インディー(44)




「一杯、資料持ちはって、今からどちらまで?」


「コート・ドールでナオミとフリペの編集会議や」


「おやまぁ、編集会議とか、いわはって、ナオミさんとデートやないですかぁ」
(トゲ!トゲ!トゲ!)

ママは、生っ粋の京都人ではないが、こういう意地悪な物言いのときだけは、都人そのものに化ける。


「ほっといてくれ!ちゃんとバーテンのヤベが立ち会いするんやから、やましいことは何もないわ!」

「まぁ、そないに力まんでもよろしゅおすやおへんか?ホホホホッ!」


ママは基本的に笑い上戸で、止まらなくなる。

「そうや、今度、バーテンのヤベをここに連れて来るわ。浅野忠信を漂白したような感じのエエ男やでぇ」


「ホホホホッ!漂白って・・・」

(むせ返りそうになる)

「そんな色白いんどすか?」


「白いし、とにかくエエ男や」

「そんな男前のバーテンさんやったら、今度、是非、お店に連れって行ってください」

(真顔)


「わかった!調整しとくわ!ホナッ!」


「おきばりやす!」


京都に流れて来たころは、この
「おきばりやす」
に背中を押されて店を出るのは、なんとなく違和感があったが、今では、このことばで送られた方が、気分良く街を歩けるようになってしまった・・


(つづく)



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