専業トレーダー DaTsU

ポジショントーク


場が高いと思っているのですが買い持ち玉(既に持っている株)がないので安
いところが買いたくて「相場は弱いだろう」とコメントしたりするのです。逆
に引かれ玉(既に買って持っていて評価損となっているもの)があって、早く
戻らないかと待っているときに軟調な相場の中で本当はもう少し下がるだろう
と思っているときでも「もうすぐ上昇に転じるだろう」とか言うことがあるの
です。これをポジショントークと言いますが、ただ、言っているだけならいい
のですが、自分で言っていることがポジショントークなのにその通りになった
からと言って「もう少し下がるから、下がったら買おう」と言っていたのに逆
に相場が「思った通りに下がって来た」と売りに回ってしまい売ったところが
底値だったと言うこともあります。ポジションが相場を作るのではなく相場の
動きでポジションを作らなければいけないのです。本間宗久もそのことについ
て述べているので今回はそのところを見てみましょう。


 買い米これあり強気の処、相場引き上がる時は、上げ留まりの考もなく、な
おなお買い募り、至りて高値の処重ね、不利運になることあり、慎むべきなり。
これを取り留まるに千両の買いをまず五百両分売り返し、米の強弱を見るべし。
天上行きつき知れざる故、残らず売り返すも宜しからず。売り付けにて利分取
り留まるも、同じ心持ちなり。引き下がる時は何程下がるも知れぬ様になるも
のなり。上げの時に同じ、能く能く考うべし。

 買い持ちをしていて強気の時に相場が上がってくると天井をつけると言う考
えもなくなり、まだまだ買い続け最後の最後まで買ったところで天井となり、
損をしてしまうこともあります。こういうように調子に乗るのは慎むべきです。
こういう相場で損をしないようにするには1,000両買っていたものをまず500両
だけ利食って、相場がまだ上昇するのかどうかそこで、相場の強弱を冷静に測
るべきです。天井をつけたとわからないので残らず売り切ってしまうのも良く
ないのです。売りの場合も同様にどこまでも下がるような気がしてしまうもの
なのですが上げ相場の時と同じで半分だけ買戻してよく考えて見るのがいいの
ではないでしょうか。

 相場が上昇しているとどこまでも上昇するような気になり、逆に下落してい
るときはどこまでも下がってしまうのではないかと思うことが良くあります。
そこで調子に乗って最後の最後まで自分だけ買い続けてしまったり、どこまで
も下がるのではないかと思って一番の安値で売ってしまうこともあります。ま
た、買い持ちがなくてもどこまでも上がるのではないかとあせり、高値で買い
ついてしまったりすることもありがちなことです。冷静に外部環境や材料、ま
た、テクニカル分析、あるいは業績面からの割安、割高も勘案して買いに出る
べきか、まだ買えるか、もう買えないか売るべきか、考えなければなりません。
もし迷うなことがあれば上の文章に書かれているように半分だけ、利益を確定
してしまうと言う手もあり、だと思います。また、逆に今が高値だから、今の
値段から○○円下がったら売り、というような手法も使えるのではないかと思
います。いずれにしても自分の思惑が当たっているからといい気にならないで、
あるいはあせらないで、冷静に相場を見る目が必要ということなのでしょう。


 前年売り方にて利運得たる人はとかく売り気離れ難く、売り方に向くものな
り、以ってのほか、宜しからず。新米出初め候ては、前年の心さっぱりと離れ、
その年の作の様子、物の多少、人気の次第を考うること第一なり。まず、秋米
は買い方を第一にすべし。それとも算用にも釣り合いにも合わざる値段なると
きは、それより了見を致すべきことなり。前年、買い方にて利運致す人も右同
断なり。

 前の年に売りで利益を出した人はとにかく売りからの考えから離れられず、
売り場ばかりを探すような感じになってきますが良くないことです。新米が出
始めることにはすっきりと前の年のことは忘れ、その年の作柄や需給関係、人
気などを考えることが一番です。まず、秋口は買い場探しを考えてみることで
す。それでも買い場とならずうまく行かないときはそれから、見通しを立て直
せばいいのでしょう。前の年に買いで儲けた人も同じことです。

 以前儲けた記憶が強く、その手法ばかりに固執してしまうことがあります。
その手法が恒久的に使えるものであれば何等問題はないのですが、その手法が
「特別な」時に通用しただけで、ある一定の条件が必要であることを忘れ、何
にでも通用すると思い込んでしまうととても痛い目にあってしまうのです。
「いつも○○すれば儲かった」というのも過去のことで、これからどうなるか
はまた、わからないことなのです。2000年の4月に日経平均は高値をつけまし
たがそこまで、1998年10月からはIT関連銘柄を買ってさえいれば儲かったの
ですが、それが2000年に入ってからは買ってさえいれば、ということが通用し
なくなり、その後2000年4月の天井を付けることになりました。逆にその後は
ハイテク銘柄を中心に売ってさえいればよかったときもありました。それが20
03年になってからは売ってさえいれば・・・、という雰囲気に変化が見られ、
2003年4月に日経平均は底打ちとなって、銀行株を中心に暴騰となったのです。
このように相場は常に変化し続けているわけで、その時その時の「相場に合わ
せた」取引手法が必要ということではないかと思います。


 買い米ある時は、終始強気張るものなり。この時必至必至と上がる時は、全
体強き故、何ほど上がるも知らずと思い、この間買い遅れの心にて自分を待ち
かね、買い気進み立つ時、わが存念を潰し、この書を守り申すべきこと。

 買い持ちがあるときはいつも強気となってしまうものです。こういった強気
の時に(相場感で強気ということではなく、単に買い持ちだから強気というこ
とに過ぎないのに)どんどん上がるような相場になると、自分の強気がさもあ
たったかのように錯覚して、全般に強気になるものだからどこまでも上がるよ
うな気になってしまい、買い遅れたような気になって買い乗せしなければなら
ないとあせってしまうものです。こういった時には自分のそういったあせる気
持ちやまだ上がるだろうという気持ちを押し殺し、この書に書かれていたよう
に「三位の伝」を守らなければいけないのです。

 こういったことは良くあることで、自分が買いポジションを持っているもの
だから、常に相場に対して強気となっているだけなのに、つまり、何の相場に
対する考えもないのに、相場が上がって来ると、さも自分の思惑通り相場が上
がってきたように錯覚し、「自分がまだ、強気だから、相場も上がるだろう」
と大きな勘違いをしてしまうのです。そう言ったときこそ冷静に、相場環境や
需給動向、節目となる水準をよく照らし合わせて相場の先行きを分析しながら
判断をしなければいけないのですが、どうしても「ポジショントーク」になっ
てしまうのです。

 もう一度、自分が相場の先行きなどを見るときに、ポジショントークになっ
ていないかどうかよく考えて、ポジションはないものと思って(これが一番難
しいのですが)冷静に分析してみることが大切なのです。


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