あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

越前海岸殺人事件

越前海岸殺人事件 ~越前海岸殺人事件~


197×年、香港カイタック空港で、着陸に失敗した旅客機が爆発炎上
大惨事にもかかわらず、スチュワーデス、10歳の男の子、生後間もない女の赤ん坊の3人の生存者がいた
赤ん坊は関西の財閥の高岡憲一郎の孫で、シンガポールに赴任している息子夫婦が赤ん坊のお披露目にと、日本に帰国する際に巻き込まれた悲劇であった
血液型などを調べた結果問題なかったので、赤ん坊は高岡家へと引き取られた
そして二十年の月日が流れた…

大学4年生になった高岡千佳子は、美しい娘へと成長していた
祖父の憲一郎は数年前に他界し、今は祖母のりつが当主となっていた
祖父が亡くなっても、資産やら株の配当で、生活に心配することは何もなかった

年末、千佳子は仲のいい友人、ゆかり、美子、加津の三人と一緒に越前岬へと旅立つ
口煩い祖母の目をかわす為に表向きは女だけの4人旅だが、実際は現地で男性グループと合流することになっていた
夏に白浜に旅行に行った時に知り合ったグループで、代議士の息子、アナウンサー、新聞記者と皆一流企業に勤めていて、そのなかでも千佳子は代議士の息子の矢野に惚れていた

旅先で千佳子は、小林と名乗る男性から声を掛けられる
その男は20年前の飛行機事故の生存者だと告げた
事故当時生後間もなかったので、何一つ両親の事を知らない千佳子にとって、小林の話は衝撃を与えた
それから、千佳子と小林は度々会うようになる

小林が数枚の写真を千佳子に差し出した
小林の話によると、千佳子は高岡家の娘ではなく、近くに座っていた多田夫婦の娘で、多田千代が本当の名前だというのである
到底信じられる話ではなかったが、小林は事故当時10歳で記憶があったというし、見せられた写真にもその姿は写っていた
“脅迫か?”
何が目的か千佳子が小林に尋ねると、“好きなので、付き合ってくれれば黙っている”とだけ彼は言った

愛する矢野との愛を育ませつつ、小林とも付き合う千佳子
代議士の息子矢野との恋はトントン拍子に話は進み、互いの家へ挨拶を交わし婚約するまでに至った
その事をどこからか嗅ぎつけてきたのか、小林は千佳子を恐喝してきた
“自分が高岡家の娘でない事が判れば、裕福な生活も、矢野との結婚も何もかもダメになる”
そう思った千佳子は小林に殺意を抱き、殺すことに決める

大学の卒業旅行で、千佳子たち前回の旅行メンバー8人は、加賀温泉郷の片山津温泉へと旅行する
その旅行の最中に小林を殺すことにした千佳子は小林を同じ宿に宿泊させ、皆との食事の最中に隙を見て席を外し、小林の部屋を訪れた
睡眠薬入りの酒を飲ませ、あとで戻ってきて寝入っている隙に殺害する段取りである
皆のところに戻り、アリバイを作ってから再び小林の部屋を訪れると、そこには首に紐を巻かれて絶命している小林の死体が転がっていた…

いったい、誰が小林を殺したのだろうか?
旅行メンバーの中にいるのだろうか?
最近になって、頻繁に高岡家に出入りしている千佳子の遠縁にあたる木田和也も、千佳子の周囲を嗅ぎ回っているようで怪しい

そんななか、千佳子宛てに1本の電話が鳴る
相手は、事故の生存者であったスチュワーデス中広君子からであった…

二十年前の旅客機事故を発端に起こる連続殺人
生存者が辿る数奇な運命とは!?



~感想~
自分の知られざる過去を隠す自己防衛の為に、犯罪に手を染めようとする主人公
幸福の絶頂から転落していく展開はスピーディーに進むが、自分の幸せの為だけにという身勝手な犯行動機にいささか憤りを感じつつも、物語は意外な展開へと向かい、このままどうなるの?というところで、突然結末を迎える
ストーリーがどんどん盛り上がっていただけに、その唐突な結末は呆気ないくらいに簡潔
ラストも一応ハッピーエンドのような形にはなっているが、人間関係などは片付けられないままそのままで終わってしまい、なんとも釈然としない
とはいうものの、悲劇に見舞われた生存者たちが辿った数奇な運命と悪戯はドラマティックで、最後まで一気に読破したのだった


という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
ありません



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