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もう9月だというのに日差しは遠慮なく地面を照りつける。アスファルトは熱気を帯びて遥かな先に蜃気楼を作っていた。そんな・・・残暑のつらい夏の午后だった。俺はいつも通学路の途中で視線を止めていた。仲間達はいつもの事と俺を無視してくれている。Kもその友人の一人だった。彼は、いつも俺を心配そうに見つめていた。時間にしてそろそろ、俺の視線の先に彼女が現れる時刻。そして・・・20mも離れた十字路の手前、古びた家から彼女は現れる。まっ白な…つばの大きな日陰帽子と右手には白いステッキを持ち。いつも迎えにくるバスの停留所に歩いてくる。その停留所は目の不自由な人々が5人ほど並び佇んでいた。盲学校に送迎車両の様だ。俺は彼女に恋をしてしまった。初恋だった・・・。ある夏の夕方・・・俺は彼女が帰ってくる時間を心待ち待っている。30分ほどして送迎バスが止まった。何人かの生徒が降りて最後に彼女の姿をとらえた。俺は、腹を決めて告白する事にした。「すいません・・・」「はい?」「俺、この先の高校に通っている浜田と言います」「はい?」「なにか?」彼女は明らかに不信がっている・・・「突然ごめんなさい・・・」俺もかなり緊張している。「本当に…えっと…なんだ…いや、ごめんなさい・・・」彼女は、俺の言葉から察してくれたみたいだ。「はい、落ち着いてください・・・・何か私に御用ですか?」彼女の驚くほどの落ち着きさに、いささか俺も冷静になれた。「良かったら・・・俺と付き合ってください・・・」「貴方を初めて見た時から好きになりました」俺は初めての告白…そして彼女の涼しげな眼差しに目を背け、早口で告白をしてしまった。「あっ、・・・はいありがとうございます」「でも、私は目がよく見えないんです」彼女は少し俯きながらはにかみ・・・「ありがとう・・・お友達からでいいですか?」俺は、初めて真っすぐに彼女を見つめる事ができた。「はい、お友達からで・・・ありがとう」「俺、浜田と言います」「私は、福原さとみ・・・」「よろしくね」その時には送迎バスもなく…彼女の友人達もいなくなっていた。「向かいの方は来るの?」俺は尋ねた。彼女は視線を落とし。「今日は…向かいは在りません。・・・一人で帰ります」「家まで送ろうか?」「いえ、大丈夫です。さようなら」彼女は一礼をして・・・逃げ水の漂うアスファルトの道を小さくなって消えていった。「告白したのか?」奴が聞いて来た・・・「ああ、話したよ・・・綺麗な人だったよ」彼は視線を避けながら俺につぶやいた。「深入りするなよ、後が辛くなる・・・」俺は、まだその時には奴の優しさには気づく事はできなかった。毎日、通学時に微笑む彼女・・・夏の夕暮れのたわいもない会話・・・彼女はよく笑い、その笑顔に俺は夢中になっていく。…初恋。「浜田さん・・・いつもいらっしゃるお友達は・・・?」「気を気かしているのかな・・・」「今日は、いっしょではありません」「浜田さん・・・私の事どう思っているのですか?」「俺は、貴方の事を真剣に考えています」「本当に・・・私を・・・良いのですか?」真剣な彼女の瞳を私は、裏切る事は出来ない・・・「はい・・・貴方と何処までも・・・」彼女は、うつむきながら…。「ありがとう・・・」「私も、貴方の事忘れません」「決して・・・一生・・・私に死が訪れようとも・・・」彼女は、その瞳からいくつもの涙を流していた。そして、その日から二人の歩みが始まり・・・俺たちは下校時の短い時間の中で、互いを理解する事があたりまえになっていった。数日が過ぎ…いつもの停車場には彼女の姿が見えない・・・2日・・・3日・・・4日・・・5日過ぎても彼女の姿は見えない。俺は毎朝夕、彼女の姿を探していた。そして一週間が過ぎる頃、友人のKが俺の所に訪れた。「彼女・・・待っているのか?」「ああ・・・」彼は、ため息をついて。「もう答えを出さなくては…でなければお前も連れて行かれる」「よく見ろ・・・彼女の姿を」一週間ぶりだろうか彼女の乗るいつものバスが、その場所に止まっていた。そして、いつもの通り彼女は最後に降りて来た。俺の、見た彼女の姿は・・・・透き通っていた・・・共にバスから降りる友人たちの体に重なり透けていた。透けて・・・誰にも相手もされず立ちすくんでいる・・・俺はたまらず彼女のもとに走っていた。ハアハアハア・・・少し息があがっていた。「こんばんは、福原さん」「はい、こんばんは・・・・浜田さん」彼女は、いままでにないほどの笑顔を俺に注いでくれている。俺は、あまりにも優しく満面のその笑顔にふれ…涙があふれてしまう。。「楽しかったです…短い間でしたけど・・・ありがとう・・・私を見つけてくれて・・・ 貴方が私を見つけてくれなかったら・・・私は永遠に孤独だったでしょう。だから本当に嬉しい、本当にありがとう」「私は、短い人生だったけと・・・とても満足。貴方に会えたからとっても満足です」俺は、うつむき涙が止まらず震えていた。「貴方は、この世の人ではなかったんだ…?」彼女の瞳からも・・・「はい・・・私はもうこの世の者では…貴方からみたら異人です」「俺は・・・君が何者であろうとかまわない・・・・彼女の指が俺の唇を触れ…言葉を遮った。「もう私の姿も見た通り・・・終わりが訪れたのです」「けして、この世界には永遠は無いのです」「だから・・・ありがとう…さようなら」「また、いつの日にか…」彼女の姿が薄くなっていく・・・そして・・・満面のその笑顔が・・・きえた・・・俺は、号泣してしまいその場に泣き崩れてしまった。奴は、俺が泣き止むまで黙っていてくれた。俺の異人との初恋は終わった。見上げれば高き空から遠雷が聞こえて来た夏の夕暮れの事だった・・・。
2011.02.27
