あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

呪われたルビー

紫水晶殺人事件 ~呪われたルビー~    【紫水晶殺人事件】所収


早川由梨は、偶然スナックで知り合った伊吹和彦に恋心を抱いていたが、一緒にいた会社の同僚で友人の知子が、伊吹に大胆にアプローチしていることを知り、尻込みしてしまう
派手な生活を送っている知子に、由梨が敵う筈がなかったからだ

しばらくして、伊吹との交際は順調だと言っていた知子が、交通事故で死亡してしまう
その知子の葬儀で、由梨は伊吹と再会した
その時、伊吹の口から意外な事実を告げられる
なんと、知子と伊吹は付き合っていなかったのである
知子は由梨の前で虚勢を張っていたのだ
もともと伊吹は、店で初めて会ったときから、知子よりも由梨に惹かれていた
由梨も伊吹に好意を抱いている
こうして、二人は順調に交際を進め、結婚することとなった
由梨は、伊吹から婚約指輪だといって、ルビーの指輪を貰う
伊吹家代々に伝わるその指輪は、大きく、とても魅力的な赤い輝きをしていた

ある日、由梨は、一人の男性に声を掛けられる
それは、伊吹と知り合うきっかけとなったスナックで、伊吹と一緒にいた小野太刀男である
そこで由梨は、小野の口から思いもよらぬ事を聞かされる
伊吹の母親が自殺していること
妹が溺死していること
さらには、伊吹には小川マリコという婚約者がいたのだが、その女性は通り魔に殺害されてしまったということ
初めて聞かされる話に、由梨はただただ驚いてしまった

伊吹の家を訪れ、棚を整理していた由梨は、偶然見つけたアルバムを興味本位で捲った
そこには幼い伊吹とともに、手にルビーの指輪を嵌めている美しい女性が写っていた
その指輪は、由梨が伊吹から貰った、伊吹家代々のルビーである
その美しい女性が伊吹の母親だと思っていた由梨だったが、伊吹に紹介されて実際に会った母親の伊吹百合は、いくら年月が経ているとはいえ、アルバムの女性の面影はまったく残っていなかった

伊吹に対して色々な疑念が湧いてきていた由梨は、小野から聞いた話などを伊吹に話し、事の真相を確かめるが、マリコという女性は知らないし、母親はこの間会っただろう?と言う
僕たちの幸せを妬んで小野が嘘をついたんだと、伊吹は平然とした顔で言うのだが、由梨はどこか腑に落ちないでいた

小野の話が気になった由梨は、大学のときの同級生で今は大手の新聞社に勤めている篠田に、神戸の旅先で通り魔に襲われて死亡したという小川マリコの事件について調べてもらう
すると、やはり実際に事件は起きていた
そして死亡していたとき、マリコの指にはルビーの指輪が嵌められていた
その指輪の特徴は、由梨が貰った指輪と同じものだった

なぜ伊吹は、自分の婚約者のマリコの事を知らないと言ったのだろうか?
小野の話によれば、伊吹の母と妹は不可解な死を遂げているというし、そして婚約者のマリコは殺され、伊吹を愛していた知子までもが死んだ
伊吹に関係する女性が次々と死んでいく
このルビーの指輪が呪われているのだろうか?
伊吹に聞いても、彼は真実を話さないだろうと思った由梨は、小野に話を聞こうとする
しかし、その小野の死体が、川に浮かんでいるのが発見されるのであった

私の愛する男性は、何を隠しているのだろうか?
愛と疑惑の狭間に揺れながら真相を突き止めたとき、明かされる衝撃的な事実とは!?



~感想~
愛する人のことは何でも知りたいものなのだろうか?
この物語の主人公は、愛する男性の過去が気になり、疑惑ばかり抱いている
あまりにも疑ってかかるので、その行為は少々辟易気味
まぁ結果として、その疑り深さが事件を解決するキッカケとなるのだが、真実を突き止めても必ずしもそれが良い結果を導くとは限らない
ラストシーンが、なんともせつないのが印象的

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
平成13年6月4日放送
名探偵キャサリン10・呪われたルビーの謎月曜ミステリー劇場
山村美紗サスペンス
『名探偵キャサリン10~呪われたルビーの謎・そのルビーを身につけた女性は必ず殺される…京都を舞台に展開する恐怖の連続殺人』
出演/希麻倫子…かたせ梨乃/伊吹和彦…羽場裕一/狩矢警部…西岡徳馬/飛田三郎…河相我聞/伊吹みさと(込山孝江)…二宮さよ子/川奈鉄郎…尾美としのり/千田美佳…山村紅葉/津島枝利…中島宏海/溝口佳代…石井苗子/森川陽司…津村鷹志 ほか


…ドラマの内容
カメラマンの希麻倫子は、ジュエリーファッションショーの取材に張り切っていた
というのも、ショーを開催する“ジュエリーいぶき”の東京支店専務の伊吹和彦は、キャサリンの初恋の男性なのだ
助手の飛田三郎が呆れるほど、久しぶりの再会に取材中も浮かれる倫子だったが、ショーの最後に、和彦とトップモデルの津島枝利の婚約が発表され、落胆する

翌日、枝利の刺殺死体が化野念仏寺で発見された
死体の手のひらには、なぜかルビーの指輪が握られていた

警察の調べで、枝利を付け回していたフリーライターの川奈鉄郎が、事件当夜、ショーが行われていたホテルで目撃されていたことが判る
川奈を事情聴取すると、和彦の婚約者が過去に謎の死を遂げているので、そのことを枝利に忠告していたのだという
調べると、確かに八年前、和彦の婚約者だった大八木秀美は轢き逃げに遭い、死亡していたことが判る
被害者の秀美の写真を見ると、手には大きなルビーの指輪を嵌めていた

一方、キャサリンは、和彦からプレゼントを渡される
開けてみると、ルビーの指輪だった
高価なプレゼントに驚いた倫子は、一度は突き返したものの、「母が大事にしていた指輪だから、キミに貰ってほしい」という和彦の言葉に、受け取ることにする

初恋の和彦に対して、いまだに恋心を抱いている倫子ではあったが、ある疑念が生じていた
それは、伊吹の家で偶然見つけてしまった1枚の写真がキッカケだった
幼少の伊吹、そして妹とともに、ルビーの指輪を嵌めた女性が写っていた
母親のような気がするのだが、今のみさおとはまるで別人なのである
さらには、和彦の妹の真希子が、コロンビアで自殺をしていたことも判る
生前、真希子はルビーの指輪を大事に指に嵌めていた

和彦に関係する女性の相次ぐ死…
不可解な死を遂げた真希子と秀美が嵌めていたルビーの指輪は、今、倫子の指に嵌められている
このルビーの指輪は呪われているのだろうか?
そして、和彦の幼少時代の写真に一緒に写っていた、ルビーの指輪をはめた女性は一体誰なのか?
信じたいのに信じることができない倫子は、枝利の事件の時の和彦のアリバイを確かめてみるが…


~ドラマの感想~
原作の骨格を残しつつ、キャサリンシリーズとしてうまくアレンジされている
描かれているのは陰惨な事件でありながらも、かたせ梨乃氏演じる希麻倫子を始めとするレギュラーメンバーが明るいキャラクターばかりなので、作品が重くならず後味が悪くならない
主人公が初恋の男性に抱く恋心がドラマの底辺にあり、救いのあるラストシーンとエンディングのテーマ曲が功を奏していて、見終わったあと、ちょっと洒落た映画を観たような、なんともいえない余韻に浸ることができた



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