インディー(9)




彼女が、高校のときに作った作品とのことだった。


呪いのことばも
復讐の文字も、そこにはなかった。

今は、もう、こんな作品はできないとちぬるは言った。

ちぬるの願いは、詩集を出版することだった。

それが、復讐の行為そのものであると。


東京に住む詩人に200万をだまし取られたことがあると、ちぬるは話してくれた。


そいつへの復讐だと。


私はできる限りの協力をすると約束した。


それなら・・
と、ちぬる

金を送ってくれ
といきなり切り出された。


今は居酒屋で働いているが、生活が苦しい。
借金がかさんでいて車を手放さなければならない。

マンションも引っ越さないといけない。


あなたは、私の作品に心酔している。


だったら、金を送ってくれという、余りに飛躍した要求をちぬるは突きつけて来た。


私は


たしかに君の作品には惚れているが、自分も余裕があるわけではない。


金は送ることはできないが、物なら何か買って送ってやれると答えた。

それなら・・


詩集の原稿をまとめるためのワープロが欲しいから、送ってくれと返事が来た。


すぐさま、中古のワープロを探しに私は街に出た。


(つづく)



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