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・・・私は疲れていた。連日の残業で…日々の軋轢にも。・・・つかれ果てていた。そして不意に訪れた悲しみにも・・・。風は疲れた体には心地よい。TVからは高校野球のアナウンスが聞こえてくる。私の意識は…まだ明確ではない。そして窓の外からは、蝉の声…雲の流れ…日差しの方跡。 今は、とても心地よく疲れた体を癒し始めた。時間は過ぎていく、まるで私を無視した子供のように。自由奔放に…本能のまま。 どれほどの時が過ぎたのであろう。その声は虚ろとしている私の耳元に…とても懐かしく響いたのである。「お父さん! も~ いつも寝ているんだから」「ほっといてあげなさい」「だってさ・・・」「お父さん、疲れているのよ」「は~い」 とても心地よい会話である。とても懐かしく、心のひだに染み込んでいく。「は~い。 お母さん」「おかしいわね。 あなたは」「なんで~」 その声は笑い声と変わっていく。 私は虚ろいながらも、その声を。声の主を。疲れ果てていた、記憶を遡らせていく。私は、喉の乾きを覚え、ふと目をさまし、ゆっくりと体を起こし階段を下りていく。そして、冷蔵庫を開け、とても冷えた水を飲み干した。「あっ 飲んじやった…ごめん」私の声は広々した部屋にこだましていく。その水は、娘のペットボトルの水である。 ・・・その声は、唯、空しく響いていた。窓の外には8月の日差しが輝いている。 乱反射しながら、その光は交差して私の目の前のその椅子に届いている。その椅子は彼女たちの指定席でもある。彼女たちは、その椅子から、いつでも穏やかな視線を注いでくれていた。時は止まった。しかし夏の日差しを遮るように蝉の泣き声は甲高く耳に届いている。私の記憶は遡っていく。あの心穏やかな日々に・・・遡っていく。 懐かしい心穏やかな日々。すべてが、まっすぐに。未来はそこに存在していた。「おとうさ~ん 先いってるよ~」「あなた、待っているわね。 あまりいそがないでね」私の耳には・・・そう聞こえた。空耳ではなく、今、そう聞こえたのである。私は振り返っていた。8月の日差しが捧ぐ・・・その椅子に。一筋の涙が頬を伝う。 「ありがとう」私は一人つぶやいている。そして一人だった。 それは、8月の昼下がりの出来事であった。
2011.02.23
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・・・1977 冬・・・「私・・・いいの?」「いっしょにいていいの?」「しょうがねーーじゃん。天国からお呼びないし、浮遊霊っても同級生としても・・・なんかな?」「同情じゃねーーーよ」「ただ、なんかなーーー」「ありがとう、わたしうれしい」「ありがとう」あの夏の日々がなつかしく二人を向かい入れた。「あの日さ、私・・・ずっと待っていたんだよね」「いつまでも帰ってこなくて・・・」「でもね、いつまでも私・・・待っていた」「待っていたんだよ!」冬の日は彼女を鮮やかにしていく。夏の鮮やかさ以上に鮮やかに。「かえる事件・・・覚えている?」「私、蛙・・・だっ嫌いなの」「でもね・・・あなたのあの笑顔みてしまったら蛙もいいかなって」「私、バカだね」「でもね・・・私、蛙嫌いだからね、二度と嫌だよ」さとみの笑顔が輝いている。「おばさん、私にすごいやさしかった」「いつも、いつも部屋で待たしてくれて」「お茶入れてくれたり、話し相手になってくれて・・・笑顔で私を向かい入れてくれたわ」「本当に、本当の娘になれていたら」「わかっているよ、おふくろも喜んでいたから」「さとみちゃんはかわいいって、いつも言っていたよ」「本当の娘みたいだって」さとみの頬を流れるもの…。「あっ・・・おばさん帰って来たよ」「おばさん・・・いつも笑顔がやさしいね」「わたし、感謝しなくちゃね」「おばさんに・・・」・・・「とっても温かい」「わたしね、良かったと思う」「こんな形でも、あなたと出会えて」「私、よかった・・・後悔はしていない」「私、生きていくよ・・・あなたの中で」最後の微笑みのなかに響いていく・・・悲鳴の様なさけび声が。遠く、無限に、日々は流れ微かに未来の希望をなげかけて来た。「さとみ・・・海にいくか?」「うん」俺たちは彷徨っている。あの夏の日の海岸の様に。二人は滑る様に降りていく。波の轍の中、光は混ざりあい足元に流れ着く。二人の前に・・・広がっていく。彼方に・・・光の波が。「温かい・・・貴方はいつもあったたかった」「わたしを温めてくれた」「いつも…いつも・・・私は温かったよ」「ありがとう」「本当に…ありがとう」いくつもの時の流れの中、私たちは出会い・愛し・傷つけ・別れ、無量の後悔と嘆き…まっしろな溜め息が。でも存在していた。いくつもに別れていく枝葉の様な未来の中に・・・たったひとつのすすむべき未来が。私は、これでもかってほどの笑顔で彼の所に駆け寄っていく。そして彼は受け止めてくれた。満面の笑みで。・・・夕暮れの満天の空にひろがっていく・・・光と闇の存在。境界はとても曖昧で、俺たちはその美しさについ油断してしまう。彼方には、さきほどまで二人をむかい入れていた世界が遠く彼方に去っていく。そして…その世界の180度。二人の背後から、夜が闇が息をひそめやってくる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1977 久遠の彼方から・・・僕たちはいくつ、この出会いと別れを繰り返していくのだろう。久遠の彼方から果てしない未来への流れの中で。「何か意味があるのか?」「うん…あるんだよ。私たちのいのち・かかわり・苦しみ、悲しみ・・・死んでいっても、すべて…すべてに意味があるんだよ」「だから、私はこうして今・・・あなたの目の前にいる」「私たちは…ずっと昔からいっしょだった」「信じていた、記憶の片隅以上の久遠の昔から・・・」「私ね、死んで気づくことができたよ」「すべてがね」さいごに、あなたのさしだしたもの。「時に私たちは色々なかたちで、愛し合い・慈しみ合い・もとめあい、憎しみ、傷つき、そして互いに導きあい・・・」「ずっとずっと・・・」「これからも、ずっとずっと」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「ずっと・・・」「あなたも本当は気づいていたのでしょ?」「今までの事、そしてこれからこと・・・ずっと先のことも」「ずっとずっと・・・これからのこと」それは、とてもきれいすぎてまっすぐすぎて。「わたし・・・かたちをかえて、時をこえて・・・そばにいる」こらえることができずに。「あなたの中でいきていく」なみだがあふれた。瞬間、俺はさとみの気配を感じれなくなった。でも生きていた。・・・生きている。感じられる…今をいきる俺の中で・・・。そしてあのなつかしい声が蘇る。「ずっと・・・」「ずっとずっと・・・」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・・?約束の地はとてもやさしく・・・無限に広がり・・・すべてをむかい入れていく。曖昧な生と確実な死…愛という名のもとに。さとみさんは急性心不全で亡くなりました。唯、その魂の記憶は愛情は永遠に消えることは無かったのです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そして省吾さんは、里実さんが亡くなる四ヶ月前・・・普段と変わりもしない初夏の通学路で交通事故で亡くなったのです。・・・省吾さんの魂は昇華する事を拒み、さまよい続けていました。・・・さとみさんは亡くなるまでの数ヶ月、省吾さんへの思いを断ち切れず衰弱して…死を向かい入れました。そして・・・二人の魂は、本来たどり着くべき地…天国に向かう事を拒絶して、現世での想いを…最後まで遂げようとしたのです。それが何を意味するのか私にはわかりません。かぎりある生を、終わりある生を・・・死を。・・人は・・・・・何故?・・・私の……今回の仕事は終わりました。間もなく二人の魂を空高く導く事になります。・・・私の名前は死を司るもの・・・・・・絶対的な死を導くもの・・・・・・私の名は他化自在天…かたちあるものは第六天の魔王と呼ぶ。純粋であれ。限りなく魂たちよ純粋であれ。そして、すべての苦難の果てにたどり着け・・・願わくば光のもとに。 久遠記 留魂録no31031・・・
