Nobody Knows?

Nobody Knows?

ストーカー


再現ドラマをやっていた。

世の中、ホントに色んな人がいるもんだ。自分が好きなら、相手も
自分を好きと信じて疑わない。怖いくらいのポジティブシンキング。


前向きなのは良いことだけど、それが相手を困らせていることに
気付かないデリカシーのなさが問題なんだよな。

ただ、ストーカーされた側にも付け込まれるすきがあるんだ、と
コメンテーターさんはおっしゃる。
「世の中には毅然と断れない人がいるんですよね」と。


それはそうなんです、おっしゃる通り。ワタシもそのタイプだから。



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20代半ば、仕事が猛烈に忙しくなり、深夜まで残業の毎日で
疲れ果てていた頃のこと。

出張で数日ぶりに自宅へ戻ると、自室にシクラメンの鉢植えが
置いてあった。母親曰く、「高校の同級生っていう子が訪ねて
来たわよ。可愛い男の子だったわ、確か○○って名前の…」。

全く憶えが無い名前だったので、卒業アルバムで探してみた。

まず自分のクラスメイトを探してみるが、該当者はいない。
で、1人ずつ追って行くと、ようやく該当する名前の男の子が
いた。でも全く見覚えがない。


その後、お礼の電話を入れてしまったのが、全ての始まりだった。


最初は先入観がなかったため、気軽に卒業後の数年間を話し
合っていた(あとでこのことを後悔するのだけど)。

その後、打ち解けたと思ったのか、彼の口がなめらかになり、
とうとう「自分は高校時代からずっと気になっていた」と告白。
それだけならば、ワタシの方も「あら、有難う!」で済んだのだけど。


その後のひと言が…。「ホラ、水のみ場で目が合ったじゃない、
憶えてるよね」一気に寒気がした。全く記憶にございません。


これはヤバイ、とそそくさに電話を切ろうとしたが、時すでに遅。
彼のテンションは留まることなく、話はいつしか彼の身の上話を
聞くことに…。

ようやく電話が切れたのは、すでに深夜。手はしびれ、耳は真っ赤
になっていた。


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その後はタガが外れたのように、彼のアプローチ(というのか?)
作戦が始まる。まず大量の本が玄関先に置いてあった。そう、
彼は決まって我が家の玄関先にプレゼントを置いて行くのである。


その本は全て、ワタシとの電話で話題にのぼった本だった。
すごく有り難かったけど、だんだん怖くなってきた。


その後、また電話がかかって来た。今度は別居しているワタシの
父の居場所を追跡しているのだという。

「そんなの頼んでないし」と思いつつ、キツく反論するのは
怖かったので、「それはあまり嬉しくないから…」というと、
どうにか聞き入れてくれた。


その後も電話は続いたが、出れば話さないといけない(そう、
はっきり「迷惑です」と言えなかった)ので、電話に出ない
ようにしていた。母が取っても居留守をするようにした。


それでワタシの気持ちが分かってくれると思っていたが、全く
甘かった。


電話に出ないことが分かると、今度は手紙を送り付けてきた。
内容はワタシのためなら命も捨てる、(意味よく分からないが)
とか何とか…。はっきり言ってそれで「まぁロマンチック!」と
思う人っているのか?だって付き合ってませんから。


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その後も自宅前にコートとスーツのセットが置かれていたり
するのだけど、当然怖すぎで着れないし、捨てることもでき
ない。
(プレゼント一式送り返せばいい、とおっしゃる人もいると
思うのだけど、当時のワタシは逆なでするように思えたのです)


さらに彼の行動はエスカレートする。電話も手紙も反応無しと
分かると、最後の手段、ストーカー行為へと打って出るのである。


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まずはワタシが勤める会社へ訪ねてきた。当時カウンター
業務をしていたワタシが先輩と閉店準備をしようとしていると、
店舗入り口に彼が立っていたのである。一瞬で凍りつくワタシ。

そんな事情をつゆとも知らない先輩が彼に話しかけてしまう。
で、「宜しければ店内へどうぞ」と声かけられ、彼はまんまと
店内へ。ワタシは慌てて別フロアへ。


ほとぼりが冷めた(と思った頃)に店内へ戻ると、さすがに
彼も帰ったようだった。一安心し、遅れを取り戻すべく、
大量の残務処理をして、ふと気が付くと終電の時間。


「怖かったなぁ」と思いながら乗り場に着くと、そこに彼が
待っていたのである。しかも一緒に乗り込んできた。これには
もう頭が真っ白。

車内では下車場所までひたすら狸寝入りをした。目を開けた
途端、彼が目の前に立っていたら怖いから。


結局、彼はワタシと一緒に下車する。真っ暗な夜道を彼が
我が家へ向かって行く。途中ルートを変えてみるものの、
最後には我が家の前で鉢合わせとなるのであった。


しばし流れる沈黙。しかし目を合わせたら最後「刺されるかも」
と思ったワタシは一目散に我が家へと逃げ込んだ。彼はただ
ボーっとして立ち尽くしていた。その後の彼の行動は知らない。
確認するのも怖かったから。


