あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

死化粧は菊の花

花の寺殺人事件 ~死化粧は菊の花~    【花の寺殺人事件】所収


近藤陽子が勤めている会社の上司、水原和彦の妻千津子は、女子社員や男性社員の夫人たちを、何かと理由をつけては自宅に招いてパーティーを開いていた
招かれたOLや夫人たちは、ゴマをする機会なので、呼ばれると嫌な顔一つせずに駆けつけた

陽子は、水原家から近い所に住んでいるせいか、まるで召使いのように一番よく呼ばれた
千津子から誘いの声が掛かると、陽子は憂鬱な気分になってしかたなかった
高慢で自己中心的な性格の千津子に付き合わなければならないことも苦痛だったが、決定的な理由は他にあった
それは、菊の花だ
陽子は菊の花に忌まわしい思い出があるせいか、菊を見たり、匂いを嗅ぐだけで情緒不安定になったり、喘息の発作が出てしまう
しかし、菊の花が大好きな千津子は、陽子の事はお構いなしに、菊の花の観賞に付き合わせたり、菊の食事を振舞ったりする
陽子は千津子との関係に嫌気が差していたが、直属の上司の妻なので無碍にすることもできず、ただひたすら耐えていた

いつものように、千津子からの誘いで菊の花の観賞に付き合わされた陽子は、翌日喘息で会社を休んでしまった
すると、自宅に水原が訪れてきた
陽子が菊アレルギーだという事を偶然知り、妻の我儘を許してくれと、わざわざ謝りにきたのだ
その事がきっかけとなり、陽子と水原は男と女の関係となった
陽子は、水原に抱かれながら、高慢な千津子の鼻をあかしてやったことに快感を覚えるのだった

はじめは週に1回だけ夜を共に過ごせれば満足していた陽子だったが、段々と水原にのめり込んでいき、離婚を要求するまでになっていた
そんな陽子が疎ましく思え始めたのか、それとも三年という月日が流れたせいなのか、次第に水原の陽子に対する態度は冷めていった

そんなある日、陽子の同僚の田中良子から、変な話を聞かされる
先日退職した泉晴子という女性が、水原と不倫の仲にあったというのだ
信じられない陽子だったが、良子の話によると、晴子は水原と結婚できると思っていたがそれが叶わないことだと悟ると、妻の千津子に不倫を告白したが千津子は動揺することなく、逆に、そのことが原因で会社をクビになったという
晴子は、高価な貴金属をプレゼントされたり、水原と一緒に海外旅行に行ったりと、随分と贅沢にしていたというその話を聞いた陽子は、驚きと怒りに震えていた
3年も水原と不倫の関係にある陽子だが、水原からは一度もプレゼントを貰ったことがないのだ
水原にとって、陽子は身体だけの女だったのだ
陽子は、自分を弄んだ水原と、千津子に殺意を抱く

“千津子を殺し、その罪を水原に着させよう”
そう思った陽子は綿密に計画を練る…

男に裏切られたことを知った女が企んだ完全犯罪
すべては計画通りに進んだと思われたが、事件の裏側には、驚くべき事実が隠されていた!
幸せになることを夢見た女が最後に見たものは?



~感想~
初めは、自分勝手な女の身勝手な復讐譚かと思われたが、ラストに明かされる意外な展開に驚かされた
愛する人に裏切られ、さらには信じていた人物にまで騙されていた主人公のラストが哀れで、なんとも切ない
この物語のなかで一番卑怯で罪深い男の、せめてもの償いに値する行為に、少しだけ救われたような気がした

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
ありません



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