2011.02.19
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・・・今。2011・四大陸フィギュアを見ながら綴っています。・・・なんで・・・おんなは・・・こんなに美しいのか。美しすぎる、形も・・・線も・・・すべてが!!!!そして俺を惑わす。だから感謝します。この世界のすべての女性にこゝろより感謝。
2011.02.19
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昨年10月亡くなった少女の死の原因を解き明かす?公判が始まった。その日の午後6時からニュースは、群馬県教育委員会とその眷属の群馬県桐生市教育委員会とその代理人様の言葉を伝えた。それは、「いじめにも、被害の大小があるのでそれに対応した賠償を法の下に検討・対応しなくてはいけない」と言う本音を、「自殺の要因は様々」と13の発音で表した。 子供をいじめる子供のこゝろに存在する闇に、大小も法の下の裁きもあるのだろうか?法の下に平等の大人は、その闇に裁きを下せるのだろうか?本当は彼女がいじめで自殺をしてしまったと判っていても。本当は、みんな判っているくせに。判らないふりをしてひとつの判例を作ってしまう。判っているのは子供たちだけ。歴史は繰り返す。追伸。アフリカに住む友人にこの話をしたところ。「Bullied children are presentHowever, children are indifferent to others I struggle to liveIt is insidious not in」直訳すると、「いじめはあるよ、でも、子供たちは生きるのに必死で陰湿ないじめはないよ」との事。この国の子供たちは・・・?聞かせてください。群馬県教育委員会とその眷属の群馬県桐生市教育委員会とその代理人様
2011.02.19
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・・・1977 冬・・・「はぁ はぁ はぁ はぁ・・・・」「さとみさーーーお前幽霊なんだろ、なんで重いの?」相変わらず俺のチャリの後ろに、あいつは横座りしている。2学期の終了式も目前と迫っているのに・・・「さとみさぁーーーーー学校冬休みなったらどうするのーーー?」「天国からお呼びは来ないのか?」「わかんないよ・・・まだ返事はないよ」「しょうがないから、そこらへんで浮遊しているよ」「それこそ浮遊霊ってか・・・おかし・・・」「馬鹿ーーーーーーーーーーーー」「やさしくないよ・・・おまえは・・・」「ごめん・・・言い過ぎた。」微かにその涙の存在を。「だったら、俺の家来いよ・・・」「えっ・・・」「いいの・・・?」「本当にいいの・・・」この日から、さとみは俺の部屋の同居人となった。・・・俺にしか見えない同居人だ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「よし、いいぞ・・・静かにな」「誰もいないぞ・・・玄関も大丈夫だ・・・」「さとみ、こっちだ足音だすなよ」「あのさ・・・私幽霊なんだよ・・・」「私、飛んで二階の窓から入れるよ」「馬鹿、そんなお前を見たらバァちゃんが卒倒しちまうよ」「いくつだと思ってるんだよ、明治生まれだぞ・・・引導渡す気か?」彼は足音を意識しながら階段を上っていく、私は滑る様に上っていく。「しずかにな、足音立てるなよ」私は、足音を立てない。そしてわたしの記憶は甦っていく・・・真っ暗な廊下の先…あの日のあたる場所が。なつかしい日々の記憶が甦る。「省吾ーーー早く起きなさいーーー」「いつまでも、本当にーーー寝ているの!」「学校、遅れるわよ!」「やっべーーー」「また、さとみに怒られる」「おはようございますーーー」「さとみちゃんーーーうちの馬鹿まだ用意できてないと思う」「毎朝、毎朝・・・ごめんね」「はい、いつもの事ですから」二人の笑い声が響いている。・・・いつもの朝の風景だ。そして、至福の時だった。・・・・・初夏の夕方。「おばさん、こんばんわ」「あーー帰りかい?」「うちのは、まだ帰っていないよ」「はい」「部屋で、待っていてもいいですか?」彼の部屋は狭い階段をあがった西日のあたる奥にあった。窓からは日暮蝉の鳴き声がこれでもかってほどに響いてくる。その部屋のたったひとつの。この風景が彼が日々見つめている世界なのだ。そう思うと・・・とても愛おしくなっていく。まっすぐに時はながれていた。朝の静寂と夜のしじま・・・夏の後悔・・・そして冬のときめきも。すべての時の流れ・・・空間がひろがっている。私は探してきた、ずっと昔から。・・・この場所を、この陽のあたる場所を。・・・あの、なつかしい日々だ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「あのさ・・・私・・・一緒にいいの・・・」「私、死んでいるんだよ」「一緒にいていいの?」・・・「いいよ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「いいんだよ」彼の笑顔はやさしい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「さとみちゃん、待っているよ」「あっ、きてたんだ」階段をのぼる音が響いてきた、その瞬間・・・私は。戸惑っている。・・・思い出から抜け出す事が出来ず、たたずみ戸惑っている。「さとみ・・・?」「はい、おかえり」私は振りむき笑う。そして・・・。すべてがここから始まった。はるか彼方のあの日から。