インディー(67)



「はあ」

「店で取り敢えず、水割りを頼んだら、その後、すぐに、店が臭いのなんのかんのと難癖をつけて、ケツ割って出てきてくれ。トイレ臭いというのは必ず言うこと」

「そこまでが、あんたの仕事や」


「はあ。それだけでええんですか?」

「もちろん、実行してもらうに当たっての注意事項は守ってもらいたい。店に入るのは、7時から8時くらいまでの時間帯に限る。もちろん、他に客がおったらあかん。トラブルのもとになって、うまいこといかんようになる。店をのぞいて客がおったら、さっと引き上げろ」


「ほんとにそれだけでいいんですか?」

「それだけや。凌ぎのカラクリは、あんたらは、しらんでよろしい。」

「ここに行ってもらいたい店のリストがある。行った店は、その晩のうちに印を付けてファックスで送り返してくれ」


「わかりました。ほんなら、さっそく今晩から、取りかかります。まずは、どっち方面が、ええかなあ・」

「まず、ミナミから、かかってくれ。そのあとがキタ。その後、三宮。あんたの主な遊び場は、京都やさかい、祇園とかで、かますのはやめとけ」


「はい・」

「たいがい、カオが割れとるやろ?」


「そうですね。」

「まわる順番は好きなようにしたらええけど、なんかヤバイ雰囲気とか感じたら、その近所の店もいかんようにしてくれ」

「はい」

「まずは10日ほどで、あんたの技量をはかることになる。使えると判断したら、次はまた別のシノギを頼むことになるやろ」


事務所を出て、トボトボとヤベが、入院している店に向かった。


ヤベは相変わらず、手持ちぶさたにベッドに横たわり、のんきにMDを聴いていた。


「ユキから連絡あったか?」

「まだです」

「さっき事務所に行って来た・」

急にヤベの顔色が変わる。


「で?」

「仕事をもらった」


仕事の内容を説明すると
ヤベはすぐにピンと来たようである。


店舗メンテナンスの業者と結託したシノギとのこと。


メンの割れていない人間が、店を訪問し、臭い、熱い、汚いなどと難癖をつけて店を荒らす。

その後、ほどよいタイミングで業者が訪れ、空気清浄機をバカ高い値段で売り付けたりするらしい。


「演技力がポイントやな」
と私。

「そうですね。」
と、そっけないヤベ。

「ユキは、どうしてるかなあ・」

とヤベのつぶやき。


「ほんなら、行って」



© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: