カザクモのことば

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カザクモ

カザクモ

2005年12月06日
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カテゴリ: 自由人
ある日の出来事.....

その日のカザクモは、一人淋しく誕生日を迎えようとしていました。
毎年毎年誕生日になると、カザクモはほんとうの親父とおっかぁを想い出しました。

「おっかぁ、親父、元気にしとるかぁ?

 おいらは元気にやっとるよ。

 おいら、馬鹿正直で不器用だからさぁ~、

 やっぱ、ひとりぼっちなんだよね。

 でもね、どっか遠くからおっかぁと親父が

 おいらの幸せを願ってくれてると思えるんだ。



 おいらもず~っと、おっかぁと親父の健康と幸せを

 願ってるからね。」

カザクモは小さな頃から不思議がられる少年でした。
だから、まともに彼の話を受け止めてくれる友達は一人もいませんでした。
そんなカザクモは誰にも言えなかった秘密を今も胸の内に隠したまま。

”いつか、いつか話せる時が来るさ”

そんな風にして日々を過ごしていました。


午後11時、カザクモは夢を見ました。

「カザクモ、カザクモや。」

「ん...だ、誰?」

「おっかぁだよ。あんたのおっかぁだよ。」



「うん.....御免ね。ほんとに今まで御免ね。」

おっかぁは大粒の涙を流して、おいらの胸元に顔を下ろしました。

「おっかぁ?おっかぁなんだね?!」

おっかぁはただただ泣きながら頷くばかりです。

「今までどこに行ってたの?!」



「おっかぁ!会いたかったんだよ!!」

カザクモの瞳から溢れ出る大粒の涙。
おっかぁは手の平でそれを受け止めました。

「おっかぁの手.....冷たいよ。」

「外が寒かったから。」

「でも.....あったかいよ。うん、あったかいよ。」

「カザクモ、立派に育ったね。

 おっかぁはいっときたりとも、

 あんたのこと、忘れやしなかったよ。

 今まで会えなくて、ほんと御免ね。

 どうしても会えない事情があって.....」

「何なの?何なの、それは?!」

「それは.....言えないの。」

「言えないって.....何で言えないの!

 おらたちゃ家族だよ?!

 何で言えないの?!!」

カザクモは泣きじゃくりました。
そんなカザクモをおっかぁは優しく、ありったけの愛情で
抱きしめました。

「カザクモや、あんたはひとりぼっちじゃないよ。

 父さんもおっかぁもずーっと遠い空から

 あんたのこと見守ってたんだよ。

 あんたは一人でほんとよく頑張ったよ。

 もう大丈夫。

 これからきっと一生涯付き合える素晴らしい友達が

 現れるよ。

 お互いに分かり合えるよき伴侶も現れるよ。

 あんたをあんたのしかるべき道へと導いてくれる

 先生方々も現れるよ。

 あんたはひとりぼっちじゃないのよ。」

カザクモは叫びました。

「そんなの嘘だよ!

 だって人を騙したり偽ってるわけじゃないのに、

 みんなおいらのことを人でなしや狼少年だと

 馬鹿にするんだよ!」

「それはね、あんたは人と違って少しだけ言葉の力が強いのよ。

 あんたが平気だと思っても、みんなには窮屈で息苦しい

 ときだってあるのよ。

 だからね、これからは相手の事を想ってね、

 言葉を口にしようね。

 言いたい事をただ言うだけじゃなく、

 相手の話を聞いて、相手が優しくなれるよな、

 そんな言葉を口にしようね。

 出来ない事なんて一つもないよ。

 カザクモは素晴らしい立派なうたうたいになれるから...

 おっかぁの言葉を信じて、ふてくされることなく、

 一所懸命努力し続けなさい。

 おっかぁはずっとずっとあんたのことを見守ってるからね。

だから.....」

「えっ、どっか行っちゃうの?!」

「.....御免ね。

 もう.....時間なの。」

「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だぁーーーっ!!!」

「コラッ、カザクモ!みっともない!

 あんたはたくましい男の子なのよ!

 めそめそしない。

 あんたがほんとにほんとに辛くて苦しいときは、

 空を見上げてごらん。

 そこにはいつだっておっかぁがいるから。

 大丈夫...うん、大丈夫。

 私の誇らしい息子よ。

 世のため人のため、強くたくましく活きなさい。

 ほんと心からありがとね。

 あなたに巡り会えて、心からありがとう。」

「おっ、おっかぁ!おっかぁーーーっ!!!!!」

カザクモは目を開け、布団から飛び上がり、部屋中を走り回りました。

「おっかぁどこ?どこ行った?!!!」

カザクモは少しすると、それが夢だということに気付きました。

「夢か.....いや、夢じゃない!

 おっかぁの手のぬくもりがまだ残ってるもん!」

カザクモは辺りを見回しました。
そして、布団に残るおっかぁの涙の跡を見つけました。

「おっかぁ.....やっぱり会いに来てくれたんだね。

 .......ありがとう.....ありがとう。

 おいら、強くたくましく活きるから。」


カザクモは、一生涯この日の事を忘れたりはしないだろう。
もう淋しいことなんてない。
ひとりぼっちだなんて思わない。

カザクモの表情は、まるで聖母の微笑みのように穏やかで優しかったのです。





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最終更新日  2005年12月06日 18時34分10秒
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