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2006年07月02日
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 哲学の道は哲学者、西田幾多郎の散歩道だ。道沿いに小さな川が流れていて、周りには京都らしいこじんまりとした家がぎゅうぎゅう詰めで建ち並んでいる。少し高台にあるので京都の町を見下ろすこともできる。だがあまり美しいとは言えない。桜の季節には並木道で桜が咲くが、感動するほどではない。
 しかし、西田の哲学を知るものにとって、哲学の道はドラマチックだ。うぁお。この道で起こる何気ない日常の風景が、哲学論に変わりうる。木々から葉がヒラヒラと舞い落ちた時、枝が風に揺られる時、川の水が音をたてて流れる時、葉の上の雨粒が陽の光をキラリと反射する時、それに反応する自分を見た時、それらの現象は哲学の言葉で語られる。
 西田は日本哲学、京都学派の祖だ。その思想は西洋的な哲学とは一線を画している。彼は日本人として日本人なりに近代哲学をした最初の人である。哲学を学ぶ時、西洋人と日本人との文化的脈絡の違いを誰もが痛感する。キリスト教思想を今も土台としている西洋哲学は、日本人には完全に理解できるものではない。どんなに学ぼうとも西洋人そのものにはなれないからだ。一方、日本人が日本の文化を土台に哲学を進める時、西洋人では思いもよらない思想が誕生する。西田は日本文化を認め、土台として哲学を進めた。著作は「善の研究」に始まり、その精華が晩年の「場所的論理と宗教的世界観」だ。
 西田自身は自分の思想を東洋と西洋の両方を取り入れたものだという。だが、かなり東洋的なものの見方をしていると僕は思う。なぜなら、彼の思想の土台は、禅思想や華厳思想などの大乗仏教とほとんど矛盾しないからだ。むしろその世界観は、仏教哲学そのものであり、その世界の中にキリスト教思想をスッポリを多い包んだかのようだ。
 禅と華厳の世界観は、「一即多、多即一」(いちそくた、たそくいち)などと言われるのだが、これは平たく言えば、個別的なものは世界全体と同じ、世界全体は個別的なものと同じということだ。単なる世界の一点と思われる小さな事物に世界のすべてが現れているということだ。道を歩く一人の人間もまた、全世界である。この分たれず、全てが一体となっている世界に対し、我々は主体、客体、私、他人、物、人、などの区別をもうけ、結果的に人間の世界観ができあがる。世界とは、一体でありかつ個別的である。これを仏教では真如とか、梵我一如とかいうのだが、西田の言葉で言うと「絶対矛盾的自己同一」となる。違いに関する細かいことを抜きにすれば、「場の論理」とも言える。
 華厳宗の明恵証人は、花だか葉だがの朝露に反射する陽の光を見て、そこに全世界を見た。彼の体験は、おそらく哲学的と言うよりも宗教的で、つまり哲学的な思索を伴うものではないようだが、我々は哲学的な思索を加えることができる。葉がヒラヒラと落ちる時、風に揺られる時、個別的なものが、外界からの力を受け、外界と不可分の関係にあることを知る。葉や枝を揺らす風は、地球の営みと密接である。地球の営みは宇宙の営みと密接である。このように視点を広げていけば、やがて葉が、枝が、宇宙の全現象を具現化していることが分かる。こういった世界のからくりを体得するのは仏教の悟りでもあり、哲学的に説明したのが西田哲学である。
 かくして、哲学の道はドラマチックとなる。何の変哲もない道で世界の有様すべてをこの道で見ることができる。勿論、どこにいてもそれはできるのだが。
 西田を語ろうとすると話題はつきない。詳述すればきりがない。だが、読む方も疲れるだろうから、この辺りで終わり。

 追記


リンク
『善の研究』の全文を読むことができます。疲れると思います。
http://www.kyotokanko.com/text/zennokenkyu.html

西田幾多郎記念哲学館のWebsite.
http://www.city.kahoku.ishikawa.jp/nishida-museum/





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最終更新日  2006年07月02日 17時14分36秒
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