2004.04.01
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今までこんなことはなかったのに,終点のバス停でようやく気付いた。
運転手のアナウンスを聞いても地名を聞いたことすらなかった。
自分がどれだけ外のことを知らないか分かる。

降りてみるとまだ空は青いような色をしていた。秋特有の,自分が小さく見えてしまうような高い高い空。雲を見ていると,吸い込まれそうになる。
今日の空は特に綺麗だとコウタは思った。つんとした冷たい青じゃない。どこか柔らかい暖かさがある。
青い絵の具を極限まで水で薄めて,ほんの少し黄色や黄緑の明るい色を差したような。
吹き抜ける風も冷たいけれど暖かかった。木の葉がカラリと舞う。

反対側の道に行って,またバスで引き返さないといけないので,上を向いていた自分を前向かせる。
前を見て驚いた。
たかがバス停幾つかの差で,これほど街に差があるのか。
自分の住んでいるあの色あせたような街とは違った,きれいな街の風景が広がっていた。
何もかもがキラキラして見えた。
煙草屋の看板ですら,宝石が埋め込まれているのかと思うほど…。
それどころか公園のブランコも,水たまりも,道ばたの店も,全てミニチュアの模型の中にでも入ったように凛とした佇まいをしている。
 急に心細くなった。
小さい頃 迷子になったときに見る,あの感覚。世界が自分を置いて一歩遠ざかってしまったような,あの感覚。
人通りも少なくて,本当にどこか異世界に紛れ込んだ気がした。
どきどきした。

道を渡ろうと歩いていると,人がこちらへ歩いてきたのでほっとした。
よく見ると周りにも何人か人が出てきたことに気付いた。
日は暮れようとしている。
しかしよく見ると,人は皆同じ方向に歩いていく。何かあるのだろうか。
落ち着いたら好奇心が出てきたので,少し寄り道することにした。
日は完全に裾のに落ちて見えなくなった。先刻よりも暗い青が空を包んだ。気の早い星がきらりと目を掠めたような気がした。

人の流れについてゆくと,そこは広場になっていて,人通りのなかった夕暮れの通りと比べると,とても賑やかに思えた。
ふと,その中心にある台の上の,透明の半球状のガラスに目がいった。
人がまばらに集まっている。

行ってみると中には青い服を着た少女がひとりいて,中でピアノを弾いていた。

ピアノっていうだけであんなに綺麗な音が出せるものなのかな。
まるで光を指先でピン,と弾いた様な。
僕は暫くそこに佇んで,不思議なピアノの音に耳を傾けることにした。
少女は目を瞑ってピアノを弾いていたが,時々瞼を開いて何かを見ていたように見えた。ピアノではなくその先の,太陽のない遠くの空を。




              ○つづく○







連載小説『ピアノと青』ー


読者が少ないのでのせてみる。強引。かつ素敵。




見てねー。 別に見なくてもいいけどー



今度色々描くねー。

あたしとしては好きなんだよねこれー





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最終更新日  2004.04.02 18:23:22 コメントを書く


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