サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.09.01
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 総選挙の狂騒に煽られて、ちょっと休んでしまいました。前から言っているように、このブログでは政治向きの話はしない、ということを基本にしているのですが(その種の話題は、中身がすぐ古びるので)、それでもこれだけ見事に与野党がひっくり返ってしまうと、いろいろ思うことが出て来ますね。

 これを外から眺めた場合、どういうふうに見えるかと想像すると、例えば伝統的な民主国家を自認するような英国とかアメリカとかからすれば、中国や朝鮮半島やフィリピンといった数あるアジアの一国家が、やっと50年以上の一党独裁から、政権交代を内包するまともな民主国家に一歩近づいた、というふうに見るでしょう。我々自身の意識はともかく、外から見れば日本人の国家や政治に対する向き合いかたは、外見的な意匠はともかく実質的な気分としては、多分にアジア的な事大主義に対して強い親和性を持っていて、それはとりあえず政権交代した今となっても、そう大きく変わってはいないだろう、と思うのです。おそらく政治的には初心な集団の民主党が、ここ二、三か月で目に見える歴史的な(100年ほどのスパンの)改革を出してこないかぎり、来年の参院選では手痛い揺れ戻しに合うでしょう。

 これは民主党をくさしているのではなく、それほどまでに日本人の政治意識は受動的で、自ら責任をもって判断する、という西欧市民社会的な当事者意識が薄いところがあるので、お上が国民に具体的な当事者意識(例えば、増税とか兵役というような、直截な責任)を求めたとたん、たちまち民意は離れて微温的な江戸時代と変わらぬ、政治に無関心な平民の姿を露呈するでしょう。自民党は、その江戸時代以来変わらぬ日本人の習性を見抜いて、それをとことん利用してきたのです。それほどまでに日本人の政治参加意識というのは、その日常生活感覚から乖離しているので、これは敗戦後も戦前も変わりなく、さらに言えば明治以来の東京一極体制という事大主義的国家感が、今でも大して変わりなく強烈に日本を支配しているということを示しています。

 そして、これはあるいは江戸時代以前にまで遡って考えなければならない日本人の振るまいかたなのかもしれません。私が「源氏物語」をながながと読み耽っているというのも、一つには今の日本人には到底ありえない心理的な振るまいかたの構造が、かつての日本にはあったかもしれないと思っているからで、1000年前の日本人の貴族意識や天皇に対する仕方は、今とは明らかに異なっているのです。
 早い話、今の皇室を舞台にして「源氏物語」のような物語は、誰もよく書かないでしょう(あえて挙げるとすれば、三島由紀夫の「春の雪」がかろうじて入るのかもしれません)。それくらい明治以来の立憲君主制のくびきは重いし、それを書くには覚悟が必要なのです。
 古典を読むというのは、考古学のように廃墟を発掘して、今の世に復活させるということではなくて、今という世を無前提な所与のものとしてではなく、歴史の中に相対化して批判的に見つめるということです。私など、そうやって、こうした人間像もありえた日本という歴史を想像して、少し安心するというか、悦にいっているところもあるのですが、なんちゃって。

 例によって小難しい話をしてしまいましたが、光源氏のどうにもハナモチならない貴種意識の充満したシレッとした振るまいというのは、今の日本人の感覚には無いものであり、むしろ西欧の貴族階級や大陸の独裁者に普通に見られる感覚かもしれません。実をいうと、私はそういう感覚を臆面もなく開けっぴろげに示して、屈託するところがない光源氏という人物像が(今どきの日本人の男と、懸け離れている、ということで)、ある意味とても魅力的なのです。
 しかし、よく考えてみれば、世の古今東西のヒーローだのヒロインだのとされる人物たちというのは、もし現実に我々の側に現れたとしたら、ちょっと引いてしまうようなキャラクターばかりでしょう。フィクションとは、その中に現実から切り取った典型化があってはじめて成り立つので、こうした濃いキャラというのは現実には存在しないか、ナポレオンやヒトラーのような、巨大化した妄想狂にならざるを得ない(彼らほどではないにしても、大小さまざまな巨大妄想狂の集団が、現実社会にコミットして国家を壟断するとき、理由もなく無辜の民が大勢死んだり飢えたり、はたまた迫害されたりするのです)。ということは、現実生活を営む我々にとっては、こうした人物たちは、はなはだハタ迷惑な存在ということになってしまいます。

 それでも光源氏が我々を魅了して止まないというのは、それがフィクションの中でのみ光彩を放つからであって、この云わば、フィクションという形式を味わううえでの常識のような態度というのは、「作り物語」をよく読んでいた平安時代の読者は、案外今どきより、よく知っていたのかもしれませんね。





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Last updated  2009.09.01 15:14:19
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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