あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

京菓子殺人事件

ミス振袖殺人事件 ~京菓子殺人事件~    【ミス振袖殺人事件】所収


お茶会に呼ばれたときに出された和菓子の美しさに魅せられたキャサリンは、和菓子に興味津々
そんな姿を見て恋人で京南大学助教授の浜口一郎は、三条菊屋という伝統のある和菓子屋を紹介する
そこの一人娘の菊川千秋は、浜口が勤務する大学の生徒で、その伝もあって今回の取材が実現したのだ
アメリカの雑誌「シーズ」のカメラマン兼記者のキャサリンは、早速三条菊屋を取材する

取材から三日経った日、キャサリンのもとに一枚の招待状が届いた
それは紅梅庵で開かれる茶会への招待状だった
先日取材に訪れた三条菊屋の店主、菊川良成が推薦してくれたものだった
このお茶会では、毎年三条菊屋が新作の和菓子を発表することになっていて、キャサリンは期待を胸膨らませて茶会に参加する

京都の名士などが二百人ほど招かれているという茶会は、盛大なものだった
キャサリンと浜口が、家元の点てた茶を飲んでいると、同席していた女性が茶を飲み終えた途端、突然苦しみだして倒れてしまう
茶会を中断したくない家元は、何事もなかったかのように振る舞い続けるが、倒れた女性の身に何が起きたのか察しがついていたキャサリンは、彼女が手に握っていた和菓子を、池の中へと放り込む
すると、その和菓子を口にした鯉が死んでしまった
そう、亡くなった女性は、毒入りの和菓子を食べて亡くなったのだ!

そのことをキャサリンから聞かされた浜口は、慌てて茶会を続けている家元のもとへ駆け寄り、今すぐ茶会を中止するよう求める
しかし、家元は応じない
そこで、さきほどの女性が毒入りの和菓子を食べて亡くなったことを告げ、和菓子を誰も口にしないよう訴える
その騒ぎを聞いて、菓子匠の菊川良成が、毒入りの和菓子と言われたことに対して怒鳴り込んでくる
困惑する浜口のもとに、キャサリンが京都府警の狩矢警部らと共に現れる
そして、狩矢の口から病院に搬送された女性が死亡し、不審な点があることを示唆すると、ようやく皆は冷静さを取り戻すのだった

茶会で亡くなったのは、高級料亭花鳥亭の社長夫人沢田眉子
死因は、やはり和菓子に混入されていた青酸カリによる毒死だった
その後の警察の調べで、四百近くあった和菓子のなかで、青酸カリが検出されたものはなかったという
つまりは、眉子が口にしたものだけに毒が入っていたのだ
眉子を狙った犯行なのか?
それとも無差別殺人か?
眉子の派手な振る舞いが災いしてか、花鳥亭社長である沢田春彦との夫婦関係は冷え切っていた
一緒に茶会に参加していた春彦には動機もあるし、チャンスもあったが、和菓子に毒を仕掛けることは不可能
捜査は行き詰ってしまう

そんななか、新たな事件が起きた
菊川良成が、自宅近くの路上で服毒死体で発見されたのだ
しかも驚くことに、菊川は三日前に誘拐され、五千万円を要求されていたのだという

茶会の事件、そして今回の誘拐殺人は関係しているのだろうか?
店の信用が失墜し、さらには父親までも失い、落ち込む千秋を励ます意味でも事件究明に乗り出すキャサリン
その意外な真相とは…



~感想~
荒削りな作品で、強引な展開が気になる
親と子のすれ違いが生んでしまった悲劇
お互いが目を逸らすことなく、しっかりと話し合っていたら、このような事態を招くことはなかったのではないだろうか
その穴埋めをするかのような短絡的な考えは、あまりにも滑稽だが哀しすぎた

と言うことで、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品・1◆
昭和61年11月17日放送
山村美紗サスペンス
『京菓子殺人事件』
出演/狩矢警部…松方弘樹/和由布子/長門裕之/広岡瞬 ほか



◆この原作のドラマ化作品・2◆
平成21年5月2日放送
土曜ワイド劇場
山村美紗サスペンス
『京都お茶会殺人事件・毒の茶碗が瞬間移動!?華やかなセレブを狙う家元夫人の指先!・祗園祭に燃える女の殺意』
出演/狩矢和美…藤谷美紀/狩矢警部…田村亮/夏目利彦…原田龍二/菊川千秋…遠藤久美子/二条楓…前田愛/二条正臣…清水紘治/狩矢澄江…中野良子/山野美野里…山村紅葉/菊川良成…不破万作/中山清志…渋谷天外/二条涼子…大竹一重/本郷祐介…筒井巧 ほか


…ドラマの内容
早朝の嵐山の取材をしていた狩矢和美と恋人で新聞記者の夏目利彦は、法輪寺を訪れた際、石段の下で死亡している男性の遺体を発見する
死亡していたのは、老舗和菓子屋「菊寿庵」の跡取り息子・菊川春樹
事件現場には争ったような跡もなく、死亡推定時刻とされる昨夜は雨が激しく降っていたこともあり、春樹は雨で滑って石段から転落したものと見て、事故死と断定された
春樹の突然の死に、妹の千秋、春樹の恋人の二条楓は深い悲しみに包まれる

それから三ヵ月後…
和美は、事件を通して知り合った、千秋と楓に誘われて、茶道の二条流のお茶会を取材することとなった
楓は二条流家元の一人娘なのである
そのお茶会で、家元夫人の涼子が抹茶を口にした瞬間、苦しみだして絶命してしまう
実は、涼子は抹茶を飲む前に、自分が座っている座布団に虫がいたことを嫌い、隣に座っていた家元の二条正臣と席を替わっていた
と言う事は、犯人は家元を殺すつもりだったのだろうか?
後妻として迎えられた涼子は我が儘で派手な性格だったゆえに、先妻の子である楓とは不仲で、和菓子屋「本郷堂」の店主である本郷祐介と不倫の関係にあるという噂もあり、入り乱れた人間関係に事件は複雑な様相を呈する

そんななか、菊寿庵の店主である菊川良成が突然姿を消してしまい、娘の千秋のもとに『父親を誘拐した』という電話が入る
犯人の要求は二条流家元の正臣に、身代金である2000万円を用意させることだった
初めは渋る正臣だったが、どういうわけか犯人と直接電話を交わすと、顔色を変えて要求を呑んだ

今回の菊寿庵店主の誘拐は、春樹の転落死、家元夫人の毒死に関係するのだろうか?
なんとか犯人を捕まえるべく、躍起になる京都府警
犯人の指示通りに身代金を持ち運ぶ正臣の車を尾行する警察だったが、途中で見失ってしまう
そんななか、狩矢警部に一報が入る
それは、菊川良成の遺体が河原で発見されたというものだった…


…ドラマの感想
原作の骨格は残しつつ、大胆なアレンジを加えている
荒削りではあるものの、原作の良さを残しつつ、うまく脚色されていたと思う



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