サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.02
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カテゴリ: カーネーション
「記憶」の彼方

 これは何も、新たな役者に魅力がない(三人とも、好く演じてますよ)ということではなく、我々はどうしても糸子の若かりし頃の記憶を重ねて、これを観てしまうからでしょう。昨日の新聞評の言葉を借りるなら、「ヒロインの芯の強さの、尋常でなさ」かげんがハンパじゃなくて、これはどないしたって今の三姉妹はかないっこない、というふうに観えてしまうからです(かわいそうですね)。

 さて、まあ現在進行中の話については、おいおいまたすることとして、ここ最近、このドラマが生み出している「時間」のようなものを考えています。
 前にこのドラマは、あたかもGoogle Earthの地球を見るような高々とした視座を背後に意識しつつ、大正昭和平成の世の岸和田にあった(であろう)オハラ洋装店の物語に、「たまたま」焦点化して観ているかのように描いてある、という話をしましたが、じつは同じような感覚が一望俯瞰的な眺望だけでなく、そこから滲んで来るような「時間」の経過と、「記憶」のなされかたについてもあるような気がする。
 Google Earth的な眺望は、その細部を一挙に開示しすべてを一瞬にして了解することは不可能で、その予感だけを背後に感じることが出来たように、この四ヵ月間の糸子の歴史を一挙にすべて思い起こす、ということは我々人間には出来ません(全部録画してあるから、大丈夫なんて言ってはいけません。「録画してある」ということと、「すべて一瞬に、くまなく思い起せる」というのは別次元の話です)。
 我々の記憶は、どのように「折りたたまれ、蓄積されて」過去の闇に消えていき、ある時ふいにまた「想起されてくる」のか?

 昨年の十月から柄にもなく「朝ドラ」を観だしたのですが、四ヵ月経ってみると、私自身が初めのころ観たはずのドラマの映像が、じつは「曖昧」になっている。ドラマの中に丁寧に描きこまれた時間の推移とは別に、我々自身が持っていたはずのエピソードの記憶もまた「時間が経過していく」わけです。
 時おり挿入されるかつての伏線を生かしたエピソード、「そういえば、糸子も同じちゃぶ台の横で、善作に怒られとった」とか「戦争中に、優子は高い色鉛筆をもらって、ご機嫌だった」とかね。これという確信がなくても、「確かにあった、そうだった」という仕方の「想起」というのは、何もこのドラマに限られたことではなくて、我々の日常生活で「あたりまえ」に繰り返されていることです。

 このドラマの不思議な「臨調感」は、この現実生活での「想起作用」と似た感覚を、観る側に与えることに(期せずしてか)成功しているところから来ているのかもしれません。早い話、善作や勝やハルの遺影は、いつもまったく一緒なのに、見るたびに表情が違って見える、というのは、現実生活においてもまさしく「しかり」の感覚でしょう。


 なぜこんなことを言うかというと(まったく!)、私も初めのころ十五分では「かったるい」とばかりに、土曜のBS九十分まとめ放映を観ていたのでした。ところが、前にも書きましたが、何しろ話のテンポが良すぎて、一挙に観ると頭がハチハチになる。筋さえ分かれば充分などというものじゃなくて、十五分単位でいったん頭を冷やさないと、何やら肝心なものを落としたんじゃないか?という一種焦燥感のようなものが、逆に立ち現れて来るのです。
 で、その焦燥感の根っこが、どうやら毎日十五分ずつの単位で「記憶を折りたたんでいく」という仕方でないと、どうも解消されないらしい、ということなのでした(考えてみれば、あたりまえの話です。もともとこれは、朝の「連ドラ」として構成されている)。早い話、先週の「家族会議」と「周防との別れ」のシーンが一つながりでは、誰しも場面の転換が腑に落ちないでしょう。ここはどうしても一日間を空けないと、観る側の気分はついていけないのです。

 このあたり、どうやら映画などを観る時とは、かなり異なった観かたを「連ドラ」というのは、本質的に持っているのかもしれない。

― つづく ―





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Last updated  2012.02.02 15:41:11
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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