あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

彼岸花が死を招く

花の寺殺人事件 ~彼岸花が死を招く~    【花の寺殺人事件】所収


大木進は、売れない推理小説家
受賞しての作家デビューだっただけに始めこそは華々しい作家生活だったが、その後出す本はまったく売れず、今ではタクシーの運転手をしている
それに比べて、大木と同時期にデビューした石坂二郎は、飛ぶ取り落とす勢いで、出す本すべてが売れ、いまや売れっ子作家となっていた

作品の構想を練るために京都を訪れた大木は、祇王寺の近くで、若い女性の死体を発見する
そのバッグには、ライバル視しているあの石坂の小説が入っていた
“殺害された女性は、石坂二郎のファンか?”
そう報道されれば、またもや石坂の本は売れるだろう
その時、大木の頭のなかではよからぬ企みがもたげていた
ここで、石坂と自分の本をすりかえれば、自分のことが話題にあがる
そう考えた大木は、本をすりかえるのだった…

しかし、この行為が仇となり、事件の渦中に引きずり込まれる展開を迎えることになろうとは、大木は思いもしなかった
刑事から疑いの目を向けられた大木は、自分の身の潔白を証明するために、事件を必死に推理してみるが…



~感想~
物語の冒頭部分が面白かっただけに、その後の展開が今ひとつ盛り上がりに欠けてしまい、ちょっと残念
話の運び方しだいではもっと面白くなっていたに違いない
とはいえ、犯人が辿る末路がなんとも切なく、読んだあとに、彼岸花の赤々とした残像が瞼に残る余韻を残す

という事で、私的評価は星【★★☆☆☆】2つです



◆この原作のドラマ化作品・1◆
昭和62年11月2日放送
京都サスペンス
『彼岸花が死を招く』
出演/大木礼子…小川眞由美/中井…国広富之/石坂二郎…蟹江敬三/松崎刑事…小坂一也/細田かおり…斎藤絵里 ほか


…ドラマの内容
大木礼子は推理小説家ではあるが、鳴かず飛ばずで、今は学習塾で子供たちに勉強を教えている
編集者の中井に誘われて推理協会のパーティーに参加するものの、どうも気乗りがしない
そんな礼子を見かねて中井は、「取材旅行で京都に行かれては?」と勧める

言われるがままに京都に来たものの、いい案が浮かばない礼子は、ぶらぶらと嵯峨野を散策する
大覚寺を散策していると、彼岸花の花の陰に、女性の死体を礼子は発見する
突然のことに驚くが、女性のバッグから1冊の小説が顔を出していた
それは、今や売れっ子作家である石坂二郎の最新刊だった
遺体が発見されたときに、自分の小説を持っていたとなると、それがニュースになり、仕事が舞い込んでくるかもしれない…
そんな短絡的な考えで礼子は、石坂と自分の本をすり替えて、その場を離れてしまう

翌日、東京に戻ってきた礼子は、京都の大覚寺で若い女性の死体が発見されたというニュースを見る
ニュースでは、死亡した女性が礼子の本を持っていたという報道がされ、思惑通り、インタビューやら、仕事の話が舞い込み、ちょっとした時の人となっていた

しかし捜査の手は確実に迫っていた
京都からきた松崎という刑事に、「昨日は京都に行かれましたか?」の問いに、「いいえ」と答えてしまった礼子
礼子の本は現在廃刊になっていて書店には並んでいないのに、どうやって手に入れたのか?
本のページに一切指紋が無いのはどういうことか?
と、松崎は次々と礼子に質問を浴びせる
殺害された林三知子は、石坂の婚約者で、事件当日の昼、石坂は三知子にサインをした本を渡したというのだ
それがなぜ、礼子の本にすり替わっていたのか?
刑事は礼子を疑っているようだったが、本当のことを言えない礼子は、なんとか誤魔化すのが精一杯だった

ほんの軽はずみでした行為だったのに、自分が疑われている
礼子は身の潔白を証明するために事件解明に乗り出す…


…ドラマの感想
主人公や犯人の性別が、原作とは異なっているが、作品自体はうまくまとめあげられている



◆この原作のドラマ化作品・2◆
平成13年6月15日放送
京都怪奇伝説殺人事件金曜エンタテイメント
山村美紗サスペンス
『京都女優シリーズ3・京都怪奇伝説殺人事件・殺人現場に残される謎の彼岸花…華麗な女優の裏舞台に暗躍する愛欲が導く悲劇の末路』
出演/麻生夕子…東ちづる/田村竜平…大鶴義丹/石田みどり…森下涼子/狩矢警部…横内正/早乙女朋子…山村紅葉/渚麗子…大沢逸美/野上梨花…鈴鹿景子/吉見健治…五大高之/鮫島巡査…鶴田忍/橋口警部補…井上高志/尾形洋介…沖田さとし ほか


…ドラマの内容
太秦映画村の女優・麻生夕子は、気心が知れているメイク係の石田みどりと、俳優の尾形洋介の披露宴に参加していた
新郎新婦を囲んでワインで乾杯したとき、尾形とみどりが突然苦しみだして倒れてしまう
みどりは一命を取り留めるが、尾形は死亡
死因は、彼岸花の根や葉に含まれるアルカロイドによる毒死だった

披露宴参加者たちに話を訊くと、新郎新婦にワインを注いだのは野上梨花だということがわかった
梨花と尾形はその昔恋仲を噂されたことがあり、夕子は梨花に真相を訊くが、軽く一蹴されてしまう
そんななか、梨花が宇治川の畔で刺殺体となって発見されてしまう
死体のそばには、なぜか彼岸花が散っていて、凶器の簪には彼岸花の毒が塗られていた

梨花の死体発見現場が、撮影が始まったばかりの「橋姫伝説殺人事件」の縁のある場所だったので、橋姫の祟りか?などと噂する連中も出てきた
主演の梨花が不慮の死を遂げてしまったため、撮影は中止になるものと思われていたが、梨花と険悪の仲だった渚麗子が主演として、撮影は続行されることに
しかし、その麗子も撮影所内で刺殺体となって発見され、その現場には、またしても彼岸花の花が散っているのだった

相次ぐ俳優たちの死
そして現場に残される彼岸花の謎
事件を推理するうち、夕子は、8年前に四国で撮影された2時間サスペンスドラマ「平気伝説殺人ツアー」が、殺害方法が今回の事件と酷似していて、しかも殺された3人の俳優たちが出演していたこともあって、一連の事件に関係しているのでは?と睨むが…


…ドラマの感想
彼岸花の毒を使った犯行ということだけを原作から引用して、あとは全くのオリジナルのストーリー



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