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武士の一分



今回の3部作の最後に、満を持してのキムタク登場!

ストーリーは、いつも単純だが、そこを120分間ずばっと見せる
演出がまた素晴しい。具体的には、蛍のシーンや、蚊のシーン、
雨や台風など環境の変化の描写も秀逸だ。


盲目になった下級武士が、妻に対する復讐のため命をかけて闘う。

そこに深い葛藤や妻との愛情の全てを壮絶に描いてくれた。

妻役の壇れい、使用人の笹野氏、そして敵役の坂東氏など、厳選にキャストを
重ねて選んだ布陣であると思う。

真剣勝負はいつも一瞬。

ラストを時代劇らしからぬきれいなハッピーエンドでまとめていることも
良かった。



「武士の一分」とは、侍が命をかけて守らねばならない名誉や面目をいう。映画は愛妻物語で復讐(ふくしゅう)劇でもある。江戸時代に地方の藩で静かに生きてきた人々を描く。



三村新之丞(しんのじょう)は、最愛の妻・加世とつましく暮らす海坂(うなさか)藩の下級武士。「早めに隠居して、子供がたに剣を教えたい」と夢を語る、笑いの絶えない平和な日々は、藩主の毒見役をつとめて失明した日から暗転する。昨日まで気が進まないとこぼしていた役目も果たすことがかなわない。絶望し、自害しようとする新之丞を加世は必死に思い留まらせるが……。


木村拓哉が“目力”を封印
暗闇のなかで見つけた希望とは?

父娘の絆を描き、日本アカデミー賞15部門を総なめにした『たそがれ清兵衛』。身分違いの若い男女の純愛をテーマに据えた『隠し剣 鬼の爪』。“藤沢周平原作×山田洋次監督”という強力タッグが生み出した、この2本の傑作は、現代を生きる日本人が忘れかけた美意識を呼び覚まし、その後、新たな“時代劇ブーム”を巻き起こした。また、海外で高い関心と評価を集めたことも、記憶に新しいところだ。
今作は、山田洋次監督が手がける時代劇三部作の最後を飾る作品で、主演には『2046』で海外進出を果たした木村拓哉が起用されている。山田監督をして「ストイックなまでに自身を見つめる目には、思わず引きずり込まれる魅力がある。高倉健さんに初めて会ったときのことを思い出した」と言わしめた、木村は、出番の無い日も撮影所に通い続けて、現場の空気を吸い込みながら、新之丞になりきったという。幼少から培った剣道の腕を余すところなく披露している点も、ファンには新鮮な驚きといえそうだ。盲目の剣士ゆえ、いつもの“目力”も封印している。

すべてを失った夫のため、口添えを得ようとするも罠にはまり、番頭(ばんがしら)に身を捧げてしまう妻・加世。その行為を、裏切りと感じた新之丞は、妻に離縁を言い渡し、復讐を誓う。しかし仇敵・島田は藩内きっての剣士。盲目の新之丞に勝機はあるのか。そして、失われた夫婦の絆と愛は再び取り戻せるのだろうか。
文字通り、暗闇の中で、もがき苦しみ、葛藤を続ける新之丞。その姿からは、日々の暮らしに根ざした素朴な幸福が、いかに尊いものであるかが静かに、そして、強烈に印象づけられる。だからこそ、“一分”をかけた壮絶なクライマックスには、心からの共感を覚える。当初、台本には「愛妻記」というタイトルが記されていた。『武士の一分』は、極めてシンプルかつ普遍的な夫婦愛の物語なのだ。木村自身が提案したというラストの“決め台詞”にも注目である。

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