インディー(21)




「こないだ作ってくれたオカチャン!たのむ」
ヤベ
「気に入ってもらえてうれしいッス」

「他にオリジナルカクテルはあるの?」

ヤベ
「えぇ、いくつか・・」


「バーテン始めてどれくらい?」

ヤベ
「一年チョイッス!」
肩を揺すってリズムを取りながら答える。


「サッカーをやめてから・・?」

ヤベ
「えぇ、まぁ・・」

「やめてから、荒れてたんだ?」


また肩を揺すりながら
「ウ、まぁ、そんなとこッス!」
「クラブ通ったり・・?」


突然、ヤベが私との会話を遮るようにドアに向かって

「イラッシャイマセ!」
と大声を上げた。


ナオミ


そして噂の彼氏。


背が高く、口元はおぼっちゃま育ちらしく甘い感じだったが、目もとスッキリ、イイ男。

確かに少しウマズラ。でも、気になるほどじゃなかった。


ナオミは、キラキラのミディアムブルーのチャイナドレスに薄手のガウン。
先日と違って髪を両サイドで丸めて留めて、チャイナガールそのまんま。


ナオミ
「彼です。こちら、噂のオカチャン」
この間の堅さはまるで感じられず、すっかりリラックスしてふざけた感じ。


「ヒロトです。よろしく」

少しうつむき加減の挨拶。


ナオミをサンドイッチにしてカウンターに並んだ。


ヤベと二人のやり取りの間を縫いながらのナオミとの会話。

BGMサウンドがでかいので、少し顔を寄せて大声になる。


ナオミが、紙袋からイラストを何枚か取り出した。

薄明かりなので
今一つ、できばえが読み取りにくい。


「これって、もしかして・・」
「奈良の大仏?」


「そう。自画像です。ヒロトがあたしのこと、大仏みたいやとか言うから・・」

「そいつは、ヒドイ!」

ヒロトとヤベは、なにやらサッカー談義にふけっている。


大仏が、スキューバダイビングしているイラスト。

大仏が散歩しているイラスト。

OSAKAN WINE AND MUSICの創刊号の表紙を飾るイラストとしては、ちょっとユニーク過ぎるかな?と思った。


だが、捨てがたいオリジナリティが、そこにはたっぷりとあふれていた。


ナオミが目の前にいたこともあり、

「ヨシッ、これで行こう!」

とかっこ良く言い切った。


(つづく)



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