サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.27
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カテゴリ: カーネーション
「普遍化」と、「平準化」


 さて繰り返しになりますが、ではなぜ、ここで主役交代なのか?
 それはたぶん、尾野さんが造形した糸子像を、より高い位置に「普遍化」するためでしょう。もし尾野さんが最後まで演じてしまったら、このドラマは彼女の「不磨の十八番」に収まってしまう。夏木マリさんが晩年の糸子を引き受けることによって、尾野さんの創り上げた「小原糸子」という虚構の人物が、オノマチ糸子から離れて、真の意味で「一人歩きを始める」かどうか試される、ということになるわけです。

 「普遍化」するとは、例えば「糸子のような人」と云えば、「一言では云い尽くせないけれども、確かにこの世にいる(らしい)、ある典型的な人格像」を、誰もが「一挙に頭に描ける」ような人物造形を目指す、ということなのでしょう。
 一言で「カリスマ!」だの「女傑!」だのと概括化し、極度に「平準化」した形容をしてしまっては、生身の人間や事物がもともと放っていた「肌触り」は、大半がその手元からこぼれ落ちてしまう。ところが、それを「虚構」であるドラマとか文学というフィルターを通して「普遍化」すると、一言では云い表せなかったはずのリアルな人物像や事物の姿を、なぜか私たちはたちまち、ありありと頭に描けてしまうのです。

 今どき何でもかんでも、ワン・フレーズで二十秒以内に「概括」し、極度に「平板化」した断定を行うのが、グローバリズムの世の中で「是」とされるような風潮ですが、それがいかに「乱暴な思考態度」、あるいは「知的劣化」を招いているか、とくと考えたほうが好い。
 簡単には「決めつけ」をようしない、あるいは何でも「平準化」してしまおうとする思考態度に、「ためらい」を持つという構えは、たぶん「他者(異物)と付き合う」第一歩だと思いますよ。

 で、これも前に言いましたが、それは実在した「小篠綾子」さんから、虚構の「小原糸子」が独立して歩き出す、ということも同時に意味するのです。私たちは実在の人物のプライヴァシーに深く入って行くのには、普通感覚なら何やら「ためらい」を感じ、それが例え「自叙伝」という形で開示されていたとしても、個人の特殊的な事例に深入りし過ぎることには、ある種の「不毛な感じ」を抱かざるを得ません。
 なぜなら、ある現実に遭遇した特定個人の事況を、他人が「何もかも共有し、共感する」ことは、論理的に絶対「不可能」だからです。実在する(した)個人の事況というのは、厳密にこの世に一回的な出来事であって、同時に「私」もまたそれとは別個の「一回的な存在」として、この世に在るわけで、私たちは暗に「これらに私は本質的なところで、影響されることはない(共有出来ない。要は、まったくの他人事だ)」という信憑を抱いているから、深入りしようとする自分の情動を、「あさましい、大人気ない」と感じるのでしょう(そうでない人も、多いのかもしれませんが)。


 という意味で、「普遍」というのは、誰にも出入り自由で、外にいつでも「開かれている」のです。ただしそれを享受するには、享受する側に「我が身を、いったんカッコに入れる」という、ちょっとした心のジャンプが必要なのでしょう。

― つづく ―


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Last updated  2012.02.27 10:36:04
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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