サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.09.05
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 a系 b系の仕分けについては、(源氏1000年 その二 32.)の表を、ご足労ですが見てください。
 さて、現在伝えられている源氏物語の「帚木」の帖は、冒頭の「桐壺」の帖の後におかれ、時系列的にもそこにしか置きようがないのですが、今どき初めて読んだ人は、この物語の前知識を多かれ少なかれ持っていますから、何となく「そういうものか」と、通り過ぎてしまいます。その語り出しというのは、

―  光る源氏、名のみことごとしう、言ひ消たれ給ふ咎(とが)多かなるに、「いとゞ、かゝるすきごとどもを、末の世にも聞き伝へて、軽びたる名をや流さむ」と、忍び給ひけるかくろへごとをさへ、語りつたへけん、人の物言ひ、さがなさよ。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 光源氏といえば、名前こそ大層だけれど、(側付きの女房たちが)口をつぐんでしまうような罪深いお取り沙汰も多いのに、(源氏の君が)「どうしても、このような色恋沙汰というのは、末の世まで語り伝えられて、軽々しい浮名を流すことになるのだろうか」と、内緒になされた秘め事さえ、語り伝えようとした、人(女房たち)のおしゃべりの、意地悪なことよ。

で始まるのですが、もし仮に「源氏物語」をまったく知らずに、「桐壺」につづけて、このくだりを読んだとしたら、どんな感じがするでしょう。「桐壺」では光源氏のことは元服した十二歳までしか描いてないのですから、ここの「光る源氏、名のみことごとしう … 」という、すでに色恋沙汰ですっかり有名であるような語り出しはヘンでしょう。
 これは明らかに、読者がすでに光源氏の何たるかをよく知っていて、その前提で始める語りかたなのです。

 で、この語り出しと、頂度、対をなす形で締めくくられているのが、第四帖に置かれた「夕顔」の結文で、

― かやうの、くだくだしきことは、あながちに、かくろへ忍び給ひしもいとほしくて、みな漏らしとどめたるを、「などか、帝の御子ならむからに、見ん人さへ、かたほならず、ものほめがちなる」と、つくりごとめきて、とりなす人、ものし給ひければなむ。あまり、物言ひさがなき罪、さりどころなく。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 このような、煩わしいことは、(源氏の君は)何とか、ひた隠しに隠していらしたのがお気の毒で、誰も触れないでおいたのに、「どうして、帝の御子であるというだけで、(源氏の仕業を)見知っている人までが、非を咎めるでもなく、何でもかんでも褒めてばかりいるのか」と、(この物語を)作り話のように、受け取る方が、いらっしゃったので(遠慮なく、書いてしまいました)。あまりにも、無遠慮なおしゃべりの罪は、免れがたいことで(申し訳ありません)。


 したがって、「帚木」「空蝉」「夕顔」の三帖が、まとまって構想され書き継がれて、後から「桐壺」と「若紫」の間に挿入された、という説は、ほぼ間違いないと思われるのですが、そもそもこの三帖はどういう構想で描かれたものなのか?

 大野さんは、この三帖も含めた、いわゆるb系の物語を、ここの結文に書かれたように、源氏の失敗譚として描いたとされます。確かにb系物語の主要人物、空蝉、夕顔、末摘花、玉蔓の四人の姫君に対する源氏の想い掛けは、すべて失敗しているのですが、では逆にa系物語のヒロインたちに対してはすべて成功しているのかというと、とんでもない、他ならぬ朝顔の宮との関係はちっとも進展していないじゃないか、という反論が成り立つのです。つまり一連のb系物語を、源氏の失敗譚と一括してくくるのには無理があるので、別の視点がいるような気がします。

 で、それは何かというと、おそらくそれは古物語の例えば竹取物語のような「求婚譚」が下敷きになっているのではないか?a系物語が「貴種流離譚」を土台にしているように。

― つづく ―





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Last updated  2009.09.05 11:02:30
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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