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欧州フットボールの空間
ファンタジスタとは?
ファンタジスタ
フットボールにおいてこの言葉は非常に崇高で高貴な存在と称されている。直訳すると、ファンタジーある人だが、フットボール界においてのファンタジスタとは、
「天才的な閃き、創造力、意外性があり観る者を魅了するフットボーラー」
の事である。
この部類に入る代表的な現役フットボーラーはロベルト・バッジォ、ジネディーヌ・ジダン、フランチェスコ・トッティ、リバウド、ラウール、ロナウジーニョなどがそうである。
過去の名選手達で代表的なファンタジスタと言えば、ディエゴ・マラドーナ、ペレ、アルフレッド・ディ・ステファノ、ヨハン・クライフ、ミシェル・プラティニ、ジーコなどが非常に偉大なファンタジスタである。しかし、他にもファンタジスタは過去にも現在にも数多く存在している。
ここではそのファンタジスタの種類、歴史など論じていきたいと思う。
一言でファンタジスタと言っても、その役割、種類などは実に様々である。
ファンタジスタの定義とは
「ポジション名または役割名ではなく、その選手自体のプレースタイル」
のことを言う。
という事は、FW(CF、セカンドストライカー、ウインガー)でもMF(トップ下、サイド、センター)でもファンタジスタは生息しているという事である。
しかし、条件として、
「守備の責務を負わない」
という条件がある。
現代のフットボールにおいてこの条件をクリアできるポジションは残念ながら非常に限定されてしまうのである。
また、純粋な「ウイング」というポジションは現在のフットボールには存在しないのである。
現代版「ウイング」とは純粋な「ウイング」に
「守備の責務」
という役割が課せられた、ポジションの事である。
また、現代フットボールにおけるセンターMFの役割も基本は「守備」であり、この事から判断すると、現在のフットボールにおけるファンタジスタの生息ポジションは「センターフォワード、セカンドストライカー、トレクァルティスタ(トップ下)」にほぼ限定されつつある。
確かに
「守備の責務」
があるポジションでも、閃き、創造性、意外性のあるプレーを披露していれば、それは「ファンタジスタ」になるのではないか。
という解釈もできるが、ここで述べている
「ファンタジスタ」の定義は「守備の責務」を組織的秩序範囲内必要最低限以外負わない、「真のファンタジスタ」
であり、あくまで「守備の責務」を負っている時点で「ファンタジスタ」の定義からはずれるのである。
この事からある一つの結果が見えてくる。それは
「戦術」の全く対極の位置に「ファンタジスタ」
が属しているのではないだろうか?
確かに現代フットボールは過去のフットボールより格段に「戦術」は進歩したが、それは
「組織的」「機械的」「必然的」
と言い換える事ができるのではないだろうか。
未来のフットボール史では「ファンタジスタ」と言われる選手達は存在する事ができるのだろうか。
次に、ここでは「ファンタジスタ」の種類を紹介していこう。
種類というのは、ファンタジスタ達がピッチ上でどのような傾向を主としているかによって、変わってくる。
まずは
「純粋型」
といわれるタイプである。
このタイプは簡単に定義すると
「攻守一切の戦術的束縛、干渉を受けない」
まさに、自由が前提にある。
しかし、現代フットボールでは攻守どちらかの戦術的束縛は必ず負うのであって、純粋型と呼べる選手は、現在一人だけである。
その一人とはイタリアの至宝ロベルト・バッジォである。
彼はピッチの至る所に姿を現し、魔法の様なプレーで味方を助け、パス、ドリブル、シュートその一つ一つ全てがファンタスティックである。
自分で全て判断し自分自身が戦術と言えば分かりやすいと思う。
しかし、現代フットボールにおいて、このバッジォの様なタイプは監督達に嫌われるのである。
なぜなら、「戦術」という枠に入らないからである。
この純粋型のファンタジスタはチームに勝利を導く時もあれば、非常に高いリスクを冒す時もある。
しかし、現在の監督達はそのリスクを冒す事を忌み嫌うのである。常に監督達は「勝利」を最前提とし、そのために「戦術」という秩序をあたえるのであって、
純粋型ファンタジスタはその秩序に真っ向から反発する。
その結果、この純粋型ファンタジスタはピッチ上から姿を消したのである。しかし、マラドーナやプラティニはこの純粋型ファンタジスタの代表的な選手である。
この2人は監督達に必要とされていた。それはなぜか?
ここでの論議からすると、この2人も監督達に敬遠されるのではないかと思うだろうが、この2人は現在のファンタジスタ達とは決定的に違う面を持っていた。
それは、
「絶対的な能力」
である。
ピッチ上全てを支配し、圧倒的な存在感であらゆる所に聖域を作り出した。まさに、神に認められたフットボーラーだった。
この事から、現在の監督達もこの2人の様な能力があれば、自由を認めるだろうが、残念ながら現在のフットボール界において彼らほどの能力を持った選手はいない。
しかし、時折彼らの様なプレーを繰り出す選手が一人だけいる。ジネディーヌ・ジダンである。
この事から、現在「純粋型ファンタジスタ」が存在できない理由は、
1、戦術至上主義的なフットボールへと変化した為
2、戦術を凌駕するほどの、絶対的な能力を持った選手がいない為
と判断できる。
次に紹介するタイプは
「中盤型」
と呼ばれるタイプである。
別名
「ゲームメーカー型」
と呼んでもいいだろう。
このタイプは読んでの通り、中盤で攻撃を司り、決定的な場面を作り出すファンタジスタである。
このファンタジスタの条件としては、自身後方に自分を援護してくれる味方が必要なのである。
前に述べたが、「守備の責務」を負っている時点で真のファンタジスタでは無い。
よって、
「守備の責務」を負ってくれる味方
が必須なのである。
このタイプのファンタジスタ達が生息しているポジションは、1,5列目、通称トップ下である。
しかし、現在のフットボールでゲームメイクだけでは通用しない。
次の項で説明するが、現在のフットボールにおいて一番多いタイプのファンタジスタである
「ストライカー型」と「中盤型」
両方の傾向を持った選手が現在の中盤型ファンタジスタなのである。
そして、最後に「ストライカー型」ファンタジスタである。
このタイプの多いポジションは攻撃の核となる、センターフォワードの周りを衛星の様に動くセカンドストライカーに最も多い。
しかし、時としてセンターフォワード不在の際は自身がセンターフォワードと成るのである。
非常に高い柔軟性、テクニック、強いフィジカルを兼ね備えている。
このタイプで代表的な選手はラウールであろう。
レアルマドリードではロナウドの後方に位置し、スペイン代表においてはセンターフォワードとしてプレーしている。
このタイプのファンタジスタは
ツートップの一角
、という事である程度の自由が与えられている。
現在のフットボールでは、
「ストライカー型」がより強い選手はセカンドストライカーで、「中盤型」がより強い選手はトップ下で起用されやすい。
と基本的解釈ができるであろう。
ここでの総括として、現代フットボールにおけるファンタジスタの主な役割とは
「守備の責務は極力免除されるが、攻撃面においては戦術の秩序を最低限保ち、リスクを最小限に抑え、結果を出さなければならない」
なんて過酷な要求だろうか、しかし、現在のファンタジスタ達がこの役割をきっちりこなしているからこそ、スペクタクルで魅力的なフットボールは現代フットボールでも脈々と生きているのである。
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