・・・1977 夏至・・・「さとみ」「さとみ・・・?、部屋にいるのか?」俺は探していた。あの日からずっと。「さとみ・・・?」いつも眩しいくらいの日差しが差し込んでいた空間。今は、光の存在もない。「さとみ・・・?」俺は、今ひとりだった。・・・1977 立秋・・・彼女は震えている。これでもかってほどに小さな体を俺に重ねてくる。俺は、なにも言葉にできない。「何故・・・人は死ぬの?」絶望を受入れることが出来ずに、泣き、叫び、そして君は微笑んだ。「何故?・・・何故なの・・・」貪欲なほどの彼女の生と愛。執着・・・俺は瞬間その醜さに目を逸らしていた。それが俺の最大の罪であり、業であり、後悔の始まりだった。そんな俺を救ってくれたものの存在…それが彼女のくったくのない笑顔。唯その笑顔が懐かしくて、やさしくて・・・俺はこの笑顔をいつの日から受入れて来たのだろう。俺は・・・いつからこの笑顔に導かれてきたのだろう?・・・1977 夏のおわり・・・二つの時の流れが・・・久遠の約束の中でふたたび巡りあいひとつになっていく。・・・1977 晩秋・・・そしてなつかしい記憶が、過ぎ去った日々を蘇らせ光のもとに導かれていく。「NO31031・・・さとみさん…ひとはそれでも生きなくてはいけないのです」「死ぬ事が業ではなく、生きる事が業なのです」「それに…気づくことが大切なのです・・・」じじいは目を逸らしつぶやいた。・・・1977 最後の冬へとつづく。
2011.02.19
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・・・1977年 夏・・・「さとみーーーじゃなぁーーー」今、彼は大きな声で叫んでいる。部活でクタクタの私に・・・大声で叫んでいる。「さとみーーー足もと見てみろよ」えっ?・・・えっ?・・・あしもと・・・?「きゃーーーーーーーーーーー」あたり四方に「いやーーーーーーーーーーー」私の体から力が抜けていく。私の足元・・・つぶれた蛙がひからびている。彼は、大声で笑っている。「馬鹿な奴ーーーーーーーー」「また、ひっかかってやがんのーーー」私は、いつも思ってしまう。・・・なんて憎たらしい同級生だと。「馬鹿ーーーーー」私は、大声で叫んでいる。いつもの風景の一部・・・私は蛙がだっ嫌い・・・今回は許せない。揺れるカバンを抱えながら奴に走り出す。「馬鹿は、おまえだーーー」日暮蝉がこれでもかって・・・鳴いている。そんな夏の日暮れの事だった。すべての事が自然に輝き流れ生きていた。・・・そして季節はすぎていった。そして、夏の終わりに私は死んだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに・・・・・・・・・・・・なに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに・・・・・・・・・・・・「私は死んだの・・・?」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「わたしは・・・」「死んだのです。貴方は」「・・・心不全です」「みずから貴方が選んだ結果なのです」「若いのに、惜しい事をしました」黒いスーツを着たじじいは、手帳になにかしら書きながらつぶやいていた。「でも、もうすぐ呼ばれますので・・・お待ちください」えーーーNO31031NO31031・・・いらっしゃいませんかーーー?NO31031さんーーーいらっしゃいませんかーーーいらっしゃなければ、・・・次の方になりますよーーーNO31031・・・えーーっと名前はと・・・NO31031、福原さとみさんーーーいらっしゃいませんかーーー?「はい」「はい、はい、はーーーーーい」・・・1977 初秋・・・「福原さん・・・大変申し訳ありませんが・・・いっぱいなのです」「いっばい・・・?・・・何が?」じじいはブツブツ言いながら手帳から視線を移しながらつぶやいた。「天国ですよ。天国は今いっぱいなのです」「予約待ちの状態なのです」「今の予約状態からですと、あと半年から一年は待つ事になりますが」「私、天国いけないの?・・・いついけるの?」「申し訳ありません。欲深い人たちで選考が遅れていまして」「言い訳ではありませんが、私たちも休日返上で働いていますので」「もうすこしお待ちください」「とりあえず、もとの世界に戻っていただけますか」しじいは私に視線を合わそうとはしない。「いまさら何?・・・納得出来ない!」「私、どうしたらいいの!」・・・1977 晩秋・・・・・・時間が僕らに別れを勧めている。「はっ、 はっ、 はっ、・・・・」毎朝のことなのだが、この登り坂はきつい。「おはよーーー」「おはーーーーー」「課題できた?」「昨日彼と・・・どうだった?・・・」いつもの朝となんら違いはない。友人達の笑顔…たわいもない会話…そしてさとみの笑顔・・・今は、その笑顔だけがない。いつも俺のチャリの後ろで微笑んでいた、さとみの重ささえ今は感じることさえ出来ない。いまは遠い昔の記憶の様に感じる。そして俺は、今日も授業中窓の外を見つめ、さとみを思い返していた。すべての事柄が自然に輝きながれる夏の日差し…遠い夏の日。捲られる季節の頁…いずれ冬は訪れる。「じゃな・・・明日・・・」「あの課題頼むな・・・」「たまには、自分でやりなよ」「いつも、私に・・・だよね」「わりぃーー」「今度、購買の焼きそパンおごるから」「焼きそばパン程度か・・・私は」「これが、最後だからねーーーー」「わりぃーーー」そう言いながら、はにかむ笑顔に何回騙されたか・・・「馬鹿ーーーーこれが最後だからねーーーーーー」さとみは焼きそばパンが好きだった。さとみと過ごしていた頃の日々が懐かしい。放課後の教室でいつまでも・・・あいつの机を見つめていた。外は薄暗くなり、窓からはいつもの冬が無関心な微笑みを漂わせて訪れてきた。「はぁ はぁ はぁ はぁ・・・・」「あれ、なんでこんなに重いんだ?」あたりは暗くなり下校する人の気配もない。「何だよ・・・チャリ壊れたか」「おも・・・」「はぁ はぁ はぁ はぁ・・・・」「なんで、こんなに重いんだよ・・」「はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ・・・・」一瞬、あの頃の記憶が蘇ってきた。あの頃の・・・・・・・・重さが。「重いんだよ・・・お前はーーーーーーー」俺は後ろに乗せていた重さを、彼女を思い返してしまった・・・そしてそれは…蘇る。「ごめん・・・」「ごめんね・・・重くて・・・」俺の背後から聞き慣れた声が聞こえて来た。「ごめんね・・・」俺のチャリの後ろから・・・いつかの懐かしい感覚が蘇ってきた。いつもの下校の風景。俺は下校の時、さとみをチャリの後ろに乗せていた。「ごめんね・・・」「私、帰って来ちゃった・・・」「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」振り返ると、そこには懐かしい笑顔があった。「ごめん・・・帰って来ちゃった・・・」「わたし・・・」「帰って来ちゃったよーーーーー」「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」俺は、唯つぶやいていた。「まじかよ」「まじだよ・・・・・」彼女は帰って来た・・・・すこし困り果て、はにかんだ笑顔とともに・・・・・・1977 冬につづく。
