あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

双子の棺

大江山鬼伝説殺人事件 ~双子の棺~     【大江山鬼伝説殺人事件】所収


石原葬儀社に、片山瀬家から葬儀の依頼が入った
社長を務める石原明子と、ベテラン社員の秋山と二人で片山瀬家を訪ねると、大きな邸宅であることに驚く
さらに驚いたのは、喪主を務めるのが、若くて美しい女性だということだった
喪主の片山瀬理沙の両親はすでに他界していて、脳梗塞で亡くなった祖母の片山瀬加奈枝とは2人住まいだったという
親族付き合いも殆どなかった為、加奈枝の孫である理沙が喪主を務めることになったのだ

滞りなく葬儀の準備が進められるなか、明子は、石原葬儀社の事務員である内田良子から、片山瀬家のことについて話を聞かされる
良子の話によると、理沙には、千沙という双子の妹がいるというのだ
双子が産まれたとき、古い考えの持ち主だった加奈枝が、双子は外聞が悪いと、千沙を広島の香山家へ養子として出してしまった
しかし、数年前、隠していた事実を加奈枝が理沙に話したことをきっかけに、理沙と千沙は交流を持つようになったという

そこで明子は疑問に思った
なぜならば、葬儀の準備のために片山瀬家を訪れているが、千沙の姿を見かけないからである
片山瀬家の莫大な財産を理沙が独り占めするために、わざと千沙に連絡をしていないのだろうか?
それとも、連絡が取れないのだろうか?
結局、加奈枝の葬儀に、千沙が姿を現すことは無かった

葬儀が終わると、弁護士の黒木によって、加奈枝の遺言状の中身が発表された
それによると、遺産の7割は理沙に、残りの3割を千沙に相続させるという内容だった
本来であるならば、香山家の実子として届出された千沙には相続権は無いので、遺言状の中身に理沙は不快感を表していたという
双子として生まれたのに、一人は裕福に暮らし、一人は養子に出されて不遇の生活を送った
千沙になんとなく同情していた明子としては、少しでも遺産が入るような内容だったので、救われたような気がしたのだった

数日後…
片山瀬家から、再び葬儀の依頼が入った
なんと、理沙が亡くなったというのだ
驚いた明子と秋山が片山瀬家へ出向くと、顔馴染みの京都府警の狩矢警部がいた
理沙は、自室で毒物を飲んで変死したというので、捜査をしているとのこと
理沙の葬儀の準備が着々と進められるなか、その時初めて、明子は理沙の双子の妹の千沙と会った
華やかな雰囲気の理沙とは対照的に、千沙は暗い感じのする女性だった

莫大な財産を引き継ぎ、恋人の沢山伸也ともうまくいっていた理沙に、自殺する動機などあるはずが無い
だとしたら、千沙が財産欲しさに理沙を殺したのだろうか?
しかし、遺言状によると、理沙が相続する7割は、理沙が亡くなった場合は福祉施設に寄付されてしまうことになっているので、千沙が理沙を殺しても一銭の得にならない
かといって、恋人の沢山も、理沙と結婚しているわけではないので、殺しても遺産が手に入ることはない
容疑者たちには一応アリバイがあったし、第一、理沙を殺すメリットが無いのである
それとも、理沙殺しの動機は莫大な遺産目当て意外にあるのだろうか?

事件は進展を見せないなか、三七日の忌明けが経っていた
そこで明子は、片山瀬家に長年勤めている家政婦のきみから、ある事を打ち明けられる
その話を聞いた明子は、犯人が誰であるか悟ったのだった…



~感想~
憎しみって、人を醜く、そして愚かにさせるんだね
運命に翻弄された双子の姉妹が、二人が二人とも身勝手ゆえに起きてしまった悲劇
今ある自分を見つめていれば幸せになれていたものを、憎悪の感情に任せてしまったがゆえに辿り着いた、救いようのない結末は、あまりにもやるせない

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
平成9年4月11日放送
赤い霊柩車7・双子の棺金曜エンタテイメント
山村美紗サスペンス
『赤い霊柩車7~双子の棺・猫屋敷に横たわる2つの死体!!・孤独な老婦人と数奇な運命に引き裂かれた双子の姉妹愛憎の再会』
出演/石原明子…片平なぎさ/黒沢春彦…神田正輝/狩矢警部…若林豪/秋山隆男…大村崑/片山理沙・香山千沙(2役)…渡辺梓/内田良恵…山村紅葉/黒木弁護士…沖田浩之 ほか



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