サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2018.09.12
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テーマ: テニス(3535)
カテゴリ: スポーツ
大坂なおみ選手のこと


 彼女が日本人のお母さんとハイチ人のお父さんのお子さんで、しかも三歳のときからアメリカ在住であることを考えれば、本人がアメリカ籍であってもハイチ籍であっても、じつはちっともおかしくないはずですが、これを指摘する人が案外少ない。何だか純正の日本製で、彼女のすべてが日本で作られたかのような扱いです。肝心なことは、彼女にとって「日本」というのは選択されたものであって、生まれたときから「逃れがたく」その血、その言語、その振る舞いの中で育ったわけではない、ということでしょう。
 逆に言えば、であるにもかかわらず、日本と子供のときから行き来し(母方のお祖父さんが、根室にいらっしゃるそうですね)、日本語がほぼしゃべれないにもかかわらず、日本籍で国際大会に出場しているというところなのです(国籍は今のところ日米の二重だそうですね)。これは例えば、日本生まれだけど出場機会のチャンスが見込める外国籍で、国際大会に臨むアスリートたちとは、ずいぶん立ち位置が違うような印象がする。お母さんの影響が大きいのだろう、と言ってしまえばそれまでですが、そんなことないだろう(だいいち、お父さんに失礼じゃないですか)、15歳~20歳ぐらいの人たちというのは、個人差はあるだろうけれど、試行錯誤を繰り返しながらも、ビックリするほど自身の判断で行動し出すものです。

 で、そのうえで、彼女が「自分はシャイで、人見知りする日本人だ」と、ハッキリ言明しているところが面白い。同じような話で、先日の優勝インタビューでは「勝ってしまって、ゴメンナサイ」と言ってしまうところも、これまた吹き出してしまう。本当にシャイで人見知りする性格の人たちは(というか、要は「日本人」は)、こういうとき大抵黙ってしまうか、せいぜい微笑んでたたずんでいるのではないかしらん。
 であるにもかかわらず、私たちは彼女に「真性の日本人」というか、「大和魂」を見出してしまう。それは今回のUSオープンで、いよいよはっきりと分かってきたことでした。決勝戦の前に「セリーナ・ウィリアムズ選手と対戦できるのがうれしいし、とっても名誉なことだと思う。だって、相手は世界のセリーナよ!」とあっけらかんと言って、インタビュアーを絶句させてしまうところ。これ茶化しているのでもなんでもなくて、素直に本心を言っているのです。
 「勝てる、勝てない」といったこと以前に、世界最高の舞台で世界最強の選手と「戦える」ということが、うれしくてうれしくてしかたがない。で、その「喜び」をどう本番で表現するか、その答えは本戦で鮮やかに示されていましたね。要は「今現在の自分のパフォーマンスを、最高レベルでどうやって出し切るか」ということです。その際会場が完全なアウェーで、異様な雰囲気であったとしても、「だから自分は力を出せなかった、集中出来なかった」とは言わない。なぜなら、そんなことで仮に自身のパフォーマンスが100パーセント出せなかったら、「相手に失礼じゃないか」ということなのです。

 この場合の「相手」とは、もちろん第一義的にはセリーナ選手ですが、たぶんそれだけじゃないだろう。USオープンという栄えある会場に対しても、そこに参集しているテニスファンに対しても、ということです。こういう捉え方というのは、ごく日本的というか「大和魂」そのものだと私は思う。大坂さんがそれをどれくらい意識しているか、私には分からないけれども、エートスとしてそれをすごく感じてしまう。
 昔、澤さんが「なでしこジャパン」を率いていた時代に、反日一色の中国武漢での試合のあと、ブーイングが巻き起こる会場で何が起こったか。彼女たちがしたのは「試合を見てくれて、皆さんありがとう!」という横断幕を掲げたことでした。その間もものすごいブーイングが続いたのですが、後の現地ネット等の書き込みや新聞では、「彼女たちは偉い、中国人であることが恥ずかしい」といった文面が見られました。さすが儒教発祥の国、「礼儀・礼節」については多少でも、本家意識のある国だなと思ったものです。

 さて、そうこう大坂さんが「言葉少な」に、相手に対して最高の敬意を払っている間、得体の知れない「怒り」の持って行き場に困ってしまったのは、当のセリーナ選手と会場のファンでした。「自己主張と勝利」だけが正義とされるアメリカ式エートスに従えば、彼女はそうせざるを得ない。彼女はまさしくアメリカという世界標準の文化を、背中いっぱいに背負って試合に臨んでいたのです。


 大坂さんは頭が好いというか、たぶん天性のものなんでしょうが、そういう「ややこしいこと」には関心がない。それより早く試合がしたかったのではないか、それも決勝戦にふさわしい立派な内容の試合を(これも「なでしこ」の振る舞いかたとよく似ている。外国で妙な判定があっても、彼女たちはどこ吹く風で、さっさと次のプレーに入るので、猛抗議が来るはずと待ち構えている審判が、かえってあっけに取られるという場面が、かつていくつもありました)。最後は何だか、はなはだ困ったチャンの母さんに対して、子供がおずおず「止めときいな」と合図しているみたいな図柄で、思わず笑ってしまいました。
 表彰式のセレモニーでも、彼女の態度は一貫していましたね。本人は一切関わっていないにもかかわらず、お世辞にも「栄光ある試合内容」とはならなかった、どころかUSオープン史上あるいは最大の汚点を残しかねない中味で、彼女はたった一人で「大会の品位」を保とうとしたのです。「ゴメンナサイ」という言葉はそういう文化から出て来た。なぜならそれこそが、結局彼女自身の品格を守ることにつながるから。このあたり、まぎれもなく「大和魂」というか、サムライの精神じゃないですか。私はそういう彼女のエートスというのが、どのようにして育まれて来たのか、尽きせぬ興味が沸いて来ます。やっぱりお母さんかなあ。





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Last updated  2018.09.12 12:05:12
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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