2011.02.15
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純粋であれ。限りなく魂たちよ純粋であれ。そして、すべての苦難の果てにたどり着け・・・願わくば光のもとに。 久遠記 留魂録no31031・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は・・・その涙の意味さえに気づく事は無かった。12月の寒い教室の片隅で・・・俺はぐしゃぐしゃの顔になり・・・あの頃の記憶をたぐり寄せていた。「何故・・・何故、人は死ぬの?」絶望を受入れることが出来ずに、泣き、叫び、そして君は微笑んだ。「何故?・・・何故なの・・・」私に向けられた突き刺すような視線の奥からは希望のかけらも見いだす事は出来ない。彼女は、その小さな体をいやってほどに私にかさね震えている。「何故?・・・何故なの・・・」その心を、恐怖を…まともに支えられない俺は逃げる様に、高く存在するものを見つめていた。・・・怒りとあきらめを折れてしまいそうな希望とともに。空には、光と闇が無造作に広がっている。冬の赤色と、微かに…夏の残り香のような青が混ざり合い。すべてを何もかも飲み込んでいく。俺の死も、あいつの後悔さえも・・・・・・・・・・・・・ここは?・・ここは何処なの・・?「えっ・・・ここは何処?・・・何処なの」私は、唖然としてしまいそして恐怖と絶望がしだいに足もとから忍び寄ってくる。体はこわばり、震えている。「だめ・・・だめ・・・負けたくない」瞬間、私は振り向きこの世界のすべてを向かい入れた。そして私の目に映ったもの・・・遥か彼方まで障害物は無い。・・・見渡す限りに。・・・・・・・・そして。この世界に生きとし生けるものの存在はなく・・・無明をあたり前のようにさえ受入れていく。そこには悲しみも、憎しみも、後悔も。そして、ひと欠片の希望さえも存在が許されていない。唯、彼方の一点だけに陽のあたる場所が・・・今の私に感じられるもの。唯それは、光とともに響いている音の存在だった。えーーーNO31031NO31031・・・いらっしゃいませんかーーー?NO31031さんーーーいらっしゃいませんかーーーいらっしゃなければ、・・・次の方になりますよーーーNO31031・・・えーーっと名前はと・・・NO31031、福原さとみさんーーーいらっしゃいませんかーーー?「はい・・・はーーーい・・・」「すいませんーーー私が福原さとみです!」「すいません、返事が遅くなりまして」「返事は早くしてくださいね、ここは大変混雑していますから」とても、つっけんどんな言い方。「えっ、混雑って・・・ここには、私しかいないじゃないですか!」あまりにも傲慢な言い方に、私は声を荒げてしまった。彼は一瞬私を見つめて、ばつが悪そうに目をそらし。「失礼しました、福原さとみさんですね?」「はい、私です・・・私が福原さとみです」「よかった、本当によかった・・・ここは、非常に混雑していますから」彼は振り向きざまに苦笑いで私に視線を注いだ。「それでは、さっそく今後の予定を」「えっとーーー最初の手続きの件ですが」「ちょ・ちょ・ちょっと待ってください、貴方は誰なのですか?」初めて彼と目が遭った。「誰って・・・?」「案内人ですよ」「あなたを、これから案内するものです」「私を案内するって?・・・何処にですか?」「どこにって・・・?」「それは、あなたしだいです、貴方しだいなんですよ」彼は、案内人・・・真っ黒なスーツを着ているおじさんだ。ネクタイは派手な花柄、年に合わない趣味の悪いじじいだ。「えっと・・・それでですね」「さとみさんね・・・今回のあなたのご希望の件ですが・・・」「本当に申し訳ありませんが、私どもにはお答えできそうにありません」「私達も色々と努力はしてみたのですが申し訳ないと言うしか・・・」彼は、私の視線を無視している。「申し訳ありませんが」「一度お帰りいただいてから、再度申し込んでいただければと」私は唯、唖然と。「帰るって・・・どこに?」「私、どこに帰るのですか?・・・?・・・何処に・・・?」「生きていた世界ですよ」ぶっきらぼうに。「あなたが生きていた世界ですよ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?「私、死んだの?・・・いつ?・・・なんで死んだの?」・・・1977年 夏につづく。
2011.02.13
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さ~~~~今日で本場所も千秋楽・・・突っ張りを得意とする大関 魁傑!!本日勝てば調子の悪かった今場所もな・ん・と・か8勝7敗で、なんとか勝ち越し!!!それでは、向こう正面の谷風さん今日の取り組みはどのようにお考えですか?「ごっちゃんです! 魁傑は~~今日勝てば~~8勝、勝ち越しですから~~~ごっちゃんです!!」解説のダグワドルジさんは、今日の取り組みはどのように予想しますか?「まっ今日勝てば8勝 勝ち越し! いいんじゃないの」「先場所も7勝の力士が勝つ確率は100%だったし!! 8人全員勝ち越ししたんだろ!!」「いいんじゃない!!」さ~~~今日の魁傑・・・すこし緊張気味ですね~~~勝ち越し出来るか、かなりプレッシャーは感じているみたいです。「ま~~いいんじゃない」呼吸が合わないみたいですね~~~何度も仕切り直しをしています。「ま~~~しょうがないんじゃない!!!」「ダワージャルガルには気の毒だな」「でも~~~~しょうがない!!!!!」さ~~~~制限時間いっぱいになりました。もう~~~あとがない!!! 放駒理事長!!!!!この状況を逃げ切り勝ち越しか・・・・もう・・・待ったなし!!!!!!!・・・・・・・・・土俵際で往生際悪し切り!
