Over The Moon.

Over The Moon.

2008年06月28日
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カテゴリ: *能関係の日記*
もともとは、3月末だったはずのこの会が
6月に延期になったのは
師匠のお母様が、ご病気になられたからだ。


師匠「母はきっと元気になるから。
   五月さんも、忙しい時期だとは思うけど
   30周年だし、出てくれると嬉しいんだが・・・」

私「そんな、私のほうこそよろしければ
  出させていただきたいと思います」


そして見事、お母様は元気になられ

名曲『隅田川』のシテも決まった。

この「郁雲会」には
お母様のお弟子さんたちを始め
師匠のお弟子さん、
うちのサークルの仲間たち、
玄人の方々も大勢集われて、
盛大な会になっている。


だから


OGさん「ほら五月さん、お客さんが沢山・・・」

私「ああちょっとそんなこと言われると余計に変な汗が」


天下の(?)宝生能楽堂、



出番前から変に緊張してしまって
なんか大変な感じなんですけど・・・。


OGさん「見所行って観てこようよ、
   舞囃子まで時間あるし」

私「そそそうですね、そうしましょう」


とりあえず見所へ。



「鷲の御山の名を残す・・・」

何人か、初舞台の方がおられた。
ああ~、観てるほうがどきどきする・・・


OGさん「あ、現役だ」

その後、うちの宝生会のメンバーの仕舞。
現役から始まり、OB・OGへと移る。

さすがというか、何というか。
普段から稽古できる身分なだけあって
皆手堅い。


しっかり舞ってる姿を観て
・・・なんかちょっとだけ
緊張ほぐれたかも。


OGさん「そろそろ行こうか」

私「ええ」

私と、このOGさんと
OBの熊さん(仮名)は
このあと舞囃子だ。



「「「よろしくお願いいたします」」」

切戸で手をついて
お囃子方と、地謡の方々に礼。


あーうそ
緊張ほぐれたなんてうそ(泣)


舞台の上は、なんでこんなにまぶしいんだ
なんでシテって1人なんだ
ああ、何度舞台を経験しても
緊張するのは変わりない・・・


・・・シテ謡の前に
一瞬だけ、一息ついて


あれこれ考えるのをやめる。


私は清経だ。


「さては仏神三宝も・・・」

シテ謡につづき
地謡の声。
お囃子の音色。

しばらく聞いて

「哀れなりし有様・・・」

正座から
膝を立て
立ち上がる。


私が『清経』の中で好きなところは
拍子がいくつもあって
そのすべてが、はっきりと意味合いが違うところだ。


「また船にとり乗りて」

ここの拍子は
船に乗る拍子。

「多声かと肝を消す」

ここの拍子は、肝を冷やす音、

「心にこめて思うよう」

ここは気持ちを変えたときの音。


そして、中でも好きなのが


「腰より横笛ぬき出だし」

扇を腰につけ、ぱっとはなして前に持ってくると
それは横笛になる。

「音もすみやかに」

両手で大切に持ち
拍子。

「吹き鳴らし」

笛の音。

「今様を歌い朗詠し・・・」


宝生能楽堂で鳴らす
拍子の音は
全国に散らばる能楽堂の中でも
もっとも優れた音色を響かせるという。


笛の音に聞こえただろうか。


正直

いまいちだったと思う(泣)。


ああ、もったいない。
でも拍子はまだまだある。


「南無阿弥陀仏弥陀如来」

念仏を唱える拍子がぶつぶつと続き

「迎えさせ給えと」

心を決めて
強い拍子を一発。


「船よりかっぱと」

船から水に落ち

「落ち潮の・・・」

ざぶん、という音をあらわす
拍子がひとつ。
(これは上手くいったかも)(←邪念)


「いふならく 奈落も同じうたかたの・・・」

そして、舞台上で平臥し
シテ謡。

あとはキリだ。


「さて 修羅道におちこちの」


『ここだけ清経はめちゃくちゃ強いつもりで』

師匠の声。

仲間うちでは
「へたれ」と言われる清経だけど、
キリばっかりは強いのだ。

「乱るる敵 打つは波」

敵にも果敢に戦う(ここでも拍子)。


あれだけ苦戦したキリだけど、
舞ってみれば割と
それなりに舞えたようにも思う。

なんて。


「仏果を得しこそありがたけれ・・・」



「キリ格好よかった~」「拍子がまだまだですね」

終わってみればあっけないもの。

色々言われながらも
終わってとりあえず、胸をなでおろす。

すぐ後にOGさんたちの舞囃子が控えていたので、
いそいそと見所へ。


・・・


例によって、例のごとく
普通に上手い、
『桜川』と『熊坂』の舞囃子。


ああ、
私はまだまだだなぁ~
もっと稽古したいなぁ~
もっともっと・・・




「あの折り詰め、いただいていいんでしょうか」

私「ええ、私も今いただくところです」


そしてメインイベント『隅田川』を前に
合間をぬって、楽屋で急いでお昼ご飯。

一緒にご飯を食べた方は
今日、初舞台を踏まれた方の1人だった。


「『清経』、拝見しました」

私「え、はあ、お恥ずかしい・・・」

「私・・・今まで、
 仕舞の何が格好いいとか、何が綺麗とか
 そういうのが分からなかったんです。
 分からないままに稽古してたんです」


私もそうだった。
何も分からないままに稽古をしていた。

その「面白さ」を教えてくださったのは
師匠や先輩方
一緒に稽古をした仲間たちだ。


「でも、『清経』を観て
 能って、こんなに格好良くなるんだって
 初めて分かりました」

・・・

「稽古したくなってきました。
 頑張りたくなりました」


・・・

うれしい。

私の、下手な舞でも
他の誰かに、
「能は面白い」「能って格好いい」って
思ってもらえる何かになったということだ。

私の稽古が、次につながる、
こんなにうれしいことはない。




お囃子の“お調べ”(お囃子方のチューニング)が聞こえる。

さあ
必見の

『隅田川』が始まる。


につづく)





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Last updated  2008年07月07日 23時23分31秒
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Re:郁雲会・上(06/28)  
思わず、息をつめて、一気に読んでしまいました。

そして…

「でも、『清経』を観て
 能って、こんなに格好良くなるんだって
 初めて分かりました」

拍手っ!!
良かったですね~
僕も思わずホッとしました。
自分のことのように嬉しくなりました。
(2008年07月06日 22時02分39秒)

コメントありがとうございます~  
五月渡理  さん
★スーパーぬまちゃんさん
 そう言っていただけると、私もまた嬉しいです(照)。
 やっぱり、自分のやってることが次につながるのは
 やりがいも感じますし、また頑張ろうっていう原動力にもつながります。
 また稽古しないとなぁ~

(2008年07月07日 23時22分18秒)

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