それにしても、彼とワタシは正反対の方角に住んでいたのに
(しかも車で2時間近くかかる)、あの後どうやって家に帰った
のだろう。


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その後、手紙が届く。

「あの日のために、オーダーメイドでスーツとコートを作った
んです」と綴られていた。残念ながら彼の思いを知れば知るほど、
気持ちはどんどん引いてしまう。


ストーカー行為はその後もあった。さすがに終電で鉢合わせ
することはなくなった(やはり彼も帰宅するのが大変だったろう)。
しかし、我が家の前でひたすら待ち伏せしていたのである。


土砂降りの雨の夜。いつものごとく残業で終電になりトボトボと
歩いていると、玄関先にぼや~っと人影が見える。

「眼精疲労で幻覚が?」

と思ったが、良く見ればいつもの彼がびしょ濡れで立っていた。
ワタシがピンポンダッシュのごとく、我が家へ逃げ込んだのは
言うまでもない。幽霊かと思いました。何もびしょ濡れのまま、
立たなくても…。傘さしてていいのに。つうか、雨の中待つこと
ないですから。


あまりの恐怖体験にしばらく放心状態だったが、しばらくして
我に帰り、着替えなどをしていると、突然母が部屋へ入って来て
「ちょっと、例の子が外で立ってるよ」という。


ウソでしょ、もう1時間は経ってるよ。もちろん怖くて確認する
こともできなかったけど。


そしてストーカー行為はその日を境にピタっと止まった。 

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だが…。今度は無言電話に切り替わるのであった。それも早朝
3~4時と決まっている。

その頃のワタシは前述にもあるように、毎日の残業と仕事の
ストレス、加えてプライベートでは会社の男性の先輩とも
ちょっとトラブルを抱え(こうして書くと私はトラブルメーカー
のようですが…。ホント人生でこんなトラブルまみれだったのは
この時期だけですから)、ただでさえ疲れ果てている時に毎朝の
無言電話はキツかった。


電話の場合、家族にも迷惑をかけてしまうので、精神的にかなり
キた。またご丁寧に1時間近くはひたすら鳴り続けるのであった。

仕方なくベルが鳴ると受話器をあげて、また眠る…そんな生活が
1ヶ月は続いたと思う。最後には受話器をあげたまま、眠りにつく
ようになっていた。


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ちょうど季節は梅雨の終わり頃。どんよりとした空模様とまさに
心がシンクロしていて、気が滅入って仕方がなかった。

そんなある日突然「髪を切ろう」と思い立ち、髪をベリーショート
にした。中学校以来のベリーショート。


すると、不思議なことに全てのことがフェードアウトしていった
のである。ホントに不思議。仕事のトラブルも先輩とのいざこざも、
そして例の無言電話も全てがいつの間にかおさまっていた。

まるでばっさり切った髪の毛とともに、嫌な出来事もすっかり
体から離れていったのだ。


でも、ストーカー君だけはすっかり忘れた頃、再びワタシの前に
姿を現すのであった…。敵も相当根性入ってますわ。


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それはいつだったろうか。もう年単位で時が経過していたと
思う。平日の昼間、自宅の玄関に入ろうとすると、ドア越し
(注:我が家の玄関はガラス)に人の影が見えた。

「銀行さんでも来てるのかな?」と思い、躊躇せずにドアを
開けると、家の中にいたのは何と彼だった!

まず理解不能に陥った。「ナゼワガヤニ、カレガイルノダロウ」
そう、何故ここに、彼が!?

ただ、反射的にドアをピシャッと閉めることは忘れていなかった。
もうひたすら動物的勘で。

結局、ワタシがもう一度勇気を持ってドアを開けると、彼は
さっと入れ替わるように出て行った。中には母が立っていて、
何故家に彼がいたのか聞いてみると、「あの子、新しい仕事に
就いて頑張ってるみたいよ。それで近くを通ったから、ちょっと
寄ってみたんだって」と言う。

はぁ~そうですか…。ちょっと意味分かりませんけど…。

母に再度家の中に入れたのかを問いただすと、「だって、
以前あんなことがあったじゃない。だから下手に叱ったり
すれば、家に火でも付けられないかと思って、あの子の話を
聞いてあげてたのよ」と言われた。

母もいろいろ考えてくれての行動だったのだ。すみません、
心配かけて…。


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その数年後、また彼から自宅へ電話がかかってきたそうだ。

母が「もうあの子はここにはいません」と言うと「結婚した
んですか」と聞かれたそうだ。そこで「そうです」と言えば
いいものを、正直者の母は「いいえ、まだです」と答えた
らしい。


親子揃って正直者、肝心なところで嘘が付けないので
ありました。それ以来、今の所は何も連絡は入っていない
そうです。





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