インディー(63)



私の正面に座る。

「○×▽男、44歳、前科なし、無職、・・・」

私に関する情報をつらつらとしゃべってくれた。

なかなか、丸暗記が得意なやつだと感心してやった。

PCのデータベースが使える、少しばかりインテリが入ったヤクザ。

「サラ金ブラックにも載ってなかったし、なかなかきれいな経歴やんけ?」

こういうときは、下手に出るに限る。


「はぁ」


「ヤベの連れやて?」


「はぁ」

「ヤベのことで謝りに来たって?」

「ハァ」

「あんたは、ヤベのなんじゃい?ただの連れやったら、ほっといてやったらええやんけー」

「謝らないとあかんのと、もう一つ、ヤベに頼まれごとがありまして」

「なんや、それは?」

「ヤベの知り合いが、ここにいるから、連れ戻して来てくれと・・」


「アホが・」

(たぶん、ヤベに対して言ったのだと思う)

「あいつは、上がりをネコババしようとしたんや。ヤベのスケのことで金が入り用になってるっちゅうのに、後先考えへん、アホなやっちゃで」

「で、彼女は、ここにいますか?」

単刀直入過ぎる。

「まぁ、結論を急ぐなや」

「あのスケは、大切な商品やから、傷もんにすることはない」

「そないゆうとったとヤベにゆうとけや」


「わかりました。伝えておきます」

トガノ病院から、組事務所に向かったタクシーの中でヤベとメールでやり取りして、今回のトラブルのいきさつについては、少し把握していた。


「ヤベのやったことに対して、私に弁償させてもらいたいんですけど・」

「ほぅ、珍しいお方やねえ。ほんなら、金を持って来てくれるっちゅうわけやね」


「いえ、既にお調べがついております通り、私は無職の遊び人ですから、まとまった金を用意することは、できません。」


「その代わり、こちらで働かせてください」

「ギャハハハ!」

突然、コワモテの方のデブッチョ(以後、一号と呼ぶ)が笑い出した。

やさしいデブッチョ(以後、二号)は、真顔で
「組事務所に就職活動しに来たんか?」


突然、隣の部屋から
カラカラと高笑いが響いて来た。

右手のドアが開いて、白いスーツに身を包んだ、だが、怪しげな空気をたっぷりと持ったヤサ男が現れた。

(下の連中と組長のギャップがでか過ぎるゼ、とつぶやく)

デスクの皮



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