サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2018.08.31
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カテゴリ: クラシック
秩序、破裂

 で、そうしたズレというのは、きっと青山議員をずうっとネグレクトする感覚と共通する姿勢なのだろう、というような話をしようと思っていたのですが、不愉快な話ではあるし、現時点では理屈的にかなり飛躍がある(引っ込めるわけじゃないですよ)ので、いったん楽しい音楽の話題に戻りたいと思います。

 先ほどのマーラー「交響曲第2番ハ短調」は、彼34歳のときの作品で、後半には別働隊の金管楽器群や声楽、さらにはパイプオルガンも登場し、きわめてスペキュタクラーな音楽となっています。19世紀末から20世紀初頭に活躍した人で、クラシックの作曲家としては驚くほどブラスや打楽器のサウンドを多用した作曲家でした。
 交響楽というのは、そもそも弦楽が主体となって発展してきたので、ベートーヴェンやモーツアルトをはじめとして、その響きの中心は弦楽が受け持ち、管楽器群はそれの補完にまわることが多い。それは後期ロマン派や国民学派の場合も基本的に同じで、オーケストラの規模はハイドンの時代に比べれば、4倍か5倍くらい大きくなっているのにもかかわらず、弦楽器主導の音作りには変わりがなかったのです。それかあらぬか、今でもオーケストラのコンサートマスターは、第一ヴァイオリンの奏者が務めるでしょう。
 その理由については、弦楽器がサスティナブルな音型も、律動的な音型も両方柔軟に繰り出せるので、それがシンフォニーのあり方にマッチしたのかな?などと、いろいろ考えてしまいますが、ここでは深入りしません。確かなことはマーラーが、弦楽器主体のオーケストレーションではなく、管楽器はもちろんシロフォンやトライアングル、ハンマーにいたるまで、すべての楽器の音を「等価の響き」として扱ったということです。

 私が第二番のLPを思い切って買ったのは高校2年のとき、バーンスタイン・ニューヨークフィルの二枚組だったのですが、映画音楽のように臆面なく前に押し出してくる、金管楽器の響きに仰天したものでした。同じ百人以上の大編成オーケストラであるにもかかわらず、その響きはウィーンやベルリンとはまったく違う。きらきらと金属的な乾いた音色は、きっとバーンスタイン・ニューヨークフィルだけが出し得るアメリカのサウンドだろうと、かってに考えていましたが、今では「そうでもなかろう。それもあるかもしれないけれど、元をただせば結局それは、マーラーが意図した書法そのものじゃないか、バーンスタインはその一面を、分かりやすく前景化してみせただけじゃないの」という気がしています。
 先ほどの動画、演奏しているのはオランダのロイヤル・コンツェルトへボウ管弦楽団。かつてはアムステルダム・コンツェルトへボウ管弦楽団として知られた名門オーケストラですね。メンゲルベルクやヨッフムといったドイツ系の指揮者が育てたせいか、きわめて重厚なサウンドを響かせるオーケストラとして有名です。
 それかあらぬか、ここのブラスサウンド、最弱音のコラールから最強音の咆哮に到るまで、金管楽器群のバランスが驚くほど滑らかで、音が濁ることがない。さらには金管楽器群全体の繰り出す響きが、決して他の楽器群の音を邪魔するところがなく、きわめて「高い秩序」を維持しているように聴こえる。このあたり、いかにもヨーロッパのオーケストラだなあという感じがします。その根本的なところでの「秩序性」が、ということです。

 バーンスタインの指揮は、決してそうじゃなかった。彼はきれいに整った「秩序」よりは、汚くなっても「破裂」を望んだのではないか?で、その「破裂」はマーラーが世紀末のウィーンで、確かに見たであろう悪夢の一面を、きわめて明晰に「言い当てていた」のです。あるいはその「破裂」の先に見える風景を見たくて、そうせざるを得なかったのかもしれません。

 「 マーラー交響曲第6番 」なのですが、まるで自分の臓腑を引きちぎって並べて見せたような音楽で、終始聴く者を威嚇する。ここではきれいな音楽を聴かせよう、などという意図は皆無で、神経的なきしみ音だけが全体を覆っているのですが、であるにもかかわらず、最後まで聴いた人は、言葉では説明出来ないけれど、明晰なメッセージをそこから受け取るでしょう。表現というのは、どこまでも残酷なほど「自由」なのです。

 正直申し上げますが、私は高校のときからマーラーのファンですが、大好きな「大地の歌」も交響曲第9番もそしてこの第6番も、通しで聴いたことは一回もありません。それでも間歇的に、かのサウンドを無性に聴きたくなるときがある。あの金属片の散らばったような金管とトライアングルの響きが。
 それがなぜなのか、今だに分かりません。





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Last updated  2018.08.31 17:30:50
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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