2011.02.09
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・・・歴史のなかでいくつもの分岐点がありました。 ひとつ間違えれば、多くの民衆が傷つき悲しみ犠牲になっていく・・・今から思うと、その分岐点次第では私たちの歴史も違っていたかもしれないな。 そう思ってしまう…そんな時代の分岐点に存在した英雄たち・・・ 拝啓…坂本龍馬殿……。貴方は誰なのですか…? その時代、徹底して憎み合っていた長州と薩摩を明治と言う新しい日本の立役者に導いて・・・ その時代の権力者である、徳川慶喜に新しい時代の扉を開けさせた…。 その時代は動乱の時。 世の方向性を唱える似非指導者は沢山いたはず。その中で、人間と人間の対話を最も必要として、それを成し遂げた貴方は・・・ 今 現在、この星の指導者に足りないものは、本人たちによる対話ではないでしょうか? 全て役人任せの指導者と呼ばれている人々。 龍馬殿。 貴方は時代の決定打を打ちながら暗殺という終焉を迎えました。 時代は役目の終わった貴方を、その意志とは別の選択を与えました。 でもそれは、ごく当たり前の事です。 貴方はこの地球だけでは役不足なのでは? それは…? もしかしたら貴方も望んだ事ですね。 私が住む地球・太陽系・銀河系…そして想像のおよばない大宇宙…。 その中に、あの時代と同じ過程を踏んでゆく絶え間なく生まれていく星たち。そこで貴方の新しい使命が待っているのですね? あの時代の日本のような動乱の時代が待っているのですね? どこか果てない宇宙のむこうにある…まだ見果てぬ無数の生命の星。 そして役目を果たした貴方は…新たな使命をおびて… なんてね。 考え過ぎかも。 今日は8月15日…この国の終戦記念日です。 あの時、愛する人を…家族を…大切に思いながら死んでいった人々に。 正義の名の下に犠牲になってしまった人々に…。最大の哀悼の意を込めて。 合掌。 2004/8/15 楽天に書いた文に書き加えてmixiに掲載しました。 確かに…数百年あまりのこの短い時の流れの中に存在していました。 キング牧師・ガンジー・マザーテレサ・オスカー シンドラー・杉原千畝氏…たくさんの命を未来を決して見捨てなかった生命の働き。 何か…何処かで聞いた事があります。 この星に、人類に・・・ 致命的な破局が訪れようとする時。 過去に現れた全ての英雄たちが、違う人となり、形となり、負のエネルギーと対峙すると。 その時は…全ての負の人々も現れ、破局へ導こうとすると…。拝啓…龍馬殿。貴方はもう…うまれているのですか? この星のどこかに・・・?2004/8/15 加筆2006/9/19
2011.02.08
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この五日ほど、さとみはこなかった。そして十日ほどたち、その日が訪れた。その日さとみはいつにも無く無口だった。唯、ずっと窓の外を見つめている。刻は無造作に流れていった。そして私は問いただした。「お前、死んでるよな・・・」頭が痛い・・・・「・・・死んでるよな?」「えっ・・・」「何の話・・・」やっと聞き取れる小さな声で囁く様に。しかし彼女は窓の外を見つめ、私に背を向けている。冬の闇とその眷属がしだいに姿をあらわしてくる。「お前、死んでいるよなーーーーーーーーーーー」私の声が病室に響いた。「なに、馬鹿な事を・・・」彼女は、私に背を向けたまま・・・笑う。くすくすくす・・・その肩が震えて。「何、馬鹿な事を・・・」「私は今ここに存在しているじゃないですか。それとも貴方の幻?・・・」西日が差し込んでいた病室に、すこしづつ闇が訪れて来ている。どのくらい、刻が過ぎたのか・・・・「貴方、覚えているの・・・」「なんだよ」「なにをだよ!」「覚えているの・・・」「その体で・・・」くすくすくす・・・その体が震えて。すこしづつ闇が私たちを向かい入れていく・・・窓の外には、満天の空には魔の軍勢がしのびよって来た。「だから・・・覚えているの?」「その、右手で覚えているの・・・?」彼女は、闇深い窓の外を見続けている。「なんだよーーーー」「何、何の話だよーーー」くすくすくす・・・その体が震えて。くすくすくす・・・その体がふりかえる。「私・・・忘れないわ!」「決して・・・未来永劫・・・」「その右手が・・・私の首をしめる感覚・・・私忘れないわ・・・」「息ができずにもがき苦しみ、首の骨の軋む音・気道を通るピューピューって細い息・涙と鼻水で咳き込む感覚・・・やがて体の力が抜けて意識が薄れてそれでも首に絡む貴方の右腕の感覚・・・」「けして忘れない」「私の命が・・・静かにその時を迎えていくときも・・・貴方の右手は・・・」記憶が突然、津波の様に私の中に蘇っていく・・・・右手がしびれる。痛い・・・右手が痛い・・・そして蘇った・・・右手の感触が。あの時の。私は、彼女の首をしめて殺した。何故・・・それは何が理由だかは今では思い出せない・・・唯、彼女の細く白い首を私の右手でしめた・・・その記憶だけは鮮明に蘇って来た。「思い出したの?」くすくすくす・・・。彼女が振り向いた。その白く細い首に赤黒いシミが存在している。くすくすくす・・・・・・私の右手の記憶がそこに存在していた。無くした・・・忘れたかった右手の記憶。「ああ・・・思いだしたよ。悪かったな・・・・でも、お前があの男と・・・」俺は気づいていた、さとみがあの男と。でも信じていた。彼女の本来持つこゝろのはたらき…その美しさも。しかし、俺のこゝろはそれを裏切る。遠く、遠いあの日から。「うぁーーーーーーー」瞬間私は、右手で彼女の首をしめていた。私の無くした掌は、その首の赤黒いシミに導かれていた。私の右手に伝わってくる、さとみが首を絞められて苦しむ感覚、嘔吐・・・死を向かい入れる痙攣、ぐちゃぐちゃな体液・・・冷たい体温。「死ねーーーーーーー」俺の右手が震え、さとみの体も震えてくる。