あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

京都詩仙堂殺人事件

京都詩仙堂殺人事件 ~京都詩仙堂殺人事件~


四年前、女子大生杉由紀子の姉、亜由子が京都の詩仙堂で不倫相手の男と心中した
姉は死に、相手の男である若木陽一郎は生き残った
それ以来、人を信じることができなくなっていた由紀子は、夏休みを利用して京都へと旅することを決意する

由紀子は、京都へと向かう新幹線で、隣の席に座っていた女子大生の原田マリ子と親しくなり、二人は一緒に京都観光することになった
姉が死んだ詩仙堂を訪れた二人は、そこで、当時の心中事件について知っている人に会う
そして話を聞いた結果、姉の死は心中ではないのでは?という疑念が生じる

偶然にも、姉と一緒に心中して生き残ったという若木陽一郎の知り合いだという人物に会うことができ、若木の近況を知ることができた
若木は、とある会社社長の娘を嫁に貰い、婿養子となっていたが、心中事件をきっかけに離婚したという
ところが、今は、別の大手電機会社の娘に見初められ、またしても婿養子となり、裕福な生活を送っているというのだ

どうしても若木に会ってみたかった由紀子は、現住所を区役所で調べ、自宅を突き止める
通りすがりの若い二人組の男子学生に道を尋ねて教えてもらうと、大きなその家には「黒沢陽一郎」という表札が掲げられていた
インターホンを鳴らした由紀子は、応対に出た黒沢夫人に姉の名前を告げると、明らかに動揺した声で「夫は出張中です」と言って、切られてしまう
それでも由紀子は、黒沢家の前で張ってみることにした
その間、さっき道を尋ねた男子学生がいたので、仲良く話をして時間を潰していると、程なくして黒沢家の前に車が1台滑り込んできた
降りてきた男性に、由紀子が声を掛けると、男性は驚いた表情を浮かべた
それもその筈
由紀子と姉の亜由子は、顔がよく似ているからである
何かを察したのか、黒沢は、由紀子とマリ子に車に乗るよう勧めた
マリ子がいてよかった…と思ったのも束の間、マリ子は、丁度自分が予約していたホテルの前を通ったので、ここで降ろしてほしいといった
元々行きずりで意気投合しただけだったので、由紀子はそこでマリ子と別れた

とうとう二人っきりになってしまった
車は東山ドライブウェイを走る
由紀子は一抹の不安を覚えていたが、意外にも、黒沢は甘い声で由紀子を誘惑してきた
色仕掛けで誘惑し、黙らせようという魂胆なのである
そうはいくものか!
と頭の中では判ってはいるものの、黒沢に優しくされると、由紀子の心は揺らいだ

黒沢に、姉との愛は真剣だったのかを確かめる意味で、“杉亜由子を愛していました”というメモを書かせると、車の運転を替わった
カーブが多い山道を運転する由紀子
と、その時だった
由紀子は運転を誤り、車は、30メートル下の谷底へと転落してしまった…

気がつくと、由紀子は病院のベッドの上にいた
黒沢陽一郎は死に、奇跡的にも由紀子は重傷ながら助かったのである
病室には、マリ子や、黒沢の家の近くで知り合い親しくなった男子学生の姿があった

今回の事故について、新聞では大きく取り上げていた
というのも、四年前の心中事件で生き延びた男が、今度は心中相手だった妹と心中を起こし、そして死亡したという物語性からであった
黒沢の背広の胸ポケットに入っていた、由紀子が書かせたメモが無理心中事件の決め手となったらしい
計らずしも、由紀子は、姉の仇をとったのである
ベッドの上で、色々な想いが駆け巡っている由紀子に向かって、男子学生の一人が思いもよらない一言を言い放った
その一言に、由紀子は大きな衝撃を受けるのであった…



~感想~
あまりにも偶然に頼りすぎる展開はいかがなものかと
そしてラストの顛末にも驚いたが、さらに用意されていたどんでん返しにビックリ!
ここまで偶然が重なるか!とツッコミたくなってしまった
とはいえ、ドラマチックな展開は読んでいて引き込まれた
この先どうなるの?という思わせぶりな結末もいい
でも、個人的な意見を言わせてもらえば、最後はどんな結末であれ、スッキリと片付けてほしかった

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
ありません



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