サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.05.28
XML
カテゴリ: 文学
 ここからの話は、おおいに気をつけないと、セクハラのそしりを浴びせられそうですが(この物語にはその種の話が多い)、まあ余談ということで許してください。

 前にも少し話したことがありますが、かつて私の上司であった営業部長、男の我々に対しては体育系の腕力で使いこなしながら、女性営業社員に対しては極めてキメが細かい。アメとムチの使い回しが絶妙で、誰も同じような管理術はマネ出来ないと思ったものでした。
 数百人の女性営業社員を前に、すべての人に目標達成の火を燃え立たせるのは、管理者として並大抵ではないのですが、この人には不思議な力があって、相当キツイ中味でも女性たちは(嬉々として!)ついていくように見える(そして一仕事終わって、頭を冷やして考えてみると、彼女たちは、何てシンドイことをしたのだろう、と思うんだそうです。それでも翌日またついていくというのは、ほとんど一種の催眠術ですね)。
 これは何も光源氏のような「たはぶれ」に由ったのではなくて(そういうのも少しはありました)、要は女性が直に感じる(理屈じゃないですよ)Sex Appealを、この部長は色濃く持っていたということです。例えばヨン様のような典型的な美顔ではなく、チョイワル系のG・クルーニーとか、チョイアブナ系のB・ピットみたいのが、それにあたるかとも思うのですが(ファンの皆さんゴメンナサイ!)、世間的に見てチョットいかがなものか、と眉を少しひそめる要素が、逆にとても(女性から見て)たまらなく可愛く見える、ということはあるようですね。
 この種の男=オスの「可愛げ」なるものについては、いろいろ言いたいことがあるのですが、キリがないので別にしたいと思います。
 これに近いパーソナリティーとして、すぐに思い浮かぶのが、司馬さん言うところの「人蕩し」豊臣秀吉なのですが、彼のようにたんに気配りがよく利くというだけでなく、フッと子供的媚態(甘え)を示して、相手の頭でなく子宮(理屈でなく感性)に訴える、「人蕩し」の術(人心管理術)として自身のSex Appealを嫌味なく駆使できる男=オスというのは、今どきの日本ではとくに少ないのかもしれません。 以上、ムダ話でした。

 しかし、だから!平安時代がセクハラが蔓延し、爛れきった社会であったと決めつけるのは、これまた時代を閑却した暴論で、その決めつけによって取り逃がす、普遍的な人間心理のほうがはるかに多い。古典はそれぞれの時代の文脈の中で読まないと、その中味はなかなか立ち上がってくれません。
 やっかいなのは今の私たちもまた、 生きた時代の流れの中にある ということで、セクハラ論議がこれだけ蔓延した社会では、かの時代の人々のつき合い方とか、心の機微を想像するのはなかなか難しい。昔を見つめるこちらの視線も、常に流れている(変化して行く)のです。古典を読むとは、今を生きる私たちの思考態度や姿勢を、過去から試されているようなものです。何だか難しくなってしまいました。
「大人の」振るまい を示すようになると、彼に夢の王子様を仮託してきた読者には、多少ともある種の幻滅感が生じるのは仕方がないのかもしれません。彼もまた若き貴公子から、世に長けた大人になっていくのです。

 あの手この手で、女を「懐かせた」光源氏は、別れ際に歌を読み掛ける。これは女の器量を見定める最後のダメ押しのような歌ですね。

 (源氏)「かねてより 隔てぬ中とならはねど 別れは惜しきものにぞありける
 慕ひやしなまし」
と、のたまへば、(女)うち笑ひて、
 「うちつけの別れを惜しむかごとにて 思はむ方に慕ひやはせぬ」
馴れて聞こゆるを、(源氏)「いたし」と、おぼす。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 源氏の君が、「以前から 知らない間柄でもないものの 別れはやはり辛いものよのう
そなたを慕ってついて行こうかな」
と、おっしゃると、女はホホと笑って、
「私との別れを惜しむ振りをして 本当は明石の方にお会いしたいのでしょう」


 乳母や女房の心得として、主人などの懐柔を軽く受け流す、あるいは秘密をしゃべらない、といった気の利き方はたいへん大事なので(今でもそうですが)、源氏は最後のこの返歌で、女の優秀な器量を確信したでしょう。なんだか祇園や銀座の気の利いたホステスさんとのやりとりみたいですね、私は知りませんが!?

― つづく ―





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.05.30 10:41:43
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Calendar

Archives

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02

Profile

TNサリエリ

TNサリエリ

Comments

TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: