サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.01.19
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カテゴリ: カーネーション
 先週のドラマのお題は、「愛する力」というものでした。
 そこで、「恋」に対する「愛」という言葉の語感はというと、はるかに高々と抽象的一般的な拡がりがあって、例えば「師弟愛」だの「郷土愛」「人類愛」などといった言い方がなされます。これは主として明治以降入ってきたキリスト教的「愛」の観念から来るものかと思われますが、要は「恋」の語感にくらべると、「我から働きかけて行く」というニュアンスが強い。
 糸子が玉枝おばちゃんに奈津の救済を頼みに行く時、気持ではなく具体的な「手」が必要だといっていたのは、まさしく「愛」というのが、こちらから「働きかける」身振りとして意識されていることを表します。この時、「自我が溶ける」とか「変容する」といった仕方では、「愛」は明らかに意識されていないでしょう。

 「手」というのは、まさしくそれを相手に「差し伸べる」という身振りで、きわめて正確に「愛」の形を現しているのです。このドラマを観ていると、渡辺ふみという脚本家は、科白に時々こうしたきわめてニュアンスを込めた言葉を入れますね。「愛」は「自我を損ねる(溶解する)」という形では顕現しない。むしろ「自我」をより高い次元に引き上げるというような含意があるでしょう。言い換えれば、「愛」という言葉には強い「倫理性」が付与されているということです。

 「エロース的情動」には、明らかにこのような「倫理性」は感じられません。ある意味、生き物一般に普遍的な態様としてあるものと理解したほうが早い。で、これまた誤解の無いよう注意しないといけないのですが、糸子は「エロース的情動」も含めて、生き物一般の普遍的な様態に関して、きわめて鋭敏な感覚を持っていただろうということなのです。
 彼女の際立ったヴァイタルな強さは、こうした生き物一般の様態に、あきれるほど「正直」であるところから来ているので、その本源もまた父善作の存在が大きかったのではないか?と勘繰りたくなるのですが、しかし、この「父性性」に関する事柄は、私のつもりではかなり重大かつ厄介なテーマなので(なぜ社会的には失敗者なのに、「父性性」を維持できたのか?)、改めて考えてみたいと思っています。

 ところでこうして、いろいろ考えてくると(ホンマに!?)、周防にあって勝になかったものが見えて来ますね。先に勝は「いつも、上機嫌で」、糸子の「内部」にみだりに侵入するようなことはしなかった。だから糸子の「自我」が損なわれるような事態は、少なくとも生前の勝との夫婦生活では起きなかったのですが、客観的に言って、この夫婦には「恋」=「エロース的情動」に当たるような関係性はなかっただろうということなのです。
 しかし、かと言って、それが冷え冷えとした乾いた夫婦であったか?と言われれば、もちろん誰もそうは思わない。「夫婦」というのは、「恋」とか「恋愛」という事況では語り切れない関係性なのです。それはまさしく「夫婦愛」という言い方で表されるもの、つまり「倫理性」抜きでは測れない要素があるのでしょう。
 糸子が勝に対して、あるいは「情動的継起」を発し得た機会が一回ありましたね。初めて夫婦で歌舞伎見物に行った時のことです。糸子はその時、勝の普段知らなかった「女あしらい」の鮮やかさに、「惚れ直した」という言い方をしていましたが、我々は片やで糸子の呑気さかげんに呆れる一方で、もし浮気問題が露見しなければ、彼らはけっこう好い夫婦関係を営んだであろう、自営業も順調に進行しただろうと想像してしまいます。


 しかしこれがもし、「エロース的情動」を経た夫婦であったなら、糸子は何が何でも愛人を探し出して、決着をつけたかもしれない、たとえそれが狂気に至る道であったとしても。コワ~!

― つづく ―





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Last updated  2012.01.19 11:27:14
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Re:なぜか「朝ドラ」が面白い! 24.  
プー さん
サリエリさん、こんばんは。
ドラマはいよいよ糸子の恋を描きつつあるようで、残念ながら平日は朝なかなか観られないため土曜日の一挙放送を待っているところです。家族を始めとする周囲の善意を受け入れるように勝と結婚し、三人の子を設けて未亡人に至る、という成り行きは、私にとっては何か物悲しいものでした。恋も知らず性を知り、出産するって……。
仕事、生き甲斐という面では脇目も振らず突っ走ってきた感がある糸子さん、これで何もなければ、偉大だけどよくわからないひとになっていたかもしれないので、少しホッとしているところもあります。
(2012.01.20 00:29:29)

コメントいただき、ありがとうございます  
プーさん様
私はこの渡辺あやという脚本家は、「恋」とか「不倫」について、それがたんに実話だったからというのではなく、むしろそこに積極的な意味を見出して引き受けたのかな、と疑っています。
 これって古今東西の文学芸術の永遠のテーマじゃないですか。マダム・ボヴァリーとか六条御息所とか、ね。 (2012.01.20 11:59:21)

Re:なぜか「朝ドラ」が面白い! 24.  
プー さん
サリエリさん、こんにちは。1週間分ようやく観ました。そして予告編も。
サリエリさんのおっしゃる通り、この恋のエピソードには脚本家にとってかなり大きな意味があるみたいですね。
来週分を観るのが少々怖くなってしまいました。 (2012.01.21 11:08:46)

お疲れ様でした!  
プーさん様
 ネタバレにならないよう、ちょっとずつ話を遅らせてしゃべっていますが、楽しみを減じることがないかと心配です?
 それにしても尾野真千子というヒロイン!周防に抱かれた時に瞳の色が栗色に変っていって、何という役者なのでしょう。見ようによっては、どんな露骨なシーンよりもエロティックですよ。これはスゴイ! (2012.01.21 12:06:57)

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