サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2007.01.05
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 こんな話をするというのも、近畿地方の私鉄の吊り下げポスターに、伊勢神宮の朝日に照り輝く写真が出ていたからです。
 例の千木に施された装飾金具と白木の社殿が眩く、かつて元日の朝に一度だけお参りしたときの記憶が、その時の朝の空気のニオイも含めて、ありありと蘇ってきました。

―― 底津(ソコツ)石根(イワネ)に宮柱(ミヤハシラ)ふとしり、高天原(タカマノハラ)に氷椽(ヒギ=千木)たかしりて…――

とは、「古事記」の天孫降臨のくだりや「祝詞」に出てくる、社殿を言祝ぐときの常套句ですが、更地に丸太を突き立て、天高く千木をそびえさせた伊勢神宮の姿は、まさしくそれで、天照大神(アマテラスオオミカミ)が世界をあまねく照らす太陽母神であり、冬のこの時期、特に古代人にとっては、太陽の復活は重大事であったことでしょう。
 前にも触れましたが、三種の神器とは天照大神の神代(よりしろ)として、天孫降臨の際に天照大神より瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)に授けられた、八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)=草薙剣(くさなぎのつるぎ)のことですが、伊勢神宮の御神体は八咫鏡とされ、鏡=光が古代人の世界観の中でも、ことさら大きな位置を占めていたことを表わしています。
 弥生時代にさかのぼる銅鏡や、古墳時代に副葬品として棺に入れられた大量の鏡は、ヤマト王朝が出現する以前からの、光に対する古代人の強い渇望を示すかのようです。

 伊勢神宮は天武天皇のころから、式年遷宮といって20年ごとに社殿をとなりの更地に建て替えるのですが、結果として私たちは神話時代の建築を、創建当初に近いであろう状態で見ることができるのです。この古くなった社殿を、その都度建て替えるという習慣は、どうやらヤマト政権が代替わりごとに繰り返してきた遷都の習慣を残したもののようで、清浄と新しさ(更新)は古代人に不可欠の生理であったようにも思え、これはそのまま神道の考え方にも連なるものでもありました(現在の伊勢神宮、その後の神道的世界観に彩られている部分も相当あるので、原古の日本を想像する場合は注意する必要があります)。
 「古事記」や「日本書紀」にみることができるように、古代においては王権の継承争いは日常茶飯事で、女帝が何人か誕生したのも、多くは継承争いの決着が付くまでのつなぎの意味合いがありました。
 これは私の想像ですが、 王権の継承争いというのは、古代では社会的に認知されたしくみ
 これを今日の目から王位継承の制度が安定していなかったとみるのは、間違っているような気がします。当時の社会はそれを必要としたのです。継承権が確定するためには、王位のトップが強くなくても構わない社会制度が必要でした。それを供給したのが大陸の律令制度で、天皇(スメラミコト)が政治の表に登場する時代は終わり、摂関政治をはじめとする政治の実際的権力者の時代に移っていきました。これは同時に代替わりごとの遷都の必要性も無くなったことを意味するので、式年遷宮の制度を定めた天武天皇とは、やはり相当時代の画期を明確に意識していた人だったようですね。
 当時すでに大陸から仏教とともに大陸様式の建築法が伝来しており、法隆寺の創建は今の伊勢神宮よりおそらく古いのです。そして法隆寺は1300年前の姿を崩壊もせずに今に残しているわけで、もし天武天皇に永く伊勢神宮を残そうとする意志があれば、大陸風の瓦葺、石畳の社殿もありえたでしょう。それをあえてせず、わざわざ20年足らずで朽ちてくるのがわかっている古来の高床穀倉様式にこだわり、式年遷宮を定めたのは、やはり天武天皇自身が叔父甥の間で争って勝ち取った王権の意味を、後の世に残すためだったでしょう。

 何だかまた前の話の繰り返しになってきました。歴史を考えるよすがとして、伊勢神宮の聳え立つ千木がいつにもまして新鮮に見えたので、こんなことを書いてしまいました。

                                     ― おわり ―





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Last updated  2007.01.05 12:15:08
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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