サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.12.19
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 さてお伽話的に始まった「玉鬘」ですが、右近が姫と長谷寺で出会ったのが、おそらくこの年の夏で、一行が六条院に入ったのが秋の暮れ、ひとまずこの話はいったん落ち着くのですが、源氏と紫の上の微妙な心内は年の瀬になっても続いているわけで、

― 年の暮に、御しつらひあるべきこと、人々の装束など、やんごとなき御列に、おぼしおきてたり。かゝりとも、「ゐなびたることもや」など、山がつのかたに、おぼし侮りおしはかり聞え給ひて、調じたるをも、たてまつり給ふついでに、織物どもの、われもわれもと、手をつくして持て参れる、細長(ほそなが)・小袿(こうちぎ)の、色々さまざまなるを、御覧ずるに、
 「いと、多かりける物どもかな。かたがたに、羨みなくこそ物すべかりけれ、この重ねども」
と、うへに聞こえ給へば、御匣殿に仕うまつれるも、こなたにせさせ給へるどもも、みな、とうでさせ給へり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 その年の暮れに、(玉鬘の部屋の)御調度や、(お側付き)女房たちの装束などは、(他の)高貴な御方たちと同列に、(殿は)お取り扱いなされたが、(姫の器量は)このようでも、「田舎めいたところもあろうか」などと、山里育ちのように、思いなし軽く(姫の好みを)ご推量なさって、用意したものを、差し上げなさる、(その折に)織物など、(職人たちが)我も我もと、技を尽くして(殿に)献上してくる、細長とか小袿の、色彩が様々あるのを、ご覧になって、
 「よくまあ(これだけ)、たくさんの品物があることよ。それぞれの方々に、羨みなく(公平に)お分けしないとね、この織物などは」
と、紫の上におっしゃると、(上は)御匣殿(みくしげどの 北の方の装束所)でご用意させたものも、こちらで仕立てさせたものも、皆、お取り出させになった。

 権勢極める六条院には、自然とさまざまな阿諛追従が出てくるので、天下の職人たちの贅を究めた織物その他が、しかるべき筋を通して次々と集まってくる。光源氏としては余裕の表情で、それを御殿の姫君その他にどう分配すれば、公平か(効果的か)、何やかやと思案している、という図柄です。物品の贈与というのは(公式行事での立ち居振るまいと並んで)、当時権勢誇示のもっとも具体的な行為であったわけですが、同時にここには古代的な我が身の分与という感覚も含まれているかもしれません。「源氏物語」には贈り物をする場面が多いのです。

 ところで話がまた逸れますが、古代経済が物品の贈与から始まった(交換ではありません)というのは、人類学者の指摘するところで、例の内田樹さんは最近のブログでさらに、

内田樹の研究室  2009.12.16「人間はどうして労働するのか」から)

 と、以下さまざま言葉を尽くされて、今どきの「労働の意義」という問い方に疑問を呈されますが、詳しくはぜひ本文をご覧になってください。
 「働くこと」が人間の本源的な属性であり、その由って来たる本質が「贈与すること」なのであれば、光源氏のような「働かない人間(貴族)」というのは、どうも「贈与すること」によってのみ、その(人間としての)存在理由を維持し続けることが出来ているらしいのです。

― つづく ―





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Last updated  2009.12.19 23:51:58
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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