インディー(64)




視線を合わさなくても、それが良くわかる。


二号
「で、どんなことやったらできるんや?ゆうてみい」

「そうですね。取り敢えず酒場遊びが好きですから、それ絡みのことやったら・」


「他には?」


「競馬も好きですね」


「パチンコは?」


「パチンコは性に合いません」

「わかった。まあ、しばらく待てや。あんたの携帯に連絡したるから。」


「それは、いいんですけど・」
と組長の方を向く。


「ヤベの彼女は解放してもらえへんのですか?」


「だあっとれ!」
と一号。


「ユキは大切な商品ですから、傷を付けることはございません。ただ、彼女を売り出すに当たっては、それ相当の資金が必要になるのです。あなたが、それを稼いでくださるとおっしゃっているわけですから、その約束が果たされた時点でユキの居所はお教えしましょう」


(ヤベの彼女は、ユキって言うんだなとつぶやいた)


それにしても、組長、頭のてっぺんから出るようなキンキン声だ。

(二日酔いの日には顔を合わせたくないタイプ)


「もう、ええやろ?おまえの携帯番号をここに書いて帰れや!」
と2号。


「その前に、免許証とソムリエナイフを返してください」


「何、寝ぼけたこと、ゆうとるんじゃ!携帯番号書いたらトットと帰れ!」
と一号。


組長がアゴを少し上にしゃくったのが合図で、私は、トレーナーのアンチャンに引き立てられ、玄関からほうり出された。


帰りの道すがらヤベにさっそく連絡。


「あのタコみたいな口でたばこ吸うおまえの彼女、ユキってゆうんか?」

「ユキはいましたか?」

「会わせてもらえんかったわ。そやけど、大切な商品、大切な商品って何回もゆうとったから、大丈夫やろ?」


「お前の彼女ってそんな才能あるんか?組長がぞっこんみたいやったわ」

「才能あると思います。オレも彼女の才能にほれ込んでいるんです」

「ほう、そんならイッペン、ユキの歌聴いてみたいな。ところで、組長に手ごめにされてしまう心配はないんか?」


「それはだいじょうぶやと思います。あの組長、公私共に認めるホモみたいで、デブの子分が二人おったでしょ?あいつらとデキてるみたいですから」

「うわぁ、気色悪!ほんなら、オレ」



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