彼女の瞑った目から血の涙が流れ出す。ーーー病室に沈黙が走った。瞬間・・・カッと見開いたさとみの瞳、真っ赤な眼差し。「また・・・私を殺すの・・・?」くすくすくす・・・「何度、同じ事繰り返すの・・・?」くすくすくす・・・私は子供のように泣きじゃくり、彼女を抱きしめた。くすくすくす・・・さとみは笑っていた。私は泣いていた。彼女は折れたその細い首を懸命に支えている。そして、その眼差しが私に注ぐ。真っ赤な眼差し。「もう、終わった事よ・・・いいのよ・・・べつにいいのよ、私は死んだのだから」「でもね・・・貴方は生きてね・・・」「私という、痛みと共に・・・」「永遠に・・・」「さようなら・・・」一瞬、闇に包まれていた病室にまばゆいばかりの光と・・・彼女の香りが・・・そして窓の外には・・・・・・翌朝・・・「体温を計りますね」「食事はいかがですか」あいも変わらず、看護士は無造作に。「今日も平熱ですね、リハビリ頑張ってくださいね」そういいながら、立ち止まり・・・そして・・・私に問いかけた。「この、一輪挿し・・・いつ面会の方が来ていたの・・・」病室のドアを閉め彼女は消えていく・・・そう・・・私には誰一人面会は来なかった・・・・・・私の痛みと共に訪れた・・・彼女のほかには。・・・・・・・・くすくすくす。・・・幻肢(げんし、英: phantom limb)事故や病気が原因で手や足を失ったり、生まれながらにして持たない患者が、存在しない手足が依然そこに存在するかのように感じること。幻影肢(げんえいし)ともいう。
2011.02.06
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・・・いたい。いたい・・・・・・・・。痛い。 痛い。痛みが激痛が体中をはしる。少しづつ意識が・・・・痛み、その存在は感じられる・・・死んではないのか・・・記憶はさだかでない。曖昧だ。唯・・・痛みだけが、今の私というものの存在を証明してくれている。うっすらと、そして痛みと共に光りが目を通し意識がもどっていく。「先生ーーー患者さん意識を戻しましたーーー」「浜田さん、浜田さん、意識ありますかーーー」看護士は大きな声で私の名を繰り返している。「私が、見えますかーーー」「先生ーーー早くーーー」うっすらと、まっしろな瞳の向こうに人らしき姿が感じられてきた。と、同時に体中に痛みが蘇る。「うっ、痛い・・・うわーーー痛い・・・」私は、痛みに耐えられず・・・体が硬直していく。「先生ーー痛みがひどいみたいです。」「浜田さん、浜田さん、もう大丈夫ですよ。ここは病院ですよーーー」「どこが痛みますか?ーーー何処ですかーー」「う で・・・み ぎ うで」私は、声にならない声を。「う で で す。」「み ぎ うで」「はい、わかりましたよーーー」「今、痛み止め打ちますのでーーー」ここは、薬が効いてきたのだろう。 楽になった「浜田さん、痛みはいかがですか」「楽になりましたか?」私は、苦笑いでこたえる。「浜田さん、今日はこのまま楽にしていてくださいね」「何かあるようでしたらこのスイッチを、こちらの手に渡しておきますね」40代の医師は、何か覚悟したような顔をして私の視界から去っていく。病室に喧噪が響く・・・そして日がおちて、沈黙の夜は機械の音だけが響いている。そんな日々が何日が過ぎたある日・・・「浜田さん、痛みはいかがですか?」「だいぶ、楽になったでしょう?」確かに、あの日からくらべたら楽にはなった。「浜田さん、いくつか質問させてくださいね」「いいですか?」私の意識はまだ混濁としている。自分に何があったのか? まだ、思い出す事が出来ない。「浜田さん、今は何処が特に痛みを感じますか?」「右腕・・・が特に痛いです。それと、右脚の足首のあたり」医師は一瞬戸惑っている。彼の表情で感じとれた。「浜田さん・・・右足首ね複雑骨折しています。 全治2ヶ月は入院が必要です手術も含めてね」「そしてね、リハビリも1ヶ月は必要ですね・・・」沈黙が過ぎていく・・・「でね、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」一瞬言葉が恐怖を突きつける。 「先生ーーーーーーーーーーーー」ナースセンターから医師を呼ぶ叫び声が響いた。「浜田さん、また、あとで来ますので」医師の安堵する表情を私は見逃さなかった。それにしても、右腕の痛みだけはおさまる事がない。痛い。 痛すぎる。その夜も、右手の痛みで私は眠れない。私は、たまらず看護士を呼ぶスイッチを押す。「どうしましたか?」看護士は、無機質な笑顔で問いかける。「腕が・・・右腕が痛くて眠れません」「解りました、今痛み止め打ちますね」すこしづつ、意識を失い眠りについた。・・・浅い眠りに。病室に朝が来たみたいだ。私は、久しぶりに気分もよくみずから体を起こそうとした。ゆっくり体を起こしてベッドのパイプに右手を差し出した。瞬間私はベッドから落ち額を切ってしまった。瞬間、大きな叫び声を病室中に響かせていた。自らの右手の存在を知ってしまったから・・・・・「浜田さん、浜田さん、落ち着いてください」看護士が何人も私を囲い様々な言葉を発している・・・それは雑音でしかない。雑音は私を救ってはくれない。今の私は、叫び、泣き、何もまわりの音は感じられない。そして唯、私の肘からさきに意識できるものが無かった。「浜田さん、いかがですか?」「痛みは?」無造作な問い。看護士は日に何度か訪れる。私は個室に移されていた。こんな体を他の患者に見せるのも痛々しいと考えてくれたみたいだ。そして、私のこの精神状態を・・・孤独なこの空間で私は呆然と泣くしかない。10日ほど無意味な日々が過ぎていく。そしてある日。「浜田さん、面会ですよ」看護士が無機質に伝える。「誰ですか?」「さぁ~~~」看護士はまっ白な廊下へと・・・「どうぞ」ドアが開き、何故か私は衝撃を受けた。さとみが花を携え立っている。