サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.01.22
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カテゴリ: カーネーション
 繰り返しますが、このドラマは「不倫」というテーマを、人間の心の奥に潜む「情動」の邪悪性という普遍的な問題を「明徴化」する材料として、あえて正面から取り上げようとしているのでしょう。それは何も「不倫」を推奨しているということじゃないですよ。何度も言いますが、現実社会では不倫も浮気も殺人もアカンのです。
 芸術というのはそれが「虚構」であることによって、A・カレーニナやラスコーリニコフと想像的に付き合うことが出来る。したがってその際、カーネーションは実話だったからという判断も、いったん棚上げにしたほうが良い。

 このことに関連して「不倫」にかんする、このところの書き込みの過熱ぶり。「実際にあったんだから、どうだ」とか「子どもに『不倫』は、どうも」とか、はなはだ下世話なレベルでの「熱い議論」が続いているのです。こういう関心の持ち方自体が、ドラマとか文学とか、要は「芸術」一般を享受する場合の「構えかた」に対して、基本的な誤りを犯しているような気がする(ベタな例をあげれば、「糸子が告白したんだから、私も勇気を出して妻子ある男性に告白しようと思います」なんてね。冗談としても、何というナイーブさ!あ~あ)。

 前にも触れましたが、「芸術」というのは本質的に「虚構」によって、享受する者に「夢」とか「真実」を明示して、心に「昇華作用」を与えるものなのです。
 それがたまたま実話に基づいているとか、リアリズム的に描いたドラマだから、話が不分明になっているのかもしれません。早い話、もし正真正銘の事実だけを、何一つ細工せずに並べていけば、それでそのまま「真実」を明示することが出来るのか?と言えば、決してそんなことはない。他人の一生をそのまま並べられても、それにお付き合いするなんて長すぎて誰も出来ないでしょう。
 結局、「事実」とか「実人生」とかいったものは、ナマのままでは、ただたんにグチャグチャした「混沌」に過ぎない。それに何らかの「明示性」を与えようとすれば、まさしくその瞬間に「事実と記憶の選択」が行われている。これはどれだけ「事実」に沿った「自伝」であっても、ドラマあるいはドキュメントであっても一緒で、「事実の選択と合理化」がなければ「明示性」は持ち得ないのです。

 話を芸術一般に広げれば、もっと分かりやすい。絵画に描かれてあるモノを「本物」と思う人は誰もいないわけで、それでなおかつ描かれている「虚構」が、観るものの心を動かすのは、人の「情動」が事実ではなく事実に基づいた「虚構」で動かされている、ということを示しています。

 芸術という「非現実」が、あたかも「実在」するかのような「明示性」を獲得するには、作り手側の真摯さとそれゆえの妥協を許さないスタッフ同士の「ぶつかり合い」が必用なのです。「ウェスト・サイド・ストーリー」の冒頭二十分に現れた映像を観てごらんなさい。
 ハリウッド一のリアリズムの巨匠R・ワイズと、求心的手法で知られたブロードウェイの鬼振付師J・ロビンスが、殴り合いのようにして作り上げたニューヨークでの野外バレエシーンは、それゆえジェット団のリーダーがバスケットボールをパスした瞬間に、現実から軽々とジャンプして、あたかも夢を見ているかのような、幻惑された「実在感」の世界に観る者を誘い込む。



― つづく ―





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Last updated  2012.01.22 10:12:14
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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