サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.09.20
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 しかしこうした教育パパのスパルタ教育は、夕霧本人にははなはだ不可解で、腹の立つ指図であったわけで、1000年前の「親の心、子知らず」のさまが描かれます。

― 大宮の御もとに、をさをさまうで給はず。「夜昼、うつくしみて、なほ、児のやうにのみ、もてなし聞え給へれば、かしこにては、え物習ひ給はじ」とて、しづかなる所に、こめたてまつり給へるなりけり。
 「一月に三度ばかり、まゐり給へ」
とぞ、ゆるし聞え給ひける。つと、籠もりゐ給ひて、いぶせきまゝに、とのを、「つらくもおはしますかな。かく苦しからでも、高き位にのぼり、世に用ゐらるゝ人は、なくやはある」と、思ひ聞え給へど、大方の人がらまめやかに、あだめきたる所なくおはすれば、いとよく念じて、「いかで、さるべき文ども、疾く読みはてて、まじらひもし、世にも出でたたん」と、思ひて、たゞ四五月のうちに、史記などいふ文は、読み果て給ひてけり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 (それ以来、夕霧は)大宮のもとには、ほとんどお出かけなさらない。(源氏の君は)「(大宮は)夜昼いとまなく、(夕霧を)可愛がって、(まるで)まだ、子供のように、お取り扱いなさっているので、あちらでは、とても(まともな)勉強はお出来になるまい」ということで、静かな(二条院の)勉強部屋に、お籠もらせになったのである。
「月に三回ばかりなら、(大宮のところへ)参ってもかまわないよ」
と、(源氏は夕霧に)お許しになった。(しかし、夕霧は)ずうっと、籠りっきりになって、腹ふくれるままに、殿に対して、「ひどいことをなさるものだ。こんな苦しい目をしなくても、高位に昇って、世に重んじられる人は、(いくらでも)いないわけではないだろうに」と、お思いになるが、(そこは)もともとの気質がマジメで、浮ついたところがないお人柄であったので、ことさらよくガマンして、「とにかく、しかるべきテキストを、早くマスターしてしまって、人とも付き合い、世間にも打って出よう」と、思って、そこそこ四、五ヶ月のうちに、史記のような漢籍を、読んでおしまいになった。

 先日の大宮との会見で、源氏は彼女の夕霧に対する溺愛ぶりを、すっかり見切っているので、上のような夕霧への指示となるのです。
 息子のほうは左大臣家の大宮(祖母)のもとで、大勢の頭の中将の息子たちといっしょに育てられていたのですが、大宮は取り分けて源氏と故葵の上の子、夕霧を可愛がってきたらしい。居心地のいい大宮のもとから離されて、自分だけがなぜ他の人と違うことを、と思っていても、父たる光源氏の眩いばかりの威光に、息子は逆らえない。しかしであるなら、とにかく面倒くさいことはサッサと済まして、一刻も早く娑婆に打って出よう、という発想は、いかにも恵まれた家庭の家庭教師つき私学の秀才という感じで、今どきでも一部富裕層に多く見られるタイプですね。


 父の期待通り、夕霧は大学への寮試も一発で合格して、いったん話は落ち着きます。

― つづく ―





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Last updated  2009.09.21 12:51:14
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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