Over The Moon.

Over The Moon.

2005年11月18日
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カテゴリ: *能関係の日記*
最近スーツを着てばっかりだなぁと思いながら
ちゃんと身支度をして、能楽堂へ。

さあ、自演会本番です。



着いたらまずは会場準備。
私は見所へ行って 雉ちゃん(仮名) とビデオを設置する。


同じ会とはいえ
全宝連 と何かが違うと、ずっと思ってた。
・・・それはやっぱり自演会だから。


何から何まで自分たちで準備し、お客さんを呼んで、
来た人に能を楽しんでもらう。
そんな要素が含まれているから
緊張より、やらなきゃ、っていう思いのほうが強い。


私「よし出来た。
   ・・・じゃあ着付けしよっか」

雉ちゃんがうなずいて、私たちは楽屋に戻る。



・・・とはいえまだ着付けがおぼつかない私。
宝生流で使う帯びの結び方、貝の口。
えーと、こうで、こうで・・・

猫さん(仮名) 「こっちを垂らして、これ中に入れて結ぶの」



猫さん「やってあげるね」

猫さんが帯を手に取り、ふわりと綺麗な貝の口に整える。
背中の部分をひっぱって、かんでる部分も綺麗にして
ついでに袴も着付けてもらう。
鏡の前の自分がどんどん仕上がっていく。


     もう春には私はいないんですから」


春には上回生の女性は私1人。
雉ちゃんの着付けも、春に入ってくる予定の1回生も着付けないといけない。
・・・出来るだろうか。
いや、やらないといけない。
春までには。



10時開場と共にお客さんを迎える。
午前中の私の出番は仕舞地のみ。
鴨くん(仮名) の『敦盛クセ』、猫さんの『三山』だ。

後ろから見ても、2人の仕舞は上手い。
袴をはくからいつもと雰囲気が違うし。
謡と型との合わせどころにきちっと合わせてくるから凄いなぁと思う。


そのあとビデオの仕事が入って、ビデオ撮りにまわる。
宝生の仕舞は 熊さん(仮名) の『兼平』と 寅くん(仮名) の『草紙洗』。

熊さんはもう言うことないですが・・・
寅くん。


寅くん「 ひーかあげえにーーみーゆーーる


!!

音 合 っ た !  (そこ!?)


だって 今までの経歴 からすると凄いことですよ!?
型より何より(おい)シテ謡いが合った、それだけで賞賛すべきことです。
・・・ビデオを撮りながらにやけてしまいました(笑)。



そうこうしてる間に午前の番組が終わり
いよいよ『箙』の出番が近づいてきた。
切戸へ行って待機する。

師匠「みんな頑張って。気合入れてね」

稽古を思い出して。
気合入れて。

熊さん「・・・
    あそうか、犬くんは向こうか」

シテの犬さんは1人、切戸とは反対側の幕の向こうにいる。
・・・今頃は緊張しているのだろうか。
もう里人に変身しているのだろうか。


『次は宝生流能・<箙>です』

放送が聞こえた。

眼鏡をはずすと辺りがぼんやりする。
それでも私たちは、いつものように顔を見合わせて

「「「よろしくお願いします」」」

切戸が開く。



『箙』は
梅にまつわる、勝修羅の物語。
僧(=ワキ)が生田川のほとりに差し掛かったところで
里人(=シテ@犬さん)が通りがかる・・・

「来る年の矢の生田川・・・」


前場はゆっくり時間が流れる。
僧と里人の問答があって
里人は箙の梅について、いわれを語る。

・・・思えばあんなに長い台詞を
全部覚えた犬さんは、凄い。

そうしてしばらくすると地の出番。

「名をとめし・・・」

お囃子方が刻むリズムに乗りながら
地謡全員で、地の部分を謡う。
曲の流れはスタンダードにクリ、サシ、クセの順番。
『箙』のクセは居グセと言って、
シテがずーっと真ん中に座ったままで、地謡だけがひたすら謡う形。
つまりは地謡の謡い方によって、つまらなくも面白くもなるわけだ。