満面の笑顔で・・・・「どうした・・・? お前が来てくれるなんて・・・」私は少し戸惑っている。瞬間、目の前に。「なんで、私は、あなたの彼女でしょ・・・」「やっと、面会謝絶から解放されたのだから・・・」「すっとんで来たよ」「だけど・・・おまえ・・・」・・・空間に裂け目を作る。「ありがとう、うれしいよ」私は、夢でも見ている感覚に酔ってしまう。「良かったね、あんな酷い事故で生きていられて」「いきているだけで・・・」「ああ~~」「めっけものだよ、本当に」そうつぶやきながら、私に笑顔をむけてくれた。花を飾り、たわいない会話を時間が包んでいく。窓の外は夜の気配が密やかに近づいてくる。・・・至福の時は。「あっ、私帰らなくちゃ・・・」「そうか、今日はありがとうな」「うん」彼女は私の首に両手をまわして頬にくちづけをしてくれた。「また、明日来るね」そうつぶやくと、真っ白な廊下に彼女の姿は同化していく。私は、彼女の香りの余韻にひたっていた。すると、病室のドアが開き。「浜田さんごめんね・・・今日の面会、隣の病室の面会だったみたい」「本当に、ごめんなさいね」すこし私は戸惑ってしまった。「まあ、偶然だろ」「看護士さんも忙しいし」彼女の存在はこの空間にのこっているのだから・・・微かな香りと共に。その次の日から、さとみは毎日私の所に通ってくれた。たわいのない会話・・・笑顔、笑い声。私は少しづつだが生きていく希望がわいてきた。唯、窓の外には夜の気配が。彼女が面会に来るようになり2ヶ月が過ぎた。私は無くした右腕の悲しみにも慣れて来た・・・でも右腕のいたみは感じる・・・指先の感覚さえも。・・・なぜ。・・・その感覚は・・・? ・・・何・?リハビリは毎日続く・・・それは私に右腕が無くなったと痛烈に感じさせる。ある日、唐突に刑事が訪れた。二人の刑事である。「突然、申し訳ありません」「大変な事故とお聞きしました」若い刑事は事務的に言葉を続ける。「具合はいかかですか?」「記憶などの混乱は無いと主治医から聞いています」「突然申し訳ありませんがお聞きしたい事がありまして」さとみの写真をいきなり目の前に。「浜田さん、この方をご存知ですよね」「はい」頭が痛い・・・「貴方がお付き合いしている方ですね」「はい」頭が痛い・・・・・その刑事の視線が、私の苦痛を見逃さなかった。「彼女の両親から捜索願いが出ていまして・・・」「貴方、最後にいつお会いしました?」大きな声が、私の痛みを増幅させてくる。瞬間ある記憶が・・・混沌とした記憶が蘇ろうとしてきた。「すいません、刑事さん、具合が悪いのです」腕の、右腕の震えが止まらない。「今日は、遠慮してもらえますか」看護士が刑事に何かつぶやいている。私は、痛みに耐えられず気を失ってしまった。どのくらいの刻・・・意識を失っていたのか・・・「どう、具合は・・・」うっすらとした視覚の先にさとみが佇んでいた。私に背を向け窓の外を見つめている。「いや・・・刑事が来て・・・お前を捜しているぞ」「ご両親が捜索願いをだしたって」「何かの、間違いでしょ・・・私ここにいるじゃない」「最近、アパートに帰ってないから・・・」「私ね、この病院に近い友達の所に厄介になっているの」「貴方に・・・会う為に・・・」「そう・・・そうだったのか」くすくすくす・・・。さとみの聞き取れない様な笑い声が病室に響いた様に。そして私は、言葉を・・・自ら潰していた。彼女は私が目覚めると、いつもいる。そして面会時間が終わっても私に寄り添い言葉を交わしている。看護士は、彼女の存在無視している・・・いや、その存在が・・・・・ある日、主治医の先生が唐突に。「浜田さん・・・?」「右腕の痛み、まだ感じますか?」「はい」「そうですか」「浜田さんね」医師は視線を逸らして。「人間は、脳は、錯覚を起こす事があるそうです」「本来は無くしているのに、今はあると、存在していると・・・そう思う。思わざるおえない・・・無いのに在ると錯覚するしかない事が・・・」「無常な言い方ですが」「人は、無いものに対する覚悟は必要です」「すべて、かたちあるものはなくなるのです」「残酷な言い方ですが」「覚悟は必要です」医師はそう言い、白く長い廊下に同化していく。その日私はリハビリがおわり病室にもどった。間のなくして看護士が。「浜田さん・・・刑事さんが来ていますけど・・・いいですか?」「はい」「先日は失礼しました」「失踪した、さとみさんの事で色々私たちも捜索した結果ですが」「ふに落ちない事柄が様々在りまして」「さとみさん・・・事件に巻き込まれている可能性が在ります」「単なる失踪事件とは異なります」「失踪する前日までね・・・」「浜田さん、貴方と連絡を取り合っていた記録が在るんですよ」「貴方が、この病院に入院していた時期もです」「浜田さん・・・何かご記憶にありませんか?」「どんな小さな事でもいいんです、浜田さんいかがですか」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「浜田さん・・・貴方の住むアパートの隣人が・・・」「今月の初めまで、さとみさんが・・・」「・・・貴方の部屋に通う姿を見ていると・・・」「つい・・・一週間前のことですよ・・・」刑事の視線が冷たく問いただす。「そして、不可解なんですが・・・同時に同じ頃に、この病院の関係者達も見かけているんですよ・・・さとみさんを」「あなたが、この病院に緊急搬送されていた時と同じ頃です」「俺は、知らない・・・」「帰ってくれ・・・」病室に怒号が響いていた。看護士が。「浜田さん、ごめんなさいね」「でも・・・夜中眠れないかもしれないけど」「独り言や思い出し笑いはやめてね・・・」「みんな、気味がわるがったり怖がってるから」独り言・・・俺が・・・笑う?「俺が・・・夜中に?」「さとみ・・・」「まさか・・・」恐怖は増殖する。・・・つづく。
2011.02.06
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