予備役少将、つまり提督に昇進しています)が活躍するシリーズを書き進めてきました。このシリーズ、 実際のアメリカで研究されていたり、実用化されている装備についての緻密なハイテク描写と卓抜な人物造型、そして何よりリアリティ溢れるスリリングな海戦シーン(水陸両用戦もありますが)で 日本の読者を熱狂させ、もっとも注目すべき軍事スリラー作家 」となった、という次第であります。 ちなみにこの本、先に日本語に翻訳されてアメリカより一足先に日本で出版されています!凄い事ですよ、これは!!

今回は前作『 攻撃目標を殲滅せよ(上) (下) 』の続編です。インドネシアの海運王、 ハーコナン ハーコナン を密かに排除せねばならない、と判断した アマンダ・ギャレット 。彼女は、自身が構想した新戦略“ ファントム・フォース ”構想に基づいて建造されたコマンドー母艦「 シェナード 」を指揮して隠密作戦を開始するのですが、そこに予想外の展開が…。

というようなお話なのですが、まだ本は全体を斜め読みしただけで、これからジックリとそれこそ『 ジェーン海軍年鑑 私が何でコッブ氏の著作が好きになったのかという理由みたいなものを書いてみます

その好きになった理由とは…、答えは簡単なのです 。つまり、 日本の事を良く知って書いている、ということなのです )。例えば、内戦状態の大陸、中華人民共和国に台湾の中華民国が武力介入。旗色の悪くなった中共側は起死回生の切り札として戦略型原子力潜水艦より核ミサイルを台湾に撃ち込もうとします。一方の台湾も核ミサイルを配備。そのような核戦争の危機を阻止すべく苦闘する駆逐艦カニンガムを描いた『 ストームドラゴン作戦 』。

ストームドラゴン作戦

その作品の中で、中共側と台湾側との内戦を停戦すべく、フィリピン・マニラに於いてアメリカ・日本・韓国・フィリピンと当事者たちを交えた国際会議を開きます。ところが、双方が譲らず遂にお互いに核を引っ張り出してきたのでさあ大変。オマケに、中共の攻撃型2隻・戦略型1隻の原潜からなる戦隊が上海から出撃したのをカニンガムが突き止めます。つまり、中共は核戦争をやる気満々だという事が判明したのです(この報告を得た自衛隊の幕僚監部は中台間の核戦争を「十中八九ありうる」と結論を出します)。核戦争になったら北半球の太平洋沿岸部には壊滅的な被害が出てしまいます(チェルノブイリの12倍の被害!ちなみに、この説明を日本の大使が行います)。そこで、会議に出席していた国々はアメリカの音頭の元、台湾側に組して災難の元凶、戦略型原潜を撃沈しようとします。その際、コッブ氏は韓国・フィリピンが即座にアメリカの意思に従い、台湾と一緒に対潜作戦を行う事に同意したのに対して、日本の大使にこのように語らせます。

一同の視線が諸星大使に集中し、日本の決断に焦点が合わされた。諸星大使はしばらくためらっていたが、やがて口をひらいた。「 日本は国の政策の一環として戦争放棄を宣言しています。この方針に例外を認めるには、かなり強力な動機が必要でしょう。しかし、核兵器による破壊の脅威がわが国におよぶというのは、じゅうぶんな動機となると思います。この件に関して日本政府の全面的支援を期待してくださって結構です 」(274~275頁)

どうです。皆さんは、当たり前の事だ、何を言っているの?、とお思いでしょう。実は、日本国憲法第9条は国際的、それは当然、外交官や学者などの知識人は知っていますが、政治家や軍人、普通の人々などにはあまり周知されていないのです。とくに、「戦争放棄」や「軍隊の放棄」などは自衛隊を保有している事や、日本政府が国際的にプロパガンダをしてこなかったために、ほとんど理解されていない状況なのです。なんだ、それは!とお思いでしょう。でも、このような状況なのです。例えば、今騒々しい日米安全保障条約。日本では国民のほとんど全ての人がアメリカが同盟国だ、ということをご存知でしょうが、肝心のアメリカの一般国民は「え!日本と軍事同盟結んでいたの?」というような反応がほとんどです。いや、本当に。つまり、如何に崇高な理念を掲げていても、それをキチンと国際的に宣伝して理解を得ないと全く意味が無く、中国の強力なプロパガンダに敗れてしまうというわけなのです(韓国は、国際的信用、ぶっちゃけアメリカからの信用が下降の一途なので、何を言われても気にする事はありません)。

では、 何でコッブ氏はこんなに日本の内情をご存知なのか (日本の大使の言いようは翻訳の影響もあるでしょうが、我々にとってすんなりと受入られませんか?)。これは、 やっぱり海軍研究所に在籍されていたためでしょう U.S.Navyにとって日本はなくてはならない最重要同盟国なのですから、先方はシッカリと日本についてアレコレ調査・研究しているわけです 。アメリカ第7艦隊の基地として、中国・ロシアに対する前線基地として、そして何より太平洋の軍事的防波堤としてその価値は計り知れませんからね。考えてみてください。日本国内にある在日米軍基地、横須賀・厚木・岩国・佐世保…、みんな旧帝国海軍の軍港や飛行場だったところですよ。さらに、横須賀には空母信濃(戦艦大和型3番艦)が入っていたドッグがあって、そこは現在、アメリカの空母の整備用に使われています。アメリカ西海岸へ日本近海から行くのに約1ヶ月、ドッグに入っている期間を除いても往復と補給等で3ヶ月近く時間を浪費してしまいます。でも、日本で整備を済ませれば…。時間が節約され、整備費もお得!おまけに、日本の熟練の職人さんたちがミッチリと点検・整備を行うので、アメリカ本土で整備をするより良い、との評価までいただいているのです。造船大国日本万歳!!

まぁ、その他にも色々と理由はあります。でも、その辺の事情を書くとオーバーフローしてしまうので、 阿川尚之 著『 海の友情 』(中公新書、2002年)を参考にして下さい。

海の友情

では最後にこの本の解説を書かれた書評家、 福井健太 氏のこのシリーズに関するおすすめの言葉を書いておきます。

本シリーズは、「 軍事テクノロジーや国際スリラーに興味がない人でも楽しめる、エンタテイメントの王道を踏まえた作品群 」なのです。

という事で、今日は 海軍ネタ で書いてみました。では!





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最終更新日  2006年03月29日 01時19分46秒コメント(0) | コメントを書く


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