でも、謡っている間は
なんだか私は無心だった。

地謡は舞台の景色の一部というけれど
それこそ、松か何かになったように
ただただ謡い続けていた。

謡っているのは私なのに
曲が私を引き込んでいる。
謡うことによって、曲に魂が吹きこめられて
ぐいぐいと先へ導いていく。


前シテがひっこんで
合狂言が入る。
・・・そのときに足のしびれを自覚。
でも、無視。


お囃子が鳴る。
魂を呼び出す儀式のように。

五色の幕がさっと上がって
出てきたのは、武将景末の幽霊。


舞台中央にやってきたその姿は
きらびやかな武将の姿だった。
カケリで回り返しをすると
箙に差した梅の枝が、一緒に弧を描く。

そのあまりの綺麗さに見ほれていると

「夢覚めて・・・」

と自分の口が謡って、
ぱっと景色が合戦から夜明けに変わり
景末が僧にいとまを申す。

「鳥は古巣に帰るなり」

しらしらと明けゆく空と共に

「よくよくといて(=弔って)」

景末は魂の浄化を願って

「たび給え」

消えていく・・・


かぁん


鼓の音と共に、全ての音が消え
『箙』の舞台は終了した。

一拍置いて、
会場には拍手が響いた。



・・・さーて退場せねば・・・。
左足を立てて、右のつま先を起こす。
あ、大丈夫そう。
よっ、と立ち上がって切戸に引っ込む。
後ろは大丈夫かと振り向いたとき

どたっ

「「!!」」

鴨 く ん !

猫さん「早く早く!」

切戸直前で鴨くんがこけて
中にひっぱる。


・・・色々つっこむのは後にして
師匠の下へ。

師匠「いやー、ほんとお疲れ様でした。
   良かったよー」

ふいー、と師匠も息をつく。

師匠「謡いも稽古のときより断然良かった。
   お囃子とずれることもなかったし。
    テンポもところどころ犬くんが速くなったのを、地が抑えたりして
    今まで稽古しなかった部分まで出来てたしね」

頭を下げる。

師匠「あと惜しむらくは退場かな。
    いや、鴨くんはいいとして」

え。

師匠「あのね、地はね
    お囃子方が帰るときに帰るんだ」

・・・

師匠「みんなお囃子方より先に帰っちゃった」

猫さん「・・・!
    すいません!!」

師匠「あはは。いやいいよ。
   あとは大丈夫だったから」


あーそうか、そうなのかー。
そういえばお囃子方まだいらしたな・・・。
うわー。気づかなかった。


そのあとシテ方楽屋に行って犬さんと会う。

「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様ー」

犬さんは凄くさっぱりした顔。

犬さん「いや皆さん、ほんとありがとうございました」


OBさん「はーい写真撮るからみんな並んでー」

4回生を中心にして固まる。

OBさん「犬くんこれ持って」

箙の梅を差し出される。
犬さんはそれを手に取る。

OBさん「はい笑顔でー
     はい」

写真を撮り終わる。
お互い顔を見合わせて
私たちは自然に手をついた。


「「「ありがとうございました」」」




師匠「午後からも頑張って。
   俺は明日のために東京戻っちゃうけど」

さあ、
会はまだ終わっちゃいません。
私の出番もまだこれから。


いくぞ 後半戦





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Last updated  2005年11月23日 13時04分26秒
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Re:自演会日記~前半戦~(11/18)  
やるまいぞ  さん
 いや~お疲れでした。目に浮かぶわ~。宝生は貝の口なのね。私らは一文字でやっちゃうから。後半楽しみ。
 こちらでは来月名古屋大学観世会の自演会があります。レベル高いよ~。あ、京大さんも客演あるわ。能は「巴」です~。やっぱ修羅物多いわ・・。 (2005年11月23日 13時21分56秒)

どうも~  
五月渡理  さん
そうです貝の口なんです。
流派によって違うのも、入って始めて知りました。
名古屋でも自演会あるんですね~。修羅物はやっぱり若者向けなので(笑)色んなところで出すみたいですね。
『巴』は難しいので凄いなぁと思いますよ。
(2005年11月23日 22時37分51秒)

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